〜 めばえ 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<7>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

「ハァ? なんで?」

「さぁ…… ただ、その日、彼らには別件で任務が入る予定だし…… すまないが、ザックス、一応、公平に決を採るということで、自薦してもらえるかな……」

「……はぁ」

 げっそりと頷くと、ラザードは統括席に戻り、あらためて声を上げた。耳打ちしていたときのボソボソ声とは、まったく異なる厳しい管理者としての声音で。

 

「ええ、では明後日に予定されているシーウォームの掃討計画についてたが、指揮官を任命したい。あらかじめ言っておくが、ソルジャーの3rdが20名、他2ndが10名配備される予定であるので、1stの人選は無用と考えているのだが……どうだろうか、ザックス」

「ええ、まぁ、そんな感じッスよね……」

「甘いッ!!」

 またもや机を叩いて立ち上がったのは、セフィロスであった。アンジールが落ち着けとばかりにコートの裾を引っ張っているが、ヤツは平気で無視している。

「この頭でっかちのオタクが!!」

「オ、オタク……」

 自覚があるのか、ラザードはセフィロスのその一言にひどく傷ついた様子だ。またもや苦労性のアンジールが、必死に彼を宥めている。

「これだから実戦を知らんヤツは……」

「い、いや、セフィロス。だから、今回は、ソルジャーの3rdを20名、他2ndを10名配備……」

「そうじゃねーだろッ! どうして1stを入れないんだ、1stをッ!!」

「だが、1stはそもそも人員が極めて少ないわけだし…… ミッションの重要性から行くと、ここは経験在る2ndに任せて充分な……」

「ミッションの重要性が低いだとッ! なにを勘違いしてやがる、このエロ眼鏡!」

「セ、セフィロス! す、すまん、ラザード」

「てめぇはすっこんでろ、アンジール! いいか? ミッドガルの湾岸に出没するシーウォームなのだぞ? 事と次第によっては近隣の漁村への影響もある! いいか、貴様ら、オレたちが美味しい魚を食べられるのは、ひとえにそういった漁民たちの努力あってこその……」

 ……スゴイ……

 なんつー野郎なんだ。

 おのれの欲望のためには、普段顧みたこともない、善良な漁民の方々でさえ、余裕で引き合いに出す面の皮の厚さ……そうか、これくらいブッ飛んでないと『英雄』にはなれないんだな……

 

「……もう、いいんじゃね」

 溜め息混じりに俺は口を開いた。

「っつーか、まぁ、1stが手ェ貸してくれるんなら、予定より早く済むかも知れないし。まぁ、そりゃ、人事の都合がつけばだけどさ」

「よし、よく言った、ザックス!」

 テンションの高い英雄は無視だ。

「……そうだな、ザックスの意見も最もだ。危険を回避して迅速に終えられれば最良だ」

 ラザードが頷いた。

「では、すまないが、アンジール、ザックスの補佐でついてやってくれ」

「ああ、わかった」

 とアンジール。

「後ほど計画書を回す。ザッと読んでもらえれば理解できるよう、まとめてあるから」

「そうだな。明日の朝にもらえればありがたい」

「承知した」

 ラザードが請け負った。

 天気の話題のように、あっさりとやり取りが流れていく。

「皆、では、今夜はこれで解散……」

 

「待たんか、コルアァァァァ!!」

 ビリビリと室内に響き渡る雄叫び。

 ガシャガシャーン!とか、バサバサッなどという、廊下からの音は、たぶん、セフィロスの怒声に驚いた連中が手荷物を落としたのだろう。

 俺は予想済みであったので、ちゃんと両耳を塞いであった。

「な、なんだろうか、セフィロス」

「『なんだろうか』じゃねーだろッ! この変態眼鏡ッ!」

「あっはっはっ、ひどいなぁ〜」

 というのは、のんきに笑っているジェネシスだ。

「てめェは空気を読まねェかッ!!」 

 ガンと、ジェネシスの椅子を蹴っ飛ばすセフィロス。

「い、いや、だから、君の助言を汲んで、1stにも戦列に加わってもらうことにしたわけだが」

「オレがやりたい」

 単刀直入の英雄であった。

 フツーの感性を持った人間なら、なにやら理由をつけて、譲ってもらうということも考えるだろう。

 そう……例えば、発案者は自分だから、アンジールに負担を掛けるのは申し訳ないとかなんとか……

 だが、英雄はあくまでも己が願望を率直にぶつけるだけだった。

「セ、セフィロス……知ってのとおり、君のその日の予定は社長の護衛で……」

「あんな、デバラたぬき禿オヤジ、だれも襲わん。安心しろ」

 いや、そりゃ、あんたはね、襲わないよね。

 でも、襲ってくるのはゲリラだから。

「い、いや、何事もなければそれでいいが、万一に備え……」

「ああ、わかった。ようは1stがひとりふたり、デバラの側にくっついてりゃいいんだろ。よし!オヤジはオヤジ同士。アンジール。代わってくれ」

 歯に衣着せぬ……にも限度があると思う。

 ただの駄々っ子と化した英雄に、もはや抗う気持ちもないアンジールであった。彼はラザードに護衛代行を申し出、めでたくセフィロスは、シーウォーム掃討作戦へ加わることとなったのだ……