〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<7>
 ジェネシス
 

 

 

 

「ジェネシス……! ザックスも一緒か!」

 統括室の扉を開けると、もうすでにアンジールが控えていた。

 やれやれこの生真面目な男、早くも眉間にしわを刻み込み、苦悩の表情をしている。

「さすがに早いね、アンジール」

「おう…… 早く出動したいのだが」

 そう低くささやくと、焦れたようにラザード統括官に視線を投げた。

 それを気づかないふりでやり過ごし、統括は俺とザックスを愛想よく迎えた。

 今日もストライプの三揃いでしっかりと決めている。嫌みな銀縁メガネも健在だ。

 

「やぁ、すまないな、ジェネシス。ああ、ザックスも気を利かせてくれたのかな」

 機嫌をとるような物言いが返って不愉快だ。

「一応、俺も軍人なのでね。それより、トラブルは市街地だそうじゃないか。こんなふうにのんびりしている時間はないと思うけど、統括?」

「市街地って……すぐそこの五番街とか公園広場のある八番街とか……? 駅からスラム街へ抜ける道だってあるぜ……」

 ザックスが呆然とした様子でつぶやいた。

 

 神羅カンパニー本部が、ここミッドガルの市街地近くに拠点を構えてからまもなく、この土地にモンスターが徘徊することはなくなった。

 先進的な設備を整えた研究所を創り出し、人材を集め、人工魔晄を研究させた。

 対モンスター兵器にソルジャー…… 

 プレジデント神羅は人々から金を吸い上げる変わりに、身の安全を保証したようなものだ。

 魔晄がなくては、大都市ミッドガルに住む者共は、一日たりとも生活ができない。

 もちろん、市街地から郊外へ抜けてしまえば、その限りではないが。

 

「捕獲にはタークスが出動している。もちろん、メディカルの医療班もだ」

 ラザードがわずかに逡巡した後に、そう教えてくれた。

 だが、それはずいぶんとけったいな話だ。

「それは異な事を聴かされるものだ。モンスター退治なんて、まさしくソルジャーの仕事だろう? 諜報活動が中心のタークスの出る幕ではないと思うが」

 思わず鼻で笑ってしまう。

 いかにも馬鹿にしたような物言いであったはずだが、アンジールも俺を諫めはしなかった。

「おい、統括! ジェネシスとアンジール呼んだってのは、当然、手を借りるためなんだろッ? だったら、早く部隊編成して、街の人たちを……」

 ザックスが急き立てるように、声を上げた。

 

 

 

 

 

 

「……君たち、絶対に秘密を守れるか? 神羅カンパニーの社員として……」

 ラザードが低く押し込めるようにささやいた。

 噛み殺した声が、苦しげに揺れている。

「俺は確かに神羅の社員だ。会社の利益を守りたいとは思う。だが、人として許されない所行が、内部にあったのだとしたら……俺は……」

 アンジールが馬鹿正直に、おのれの信念を口にしようとする。だが、今はここで言い合いをしている場合じゃない。

「ああ、もちろん。口外禁止というのなら従うさ。君に借りも作れるしね」

 アンジールを片腕で後ろに退かせ、敢えて大きなジェスチャーで応えてやった。

「ジェネシス……」

 ザックスが不安げに俺と統括を交互に眺めるが、これから先は出る幕じゃないと判断したのだろう。

 一刻も早く出動できるよう、祈るような眼差しでこちらを見た。

「俺たちの力が必要だろう? セフィロスはメディカルセンターだし……ねぇ、ラザード統括?」

 わずかな間隙の後、ラザードは重い口を開いた。

 

「……市街地で暴れているモンスターは、神羅カンパニーのものなのだ。本社に移送中、逃走した」

「なんだと!?」

 大声を上げたのはアンジールだった。

 彼にとっては、許されざる失態だと言いたいのだろう。

「モンスターが神羅のもの!? 実験動物か何かなのか!? だったら、尚のこと事実を公表して、早急に全社で対応すべきだ!

「い、いや、そもそもモンスターというのは語弊がある。モンスターを狩るための、人型兵器で……」

「その兵器が、街を破壊しているのだろう!」

 激昂するアンジールを横目に、静かに割って入る。

 

「……その人造兵器とやらは、何体いるの? 『逃走した』っていうくらいなんだから、人工知能を組み込んでいるわけだよね」

「い、一体だけなんだ。君の言うとおり、高水準の戦闘能力を仕込んである。本社付近で使用されているパトローラーではなく、人工知能ゆえに、早急にモンスターに対処できるらしい」

「それはそれは。その一体に、タークス一部隊が手こずっているわけだ。相当優れた知能と戦闘能力をお持ちなんだねェ」

 嫌みを口にしながらも、ここしばらくのゲリラ掃討戦を思い起こしていた。

 

  確かにここ最近、反神羅のゲリラとの戦闘が増えている。先だってのセフィロスの負傷も、結局それが原因だった。