〜 研修旅行 その後 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<6>
 ザックス・フェア
 

 

 

「チッ……くそ……! なんだってこんなことに……!」

 セフィロスはギリギリと歯がみして毒づいた。

 だが今度ばかりは分が悪い。上層部に一方的に因縁をつけられたわけではなく、クラウドにも、そしてセフィロスにも落ち度があるのだ。

 ジェネシスの物言いは非常にシビアであったが、言っていることは間違っていない。それどころか、ただひたすらクラウドの身を案じているだけのセフィロスに、現実を見せてやったいう意味合いも強い。

「……セフィロス……」

 俺は、傍らでうなっている英雄に声を掛けた。

「なんだ! 今、いろいろ考え中だッ!」

 ヒステリックにわめくセフィロス。

「……すまん、俺がもうちょっとしっかりしていたら……」

 どうしても自責の念が謝罪の言葉を口にさせる。だが、ヤツはひどく鬱陶しげにそれを遮った。

「まったくだ! このクソ役立たずのハリネズミが!」

 ……フツー、謝ってる人間にそこまでいうか……?

「だが、今はおまえの無能を罵っても始まらん! なにか方法はないか…… てめェもボサッとしてないで知恵を絞れ!」

「いや、もちろん、考えてはいるさ。でも、ジェネシスの話聞いたろ? アンタはむやみに動かない方がいい」

「クラウドが除籍処分になるのを黙って見てろってのか!?」

「そうじゃねーよ。……それにまだ本当に最悪の処分が下されると決まったわけじゃないんだ」

 俺は言った。まるで自分に言い聞かせるように。

「……ルーファウス気に入りのアンタが、クラウドのために動いたら火に油を注ぐようなもんだ。……わかるだろ?」

「……チッ! クソ……!! あのガキを甘く見ていた」

 セフィロスは低く舌打ちした。

「……ルーファウスのことか?」

「そうだ。……副社長とはいっても、それほど大きな権限を持っているわけではないと……そう思っていた」

「アンタのいうとおり、今の副社長の権限は会社全体で見ればそれほど大きなもんじゃねーよ。だからこそ、修習生の『進退問題ごとき』に口出しができるんだろ」

 ため息混じりにそう答える。社長レベルになってしまえば、エデュケーションのあれやこれやに口出ししているヒマなんぞないだろう。

「…………」

「セフィロス……?」

「……部屋へ戻る」

 そういうと、ヤツはスックと立ち上がった。ティールームの端っこで、頭を悩ませていても仕方がないと考えたのだろう。

 それに俺もセフィロスも、参謀というキャラではない。そりゃ、クラス1stのセフィロスは、戦場では頭を使う任務に就かされることがあるだろうが、こういったことは、むしろジェネシスの得意分野だと思う。

「……あのさ、俺、ジェネシスともうちょっと話してみるよ。俺もアンタもクラウドと近い場所に居すぎるから、見えなくなっている点もあると思うんだ」

「…………」

「ジェネシス、アンタにはずいぶんシビアな言い方してたけど、いろいろ考えてくれてるんじゃねーかな」

「……ケッ……あの三文詩人が……」

「クラウドのためっつーか、それよりもアンタに関わることだからさ。なんだかんだ言っても、ジェネシスが本当に友人だと思っている連中って少ないし。……アンタは、その中のひとりに間違いないしな」

 ……俺もその中の一人なのかもしれないと思えたのは、彼と一緒にニブルヘイムに行ったときだった。

「気色悪ィこと言うな! オレはオレで考える。……テメェは勝手にしろ!」

「お、おい! 思いつきで行動すんなよ! 考えがあるなら相談してくれよ! セフィロス!」

 ダスッダスッ!

 と、力強く遠ざかっている足音を聞きながら、俺は尚もそう言い募った。

 

 

 

 

 

 

 ……そして、その晩。

 俺はなぜかハゲと赤毛を眺めつつ、酒を飲んでいた。

 タークスのルードとレノである。俺のとなりの席にはジェネシス。

『夕食を一緒に』

 という、誘いをジェネシスからもらって、指定された場所へ行ってみたらこの構図になっていたというわけだ。

 クラウドには上手く言ってあるし、明日の仕事は午後がメインなのでかまわないのであるが……

 

「あー、ツォンさん? あの人に掛け合ってもムリムリ! 基本、ツォンさんは副社長のママ代わりだからね。顔も覚えていない修習生がどうなろうと、知ったこっちゃないでしょ。なぁ、ルード」

「む……」

 まだできあがっているわけではないのに、やたらテンションの高い赤毛と、ほとんど声を発さないハゲ……

 なんだよ、相談するつもりならキャラを選べよ、ジェネシス。

「ああ、なるほどねェ。さすがタークス、よく見てるな」

「へっへっへ。ま、ルーファウス神羅が副社長に就任してから、ツォンさんのチームは副社長付みたいな感じだからな。な、ルード」

「む……」

 かくいう、レノとルードもツォンさんのチームだ。否が応でも副社長との接点は増えるのだろう。

「ところでさ、おまえを見込んでちょっと頼みたいことがあるんだよ、レノ。ルードにも聞いていて欲しいのだが、協力してもらえるか否かは自分で決めて欲しい」

 オイオイオイ、なに言うつもりなんだよ、ジェネシス!

 酒酔いも相まって、冷や汗が伝わるこめかみを、俺はさりげなくグイと拭った。