〜 出逢い 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<7>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 

 俺の不安が的中したのは、早くもその翌日のことであった。

 いつもどおりアンジールとのミーティングを終え、仕事に取りかかろうとしたときのことだ。

 野郎はヅカヅカと俺の前までやってくると、何のてらいもなく言い放ちやがった。

「おい、ザックス。おまえと同室のクラウドに会いたい。今夜部屋にオレを連れて行け」

 オッサァァァン!!

 すでに名前まで知ってやがるよ、このエロオヤジがァァァ!

「……何の用だよ、セフィロス」

「別にいいだろ。あの子が気に入ったんだ。会って話をして告白したい」

「オイィィィィィ!!」

 奇しくもその場にいたアンジールと俺のツッコミが揃った。

 いや、突っ込みたくもなるっつーの。

「おい、アンタ、なに言ってくれてんの? あいつはまだ十四才の新入社員なんだぞ? 入社式を終えたばっかの修習生だぞ?」

「ああ、知っている。昨日、エグゼクティブ・スペースの中庭で運命的な出逢いをした」

「英雄! 人の話聞いてる?」

「あの子もオレのことを知っていたぞ」

「たりめーだろッ! 神羅でおめーのことを知らないヤツなんざいるか!!」

 ゼッゼッと息を弾ませて、俺は涼しげなツラで佇んでいるセフィロスを怒鳴りつけた。

「いや、まぁ……あの、落ち着け、ふたりとも」

 ゴホンと咳払いをして、割ってはいるアンジール。

「あのな、セフィロス。おまえは自分の立場がわかっているのか? いかに見所のある少年を見つけたとはいえ、その子はまだ入社式を済ませたばかりの新人だ。当然不慣れなことばかりで、しばらくは不安な日々が続くだろう。それなのに、おまえのような立場の人間に、いきなり親しげに振る舞われては、輪を掛けて当惑させるだけだ」

「…………」

「まずは、その子がカンパニーに慣れ、気持ちに余裕ができるのを見計らって、先輩として指導してやってはどうだろうか」

 ……いかにも

 ……いかにもアンジールらしいセリフだ。

 でもね、違うから、アンジール。この男の望んでいることは違うからね、コレ。

 一緒にツッコミができたから、さすがに鈍い彼でも、セフィロスの言葉の意味を理解できたと思ったのだが……甘かったらしい。

 超硬派で堅苦しいアンジール。

 平気で浮き名を流すセフィロス、ジェネシスとは対照的に、身持ちの堅さでは天下一品なのだ。でも、この連中と長く付き合っているんだから、そろそろこの人のクソとんでもない性癖とか……そういうの理解してくれよ〜……

「……そうだな。おまえのいうとおりだ、アンジール」

 驚くべき事に、セフィロスはしかめつらしく、彼の言葉に頷き返した。

 ウソでしょ? ホントに? いや、そんな甘くないよね、アンタは。超執念深いし……

 いや、本当に『驚くべき』であったのは、セフィロスの次のセリフであった。

「まずは『頼りになるお兄さん』ポジションを狙うつもりだったのだ。……告白は性急に過ぎたな」

「オッ……オィィィィ!!」

 俺様は間髪入れずに突っ込んだ。

 冗談じゃねーぞ! クラウド相手にいきなりナニするつもりだったんだよ、コイツは!!

「なんだ、ザックス、騒々しいぞ」

 わかっていないアンジールが、動揺する俺をたしなめる。

「いやッ……だって、アンタ…… この人……」

「これまで後輩の育成に興味がなかったセフィロスが、新入社員に関心を示すのはいいことだ。まぁ、今年入社の新人では、俺たちと一緒に仕事ができるのはまだまだ先になりそうだがな。ハッハッハッ」

 ハッハッハッじゃねーだろッ! 何のんきなこと言ってんの、この超ニブ漢は!!

