〜 ムンプスウイルス 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<3>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

「……ザックス。チョコボ、具合が悪いの?」

 ずるずると引きずられながら、ジェネシスがつぶやいた。

 ってゆーかさァ、人の心配するくらいなら、自分の足でちゃんと歩いてくれよ、もう!

「アーン? ああ、アレ、風邪か何かだろ」

「寝ているのか?」

「たぶんな。今朝ちょっと熱っぽかったみたいでよ。薬飲んで安静にしているように言っておいた」

「そうか……ふぅん…… つまらないな」

「アンタねー、なんだよ、それ」

「チョコボと話をしているとさ。ニブルヘイムのことを思い出すじゃないか。神羅屋敷の話が聞けるかもって……」

「おいおい! 言っただろう? 俺たちが三人揃ってあいつの故郷へ行ったことは内緒なんだぞ!?」

「……わかってるよ。でも、水の向け方はいろいろあるだろう? 『確かニブルヘイムには神羅屋敷があったよね』とか、いろいろとさ」

「ああ、もういいから! どこまでついて来るんだよ、ジェネシス。ハイ、会食ミッション終了。ここで解散ッ!」

 ミーティングルームの前でそう言ってやったが、彼はのらりくらりとかわして、俺の後をついてきた。

「言っただろう? クラウドは風邪っぴきで寝込んでるんだよ。のんきに田舎の話してくれる状態じゃないんだってば」

「わかってるさ。いいだろう? お見舞いくらい」

「部屋散らかってるぜ」

「そんなことかまわないよ」

 あっさりと言ってのけ、彼はそのまま俺と一緒に歩き出してしまった。

 

 

 

 

 

 

「おい、ザックス! ザックス、コノヤロー!!」

 ドッカドッカと廊下を駆ける音が響く。

 振り返らずとも誰だかわかる。クソ図々しくてどデカクて鬼ワガママな神羅の英雄だ。

「なんだよ、セフィロス。アンタ、どこ行ってたんだよ……それに、今、授業中だぞ。静かにしろよ」

 溜め息混じりに注意する。

 どうせ部屋へ戻るってことで、寮への道すがら担当教官に欠席者用のプリントをもらってきたのだ。

「やぁ、セフィロス。こんなところにいたのか」

 のんきなあいさつはジェネシスである。

「ザックス! どういうことだ! クラウドの姿が見えん! 一時限目の外国語にもいなかったし、二時限目の保健体育の座講にもいないし、三時限目の野外授業にも……」

「……アンタは何してるんだよ……ストーカーかよ……」

「無礼なことを言うなッ! オレ様はクラウドのお義母さまから『あの子をよろしくお願いします』と……」

「あのな、俺たち三人とも同じようにいわれただろう? そういうのは社交辞令って言うの。大人はみんな口にすんの。アンタはしないみたいだけどね」

「黙れ。だいたいてめェが頼りにならねーから、オレがこうしてつきっきりで……」

「ああ、もういいから。……ったく、アンタのおかげで、俺は嫌々副社長の会食に同席したんだぞ? 何か言うことないのかよ?」

「そうか、ご苦労」

 コノヤロー、ぶん殴るぞッ!!

「それでクラウドは……」

「ああ、そうだった。早く部屋に戻らなくちゃ」

 ついついセフィロスと会って、怒りのあまり失念していた。こんなところでのんびりしてはいられない。そのクラウドの様子を見に、早く部屋に戻らなくてはならないのだ。

「おい、まだ聞いてないぞ! クラウドは……」

 俺が面倒くさげに口を開ける前に、ジェネシスがシーッと指を立てて小声で答えてくれた。

「チョコボっ子は風邪なんだってさ、セフィロス。だから今日の授業はオ・ヤ・ス・ミ」

「なんだとッ!?」

 セフィロスの素っ頓狂な声に、廊下づたいの教室がざわめき、教官たちが一斉に扉を開く。

 俺たちは慌ててエントランスに移動した。 

 

「あんなとこで大声出すなよ、迷惑だろッ!」

「それよりもクラウドのことだッ! 風邪だと!? 貴様がついていながら……」

「お、おい! そ、そんな大げさな……」

「まぁまぁ、セフィロス。今朝、ちょっと熱っぽいって言って、ザックスが大事を取って休ませたらしいんだよ。その辺の判断はよかったんじゃないのか?」

 ナイスフォロー、ジェネシス。グッジョブ!

「それで、クラウドはどうしたんだ? メディカルセンターか?それとも寮の医務室か?」

「え…… あ、いや、たぶん部屋で寝てると思うけど……」

「医者にも診せとらんのかァッッ! このボケナスがーッ!!」

 ボコッ!!

 痛ってェェェェ……何も殴らなくてもいいじゃないか。

「何すんだよ。だって、ちょっと喉がいがらっぽいとか、その程度なんだぜ? わざわざメディカルセンター送りにする必要なんざないだろう? 別にクラウドも平気だって言っていたし……」

「あの子は奥ゆかしいからな…… きっと貴様に迷惑を掛けたくないと考えたのだろう。バカな子だ……困ったことがあるならオレに相談すればいいのに……」

 いやいやいや、ぶっちゃけアンタみたいな人は、具合が悪いときに会いたくない人、ベスト・オブ・ザ・キングだと思うよ……

「おらっ! ぼさっと突っ立っているな、ふたりとも!! 早くクラウドのところへ行くぞ!」

 ごく当然のように先だって俺たちを促す英雄。

「おい、ちょっ…… セフィロス!」

「早くしろ! クラウドに万一のことがあったら……」

「あるかよ。あのな、セフィロス。ヤツの所には俺が様子を見に寄るから。アンタはアンジールのところへ行ってくれ。今日は一度も顔を出していないだろう? ラザードも、困ってたぞ」

「バカヤロウ!!」

 何故かものすごいイキオイで一喝される俺。

「クラウドの一大事に仕事なんざしていられるかッ! アンジールがいるなら、あっちは問題ないだろう! クラウドにはオレがついていてやらねばッ」

「いや、むしろアンタはいないほうが……」

「グズグズするな、ボケナスどもッ!!」

 そいつを捨てセリフに、ダッと走り出すセフィロス。

 おいおいおい、ここは研修棟だっっつーの。あのなァ、エレベーターの中で地団駄踏んでも、スピードが速くなるはず無いだろ。っつーか、むしろ揺れて怖いってば。