〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<19>
 セフィロス
 

 

 

 

 背に肘打ちを喰らい、顔面を襲ってきた蹴りを、なんとか身をよじって肩で受ける。

 クラウドがいるのに、鼻血なんぞ垂らすわけにはいかない。

 こめかみを擦った拳が、そのままそれて頬骨に当たり、生暖かい血が顎へ滴った。同じ顔面でも皮下にすぐに骨がある部位は、容易に切れるのだ。

 素人拳法にしては、なかなか筋が良い。

 つまり、こうして喰らうと、このオレでさえ相当程度には堪えるということだ。

 体術を会得していない輩のパンチなど蚊が止まった程度だが、こいつはまるきりの素人というわけではなさそうだ。

「もう、やめて、やめてください!」

 クラウドが泣き叫ぶ。

 もちろん、手下の一人に腕を掴まれているから、その場から動くことはできない。

 この子にしてみれば、オレが殴られたり蹴られる様を目の当たりにするのは初めてのことだろう。

 ……チッ!

 せっかくの告白のデートが……なんてザマだ。

「やめてくださいッ! こんな…… 大勢で、よってたかって……!」

「黙れガキ! 神羅がこれまで俺たちに何をしてきたのか知っているのか!? この英雄と呼ばれる男が、いったいどれほどの仲間を手に掛けてきたのか」

 テロリスト側からの意見なれば、いかにも正論だろう。

 オレたちソルジャークラス1stが、ウータイの抵抗勢力や、アバランチを封じ込めてきたのは事実だ。

 こいつらの言葉のなまりから、おそらくウータイの過激派であろうと推察される。

 敗残兵をかき集めて作られた組織…… 神羅カンパニーへの憎しみは、いかほどであろうか。

「だ、だからって……! 武器も持ってない相手に……!」

 クラウドが、オレの姿を見て、ぼろぼろと涙を流す。なんとか急所を避けてはいるものの、さっきから散々に殴られている。おまけに顔面の出血のせいで、端から見るとひどいありさまに見えるのだろう。

 野郎のパンチは効いていたが、まだまだ倒れない。ソルジャーのオレたちは、もはや普通の人間とは身体のつくりが異なるのだ。

「あ、あなた方が神羅に恨みをもつのは事情があるんでしょうけど……だからって、こんな形で、セフィロスさんひとりを……!」

「うるさい、黙っていろ、クソガキ!」

 次のパンチを繰り出そうと待ちかまえていた男が、オレの胸ぐらを締め上げていた手をつき放した。

 そのまま、クラウドのほうへ迫り寄って行く。

「……おい、よせ。その子に手を出すな……ッ!」

 オレの声が聞こえなかったわけではなかろうが、ヤツはこちらに一瞥もくれなかった。

「もう一度言ってみろ。このチビが!」

「セフィロスさんに手を出すな! アンタたちは卑怯だ! 正々堂々と勝負しろよ!」

 涙を一杯に溜めた瞳で、クラウドが叫んだ。この子がこんなふうに声を上げるのを初めて見た。

 

 

 

 

 

 

「このクソガキ〜! おまえのほうから始末されたいか!」

「やめろ……! クラウドに手を出すなッ! 貴様らの恨みは神羅へのものだろう。無関係の民間人を巻き添えにするな……ッ!」

「セフィロスさん……」

「うるせぇんだよ、英雄様よォ!」

 ヤツは振り向きざまに、こちらに蹴りを見舞ってくれた。注意をクラウドに向けていたオレは、そいつをもろに胸元に喰らった。

 油断していたせいで、身体の緊張を解いていたのだ。

 オレは、そのまま背後の壁に激突し、側頭部に強い衝撃を受けた。ぶつかった瞬間、ゴッという言う嫌な音が耳に響いた。

 目の前が朱に染まり、耳と鼻の奥が熱くなる。

「セフィロスさんッ! セフィロスさんッ! やめて! もうやめてよ! セフィロスさんが死んじゃう! ……セフィロスさん、闘って! おれのことなんて気にしないで闘ってください! おれ、人質なんて……おれのせいであなたがこんな目に遭うのは……もう……!」

「……黙っていろ、クラウド」

「セフィロスさん……! セフィロスさんッ!!」

「いいから…… おまえ……だけは……」

 オレの言葉はきちんと口から流れてくれているのだろうか。

 さきほど頭を打ち付けたのがよくなかったのだろう。ぐらぐらと目の前が揺れる。いくらオレでも頭部を鍛えることなどできはしない。

 ……だが、クラウドだけは守らなければ……この子だけは……

 まだ……身体は動く…… 武器を持たなくとも、オレはソルジャークラス1stだ。