〜 研修旅行 その後 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<7>
 ザックス・フェア
 

 

 

 こいつらはタークスのメンバーなのに。

 しかもタークスの親玉、ツォンが率いる精鋭部隊だ。

 ……別名、ルーファウス親衛隊……と俺は呼んでいる。なぜならツォンは副社長べったりだからだ。

 つまり、タークスでもツォンのチームは、現在副社長の顧問機関みてーなもんだ。アンタだってよくわかってんじゃねーか、ジェネシス。そんな連中相手に……

「例の修習生の話だが、実は俺、あの子と友達なんだ」

「へ……? ああ、そうなの?」

 と素っ頓狂な声を出すレノ。

 2ndの俺が、クラウドと同室ということは知っていても、ジェネシスと懇意だとは思いも寄らなかったらしい。そりゃクラス1stのジェネシスと修習生じゃ釣り合いが取れないだろう。

 変態『セフィロス』は別格なワケだが。

 ……っつーか、実際、全然『懇意』じゃねーだろうが。

 だいたい友達って表現、まったく実体にそぐわない。

「ああ、俺の方は別にセフィロスみたいな意味合いじゃなくて、ごく普通のフレンドということでね」

「あー、まぁ、そうだろうけどよ」

「それでさ、友人の俺としては、チョコボっ子の進退問題については、やはり気になるんだ」

 かなり開けっぴろげな物言いに、俺の方が動揺した。

 こいつら、本当に信用できるのかよ!? この後、ご注進!とばかりに、ルーファウスに告げ口されたらどうするつもりなんだ!

「そいつぁさァ〜、気持ちはわかるけど、オレらに言われても困るぞ、と」

 そういいながら、グラスを空けるレノ。

「ああ、確かにね。だが、こういった話は君たちのリーダーにはできないだろう? ツォンは悪い人じゃないけど、副社長のこととなると、善悪の判断以前になってしまうから」

「あっはっはっ、違いねーぞ、と!」

 ゲラゲラ、下品に声を上げて大笑いする。ま、彼らから見れば、トップソルジャー・ジェネシスからの相談事を、ツォン抜きで持ちかけられるのは、多少なりとも自尊心をくすぐられるのだろう。

 ましてや、ここは趣味人であるジェネシス御用達のバー。

 出される酒もつまみもひと味違う。

「もちろん、君たちにどうこうしてくれなんて頼むつもりはないさ。いくら事情通だと知ってても、そこまで迷惑は掛けられない」

 ごく自然に持ち上げるジェネシス。

 うげ〜、俺なんか聞いてるだけで、反吐が出る。

「えー、まぁ、たいしてくわしいわけじゃねーけどよ。自然に耳に入ってはくるよなァ、ルード?」

「む……」

 ルードのヤツのほうは聞いてんだかいないんだか。美味そうにグラスを嘗め、わずかに頷き返すだけだ。

「そうだろうね。で、ここだけの話なんだけどね。おまえから見たところ、上層部はどんな雰囲気だ? あ、誤解しないで欲しいんだけど、話を聞いたからといって、何かするつもりは全くないよ」

 軽いジェスチャーつきで、相手の警戒心を解きほぐすジェネシス。

「俺は何の力もない一社員なんだから。ただ友達の進退が気になるだけさ。……彼と仲のいいザックスだってそうだろう?」

 と、いきなり水を向けられて、俺はあわてて頷いた。

「あー、オレらなんて、アンタの知っている程度のことしかわかんないと思うぞ、と」

 レノはそんなふうに前置きしたものの、けっこう真剣に考えている様子に見えた。やはりソルジャークラス1stのジェネシスから、相談事を受けるのはなかなか良い気持ちなのだろう。

「そうだなぁ。アンタも知っての通り、ヒゲデブやらツォンさんやらは、副社長と同意見だよな」

 ヒゲデブ……

 ソルジャー部門も含め、軍事部門長のハイデッカーのことである。

「ああ、そうだろうねェ。ただ彼らは副社長に追従しているだけだろう?」

「そうその通り」

「じゃ、逆にルーファウス神羅へ迎合する形ではなく、独自に懲戒解雇論を唱えている輩はいるのかな?」

 この質問に俺も身を乗り出した。ぜひとも知っておきたい部分だったから。

「いや、いねぇよ?」

 レノは何を聞くとばかりにあっさりと応じた。

 俺はカクンとこけそうだったが、ジェネシスはまるきり顔に出さない。いかにも興味深げに、『へぇ……』と頷いて見せた。

「そうなんだ。それじゃ、結局のところシビアな処分を考えているのは副社長ってコトなんだな」

「またまた、ソルジャークラス1stのジェネシスさんともあろう御方が、なにを今さら!」

 ヘラヘラとジェネシスの肩をバンバンと叩く。

 ルードが無礼な態度を諫めようとするが、酔っぱらいには通じない。

「あー、アレ、ただの焼き餅だよ。アンタんところのセフィロスが、あの修習生にぞっこんだろう? ホレ、いつかおたふくでメディカルセンターに入院したとき、付きっきりだったそうじゃんか。あのとき一揉めあったんじゃねーの?」

「ああ、まぁね。確かに……セフィロスとちょっとね」

 いやいや、『ちょっと』じゃねーだろ。

 あの英雄は『神羅を辞める』とまで言ったんだ。まだクラウドに告白すらしてない段階で、なにを先走っているのかと思ったのだが、副社長にプライベートに言及されたのが腹立たしかったらしい。

 俺的には神羅を辞めたら、ただのプーで、迷惑なオッサンになるだけだと思うのだが。