 セフィロス、ジェネシスと一緒にいて、ここまで染まらないアンジールのことは尊敬するが……

 だいたい、『関心を示す』って、関心の方向性が全然違うからね、コレ!!

「おい、ちょっ……セフィロス! こっち!!」

 埒があかないので、俺は恐れ多くも神羅の英雄の腕を引っ掴んで、ミーティングルームから連れ出した。

 セフィロス本人も、クラウドと同室となった俺にもっと話を聞きたかったのだろう。あっさりと促されるまま、着いてきたのだ。

 ってゆーか、なんで、俺とクラウドが同室ってことまで知ってるわけ? 名簿が配られたのは一般寮の連中だけなのに…… この人は!!

 

 

 

 

 

 

「おいッ! ちょっ…… 中入れよ、セフィロス。……よし、誰もいないな!!」

「ザックス、確か寮には大浴場があったな」

「は!? アンタ! この流れでどうして風呂場の話になってんの!?」

「いや、各部屋にユニットバスがついていたと記憶しているが……クラウドはどっちを使うんだ?」

「あのなァ! そんな話をしに来たんじゃねーっつーの!! いいか、言っておくがな、セフィロス!!」

 俺はダンとばかりにデスクを叩いて、彼の注意を惹きつけた。でなければ、このエロ英雄は、いつまででもおのれの思考に沈んでいそうであったからだ。

「チッ……なんだ、やかましい」

「聞けっつーの! クラウドはな、ごく普通の14才のガキだ。しかもド田舎出身で、同じ新入社員と比べても子供っぽく見えるほどの……」

「ああ、ニブルヘイムとかいう場所らしいな。いずれ親に挨拶に……」

 なんの挨拶にだよ〜〜っ!?

 もうホント……ホンット、この男は、一旦エンジンがかかると、一足飛びのジェット機……いや、もはやロケットレベルのブースターを備えているらしい。

 わずか一日足らずで、人事部以外には極秘扱いになっている、個人データをしっかりとゲットしていた。

 

 ……だが、今回ばかりは相手が悪い。

 俺的には、親友であり、弟分とも思っているクラウドなのだ。大切な友人でもある彼を英雄の毒牙から守ってやらねばならない。

 だいたい、セフィロスは遊び好きの男なのだ。相手もその都度様々に変わる。男でも女でも同じヤツと長く付き合っていた時期を俺は知らない。……『英雄、色を好む』ってヤツなのだろう。

 ……だが、そんな連中の列に、クラウドを入れさせるわけにはいかないのだ。

 あいつは、純粋にソルジャーに憧れ、セフィロスを英雄として尊敬している。まだ、たった二日ばかりだが、二人部屋なのをいいことに、ずいぶんと色々な話をしたんだ。

 お互いに、魔晄炉しか目玉のない、田舎出身であること。(ここでさらに意気投合した!)まだ十歳にもならない子供の頃、田舎町では入荷されない雑誌が欲しくて、隣町まで延々5時間以上歩いたこと…… もちろん、セフィロスの活躍が掲載された情報雑誌だそうだ。

 田舎にガールフレンドが居て、その娘に認められるためにも、強くなりたい、ソルジャーになりたいと、幼い頃心に決めたらしい。

 そしてティファという(巨乳の)女の子と約束したというのだ。もし、彼女がピンチに陥ったら、ソルジャーになった自分が必ず助けに行く……と、頬を昂揚させて語っていた。

 『ええ話や〜』っていったい、何度涙を流したことか!!

 すれっからしたガキの多いこの時代に、この純真さ、純情さ、純朴さ……ええと、まだ「純」がつく言葉でなにかあったかな。

 とにかく、クラウドは今どき珍しい子供らしい子供で、きちんと将来の夢を持って、カンパニーに入ってきたのだ。ならば親友として、彼がその夢を完遂するのを、見届けてやらなければならない。せめて、当初のところ、きちんと研修を受けられる環境を整えてやるのが俺の使命なのだ!!