〜 修習生・研修旅行 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
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 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 はてさて、旅行とは言ってもあくまでも『研修』旅行だ。

 約3時間弱のフライトを終え、目的地に到着したのは、ちょうど昼前といった刻限だった。

 ここまでは予定通り。乗り物酔いしたクラウドには気の毒だったが、乱気流に捕まることなく、目的地にほぼ時間通り到着できたのは上出来だろう。

 午前の日差しがまぶしいくらいのその場所は、だだっ広い……丘陵地であった。芝生のように生い茂った緑が目に痛い。あー、やっぱし、自然はいいぜ〜!

 研修生たちの宿泊施設は、お世辞にも過ごしやすそうとは言い難かったが、広さだけは十分にある。

 さっそく修習生たちは室内を整えるのに奔走した。

「ザックス!」

 タカタカという足音が近づいてきた。

「おう、クラウド。どうだ気分は?」

「うん、もう全然平気〜。飛行機から降りたら何ともなくなっちゃった」

「チッ、現金なもんだな、おまえは」

「えへへへ〜。じゃね、これから皆でゴハン作るんだって」

 今度は教官に怒鳴られる前に、クラウドは宿泊所へ引き上げていった。やれやれ可愛いもんだぜ。

 今日は第一目の小手調べで、食事を飯ごう炊飯するらしい……ってキャンプかよ、オイ!?

 まぁ、せっかく修習生全体でやってきているんだ。楽しみもあっていいだろう。

 ……しがないソルジャー2ndの俺は町まで買い出しだぜ。

 一週間ほどの研修なのだ。最低限必要なものは飛行機に積んでは来ているが、それでも医薬品や栄養剤の予備、簡単な食い物など、ある程度は買いためておく必要がある。

 修習生は教官の許可がないと宿舎から出ることはできない。必然的にこういう力仕事は俺たちが片づけることになる。

 

 

 

 

 

 

 急な山道をバンで飛ばし、人里へ向かう。

 

 いや、これホント誇張じゃなくて『人里へ向かう』ってカンジだから。合宿所までもっとも最寄りの町まででさえ、車で三十分以上飛ばさねばならない。しかも信号機ひとつない山道をだ。

 当然街灯なんざあるはずないから、街へ降りるのは陽の出ている間じゃないと危険で仕方がない。

 ようやく人通りを見かけるようになり、町へ到着だ。

 一応観光地として機能しているのだろう。ハリボテのような場違いなホテルが建っており、のどかな噴水公園にはカメラを持った人たちが、せっかちにシャッターを押していた。

 ニワトリやワンコを追いかけ回しているのは土地の子供だろう。

 

「あー、ええっとぉ……後は薬と……チョコでも買っておくかな。甘いものは体力負けした奴に効くし……」

 みんながみんなクラウドみたいに、甘い菓子を大量に持ってきているわけではないだろう。

 のんびりとした田舎町を、俺はひとりで場違いにせかせかと歩いた。

 

「少し出かけて来る。今夜……またな」

「うん。待ってる。絶対に来て」

 裏通りから、チュッという軽い口づけの音。

 ウゼーんだよ、こんな田舎町でエロエロしてんじゃねーよ、どこぞのバカップルはよ。こちとらしがない合宿の付き添いだっつーのに。

 楽しみはキャンプファイヤーくらいで…… 

 エロエロ光線の出ているほうから目線をそらせ、俺はぶつぶつと文句を垂れた。

 言っておくがセフィロスとクラウドのドタバタばかりにとらわれていたが、俺にだって好きな女の子くらいはいるんだ。とにかく仕事にプライベートと時間がなくて、なかなか会う時間もとれないのだが。

 セフィロスの野郎がもう少し落ち着いたヤツなら、こんなに困ることもないのだが……

 ったくセフィロスのヤツときたら……セフィロスの……

 

 ……セフィロス……?

 

 俺はバッと頭を上げて、今のやり取りの聞こえた方へ顔を向けた。

 なんだか聞き覚えのある声だった。さきほどの少年はもはや姿の見えなくなった相手に向かって、未だ手を振っている。

 クラウドによく似たブロンドの……わりと小柄な少年だ。

「……いや、まさか居るわけねーじゃん。疲れてんなァ、俺」

 苦労性のおのれに思わず自嘲する。だいたい昨日から奴のことは見ていないんだ。フライトの時にだって姿を現さなかった。せめて合宿中くらい、ソルジャー1stの面倒野郎たちのことは忘れたっていいだろう。

「……もしかしたら、何か仕事入ったかもしれねーし。さすがにそこまでバカじゃねーだろ」

 ひとりごちてみて苦笑する俺であった。

 

「……誰がバカじゃないって?ザックス」

「だから、セフィロスの奴がさ……って、ええええっ!」

 俺は、妙になれなれしく肩を叩いてきた男の顔を仰ぎ見た。

 背の高い俺よりもさらに上にある、綺麗に整ったツラ……こんな田舎町で見ると、それこそ映画スターだのなんだとといっても通ってしまいそうなほどに洗練された男……