〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<17>
 セフィロス
 

 

 

 

 ……オレは神羅の英雄だ。

 ……ソルジャークラス1stだ。(その中でも一番強い!)

 ……声を掛けて、オレになびかなかったヤツはいない。(玄人ばかりだが)

 だから……

 だから、きっとクラウドも……!

 オレが気持ちを告げさえすれば、きっとクラウドも好きになってくれる……!

 

 テーブルの下で、ぐっと握り拳を作り、決意を新たにする。

 クラウドが戻ってきたのは、ジェネシスが退席してから、ほんの一分も経たずであった。

「あ、あれ? ジェネシスさんは……?」

「あ、ああ。その……残念だが、呼び出しがかかった。ヤツもいろいろ多忙でな」

 オレはにやけそうになるツラを制御しつつ、適当に答えた。

「まぁ、あいつは交際関係も派手だからな」

 その言葉をどう解釈したのか、クラウドは、

「ジェネシスさんはモテるんでしょうね」

 とつぶやいた。

 本来なら、ここで、『オレのほうが遥かにモテる!』と叫びたいところだが、かえってクラウド相手にはマイナスだろう。純粋なこの子は、誠実なタイプを好むと推察されるからだ。

「気にするな。それより、デザートが来ているぞ。ジェネシスの分も置いていってもらったから、よかったら食べるといい」

 そう言って、瀟洒な皿を差し向けると、海の色の瞳をパッと見開いて笑った。

「は、はい!」

「欲しければ、私のもかまわんぞ。……あまり甘いものは好かん」

 別に格好を付けているわけではない。ケーキだの、クッキーだの、食えないわけではないが、それほど好きなものではなかった。

 

 ずっとクラウドとふたりきりで時を過ごしたかった。

 いつでもどこでも、たいていは、あのクソうるさいザックスの野郎がついてきていたから。

 いうまでもなく、ソルジャークラス1stの仕事は激務だ。クラウドも修習生としている学んでいる身分である。

 ……ともなると、ふたりきりで共有できる時間は本当に少なかったのだ。

 

 ……だのに。

 だのに、だ!

 せっかくのこの時間……! 千金に値するこの時間なのに!

 

 何を緊張しているのだ、この私は!!

 

 

 

 

 

 

「セフィロスさん?」

「え、あ、ああ、なんでもない。気にするな」

「ハイ。でも……お仕事でお疲れなんじゃ……」

「フッ…… この私が哨戒任務ごときで、消耗するか」

 オレは余裕をかまして笑ってやった。

 ……今現在の消耗度合いは、クラウドとふたりきりで相対する、精神の緊張によってのものだ。

 よもや……よもやここまで、素人相手が難解なものだとは思っても見なかった。

 とりわけ、年頃の少年よりも幼いクラウド相手だ。

 言い方次第では、怖がられたり、笑われたり……本気にとってもらえない可能性もある。 よくない想像ばかりで眩暈がしてきた……。

 だが、今日という日をやり過ごすつもりもない。

 『言えなかった』などと、ジェネシス相手に打ち明けられないし、こんなチャンスはめったにないのだ。

 

「あぁ、そういえば、クラウド」

 オレはさりげなく、会話を続けた。いつまでも生唾を飲んで黙りこくっていたら、おかしく思われてしまう。

「おまえは、ニブルヘイムの出身だと言っていたな」

「ハイ!」

 何も隠す必要などないからだろう。彼は元気よくそう答えた。

「あそこには神羅屋敷と、山頂に魔晄炉があったはずだが……」

「ハイ! おれ、魔晄炉には行ったことないですけど、神羅屋敷は村はずれにあるので、何度も行きました。あ、も、もちろん、勝手に中に入ったりはしてません!」

「フフフ、別にそんなことを咎めているのではない。……久しくカンパニーの人間は足を運んでいないと思うが、山頂の魔晄炉はともかく、屋敷の管理がどうなっていたかと、ふと思い出してな」

 気の強い巨乳女の面影を思い起こす。このオレ相手に、一歩も引かず相対してきた。

「あ、あの……大丈夫です。おれの、彼女……じゃなくて、女ともだちのおうちが、ずっと鍵を預かっていましたから。きっと今も、ティファの家が……」

「……ティファ」

 オレは天敵の名を、味わうように口にした。

 内臓を這うように鈍い痛みが移動し、メラメラと闘志が沸き上がってくる。

 この状況において、ティファの名は、オレにとって強烈な気付薬となったのだ。

「ティ、ティファは、幼なじみなんです。同じ村で……家が近くて。とはいっても、小さい村だから、みんな顔見知りみたいなものなんですけど」

 屈託なくクラウドが続ける。オレの胸の内にくすぶる熾火のような虚暗い焔は見えないのだろう。

「そのティファという娘は、おまえの……?」

「え、あ、あの、だ、だから……幼なじみです」

 『幼なじみ』

 ほぅらみろ! 巨乳女! クソハリネズミ!

 クラウドは、はっきりと幼なじみと言ったぞ! つまりはただの友だちで顔見知りということだ! ケッ、ざまーみろ!

「セフィロスさん? どうかしましたか?」

 リアクションつきで盛り上がったワケじゃないが、異様な空気を感じさせてしまったのかもしれない。不思議そうに小首をかしげられて、オレは咳払いをした。

「あー、ゴホン。いや、なんでもない。……デザートも済んだな。満足か、クラウド?」

「あ、ハイッ! もちろんです! ごちそうさまでした!」

「……いい子だな。では、そろそろ行くか。腹ごなしに歩いて帰ろう」

 ……よし! 自然に言えたぞ!

 行きは車だった。歩けば、二十分はかかる距離だ。

 湾岸通りから庭園広場……神羅カンパニーへの帰路は、デートコースとしてはもってこいの地理なのだ。

 必ずチャンスはあるはず……!

 

 手早くカードで支払いを済ませると、ごく丁寧にクラウドをエスコートした。

 さぁ、いよいよ告白タイムだ……!