〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<3>
 ザックス・フェア
 

 

 翌日。

 

 アンジールから頼まれていた書類を持って、ソルジャークラス1stの執務室に赴く。

 1stに所属するのは、ご存知、俺の師・アンジール。そして希代の迷惑男・セフィロス。変態詩人ことジェネシスの三人しかいない。

 それにも関わらず執務室は贅沢なほど広い。

 デスクなども、俺たち2ndの使っているものみたいに、色気のない汎用デザインではなく、機能的でかつ曲線のフォルムの美しい至極高価そうなものだ。

 ……にも関わらず、毎日きちんとこの場所で仕事をするのは、俺の尊敬するアンジールだけという、ていたらくだ。

 ノックをしても返事がなかったので、いつものように勝手にドアを開けようとしたのだが……

 

「な、アンジール。おまえ、オレのことどう思う?」

「……はぁ? 何を言ってるんだ、セフィロス。忙しいんだ。ほら、どけ」

「仕事とオレとどっちが大事なんだ。話しを聞かんか!」

 資料を探そうと歩き回るアンジールの後にくっついて、必死に話しかけるセフィロス。

 しかし、なんつーか、この男は……

「あのな……セフィロス……」

 辟易とした様子で、ため息を吐くアンジール。さもあろう。

 セフィロス&ジェネシスは、まともに働かないのだから、アンジールが多忙なのは当然なのだ。

「今、忙しいんだ。急ぎの書類を……」

「な、アンジール。オレに好きとか言われたらどうだ? どんな感じがする?」

「はぁ? だから何の話だ? ええと……写真の現像は……」

「おい、アンジール、ちゃんと聞けよ! どうだ? 嬉しいと思うか? トキメくか?」

「今度はどんな遊びだ。あー、わかった、わかった。嬉しい嬉しい」

 セフィロスよりも、遥かに精神年齢が上のアンジール。

 彼は、いつもの悪戯だと決めつけ、適当にいなすだけだ。

「本当に? ちゃんと嬉しいか? キスしたいとか、オレと寝たいとか思えるか!?」

「こら、セフィロス。そんな言葉を軽々しく口にするもんじゃない! まったく!」

 今度は叱られている。

 やれやれ……だ。

「よ、アンジール。ごめん、ノックしたんだけど」

「ああ、ザックスか。すまん、頼んでおいた書類なんだが……」

「持ってきたよ。これでいいんだろうけど、一部修正したほうが良いと思う部分がある」

「そうか。どこの部分だ?」

 アンジールが手元の書類を覗き込む。

 

 

 

 

 

 

「おいおいおいおい、貴様ら! 今はそんなことしてる場合じゃねーだろ!」

 アンジールと俺の会話を中断させるべく、バンッと勢いよくデスクを叩くセフィロス。

 何やってんの……この人。

 ……じゃあ、そんなことしてる場合じゃないって……じゃあ、どんなことならいいんだよ。

 就業時間なんだから、仕事しているのは、ごく普通のことだろうが。

「今、オレにとって非常に重大な問題にぶつかってんだよ! アンジール、貴様は恐れ多くもオレ様の親友だろう!?」

「ああ、まぁ、そうだな。……で、ザックス、続きなんだが」

「コルアァァァ! アンジール!」

 

「あー、ほら、やめろよ、セフィロス。アンジールは忙しいんだってさ。あっちで俺とお茶でもどうだ?」

 またもやいつの間にかジェネシスが、執務室に戻ってきていた。こいつはまったく気配を感じさせないのだ。セフィロスなどは、どこに居ても、『英雄ここに在り!』といった空気で、すぐにわかるのだが。

「女くどくみたいなセリフを言うな!気持ち悪ィんだよ、変態詩人!」

「ひどいなぁ、セフィロス」

「触るな! どけ! 気色悪ィ!」

 いや、今の場合、気持ち悪いのはアンタのほうだろ、セフィロス?と突っ込みたい。

 口に出す勇気はないので、心の中でそっとつぶやく。

「オレ様は忙しい。おまえにかまっているヒマはねーんだよ、アホジェネシス」

 ふんとばかりに顔を背け、セフィロスはガキ顔負けのしつこさでアンジールにからむ。

 ……まぁ、確かに、この中で、一番客観的な立場に在るのはアンジールだし、彼は至極真面目で無骨なタイプだ。真剣に意見を聞きたいのならば、それにふさわしい対象といえよう。

「なぁ、アンジール!」

「セフィロス、すまないが、今、忙しいんだ。話があるなら、また今度……」

「オレにはもう残された時間が少ないんだよ!」

 ……白血病患者が怒りそうな不謹慎なセリフを口にするセフィロス。だが、すでに英雄の性格を知り尽くしているアンジールは適当に相手をしているだけであった。

「……いいなぁ、アンジール。うらやましい」

「は? アンタ何言ってんの?」

 ジェネシスの意味不明なセリフに突っ込む。

「だって、普通、うらやましく感じるだろ? アンジールはいつだって、セフィロスにもザックスにもモテモテじゃないか。……どうして、俺にはなついてくれないんだ、ザックス?」

「あのな!」

「俺、ザックスのこと、かなり気に入っているんだよ? それなのに、おまえときたら……」

 俺より長身のくせに、ズルズルと俺の服の端を掴んでくっついてくる。鬱陶しいことこの上ない。

「あー、うっさい、うっさい!! 今、俺は忙しいんだよ! ほら、どけ!」

 

 俺とアンジールは、ベタベタとひっついてくる、ソルジャークラス1stの双璧から身を躱し、何とか仕事の打ち合わせをしたのであった。