〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<4>
 ザックス・フェア
 

 

「ぶわぁぁ〜 眠ぃ〜〜……」

「ほら、ザックス! 早く起きて! 出かけるの遅くなっちゃうじゃん!」

 ゆっさゆっさと揺り起こされて、俺は半分遊覧船に乗っているような心持ちで目を覚ました。

「あー…… クラウド……?」

「もう、『あー、クラウド』じゃないじゃん! 今日は一緒にお出かけする約束でしょ! 午後になると人が多くなるから、午前から出かけるって言ってたのに!」

 ああ、そうか。

 今日は休日…… クラウドにねだられていた、ここからちょっと離れた臨海公園に連れて行く約束をしたんだっけ。ここのところずっと忙しかったから、たまには家族……いや、ルームメイトサービスだ。

「ああ、悪い悪い。すぐ支度すっから」

 俺は急いでシャワールームに飛び込んだ。ふて腐れたクラウドは、機嫌を戻すのに時間がかかるのだ。

 

 女の子と違って、男の身支度は早い。

 特に、仕事じゃなくて遊びに出かけるだけなのだから、着慣れた服にスニーカーでOKだ。

 黒のロングTシャツに、膝の抜けたジーパン。いつもの格好で出かけることにする。

 クラウドはレモン色のタンクトップに白のパーカー、下は今時のカーゴパンツを穿いている。

 ブランドのスニーカーは、初任給で同級生たちと揃えたものだと言う。

 

「ザックス、良い天気だねぇ〜! 風が気持ちいい!」

 飛び跳ねるように歩くクラウド。

 いや、もう、オッサン空気に汚染されている俺は、そんな子供みたいなことはできない。

 ……セフィロスにした話しじゃないが…… ああ、やっぱり、この子は幼いなぁ。

「ザックス、早くぅ!」

「あー、ハイハイ。ちょっとは落ち着けや。臨海公園は逃げやしねぇぞ」

「でも、ちょっとでも早く着きたいんだもん!」

「だったら、最初から車にしときゃよかったろ。歩きで行くって言ったの、クラウドだぞ」

 真っ青な空に雲が流れる。風が強いわけではないのだが、これから吹いてくるのかも。

 まぁ、そのほうがちっとは涼しくて快適だ。

「だってェ、せっかく良い天気なんだから。車なんか乗ったらもったいないじゃん。ちょっと遠いけど、歩いていけない距離じゃないんだし」

 ちょこちょこと引き返してきて、俺のまわりをくるりと回る。

 陽に焼けにくいクラウドの肌は、毎日の演習にもかかわらず、未だにピンクがかった白のままだ。海の色の大きな瞳に、バサバサと音がしそうな長い睫。鼻の形は綺麗だが、鼻梁が高いわけではないので、狷介な雰囲気はまるでない。

 第二次性徴を迎えていないクラウドは、私服でいると本当に少女のようだ。

 

 

 

 

 

 

 もう、ダラダラ、まったりと30分以上歩いている。

 確かにクラウドのいうように、車で行くよりも歩きで正解だったと思う。

 ミッドガルの神羅本社で生活するようになってから、かなりの年月が経つわけだが、知らなかった景色がこんなにたくさんあるとは。

 うららかな日よりに、こうしてのんびり知らない景色を探して歩くのは、ひどく心穏やかな気持ちになるのであった。

 

「……あれ?」

「ん? どうした」

 俺は飲みかけのコーラを片手に持って、クラウドに訊ね返した。

 クラウドは、俺より少し先を歩いたり、また引き返してきてとなりに並んだり、時折、道端にしゃがみこんだり、せわしなく動いているのだ。

「うん…… 今さ……」

「なんだ、また何かおもしろいもんでも見つけたのか?」

 茶化した俺の物言いにも反応せず、ふたたび後ろを振り返って、

「そうじゃなくて……」

 と、つぶやいた。

「どうした?」

「あ、うん…… ううん、なんでもない。たぶん気のせいだよ。さ、早くいこ、ザックス!」

 クラウドは、俺の手を握りしめると、ぐいぐいと引っ張った。

 やれやれ、セフィロスには、ちょっと悪いなぁと思うが、別に俺はそんなつもりでクラウドと一緒にいるわけじゃないんだ。

 まぁ、兄貴分みたいなもんだ。

 クラウドに甘えられるのは、俺にとって、けっこう大事な特権なんだよな。やっぱし、なんか弟みたいだしな。