〜 出逢い 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<8>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 クラウドのケツは俺が守る……!!  死守するんだ……ッ!!

 ああ、いや、ちょっと卑近な物言いになっちまったかな。

 

 だから、だ。

 この目の前にいる、銀髪の野獣を、大切なクラウドに近づけるわけにいかない。

 風呂場になんぞ乱入されたら最期、ティファちゃん(?)のための貞操は、儚く散らされることになるだろう。

「おい、なんだ、この野郎。いきなり黙り込みやがって」

「……俺の果たすべき使命を反芻していんだ」

「はァ? わけのわからんことを。そんなことより、オレ様の『頼りになるお兄さん』計画に協力しろ」

 いけしゃあしゃあと言ってのけるセフィロス。なぁ〜にが、『頼りになるお兄さん計画』だ。片腹痛いわ!!

 こいつに『これまでの素行を省みる』という超基本的な、人としての行動は期待できないのだろうか。

「フフン、出会いは上手くいったからな。次は……」

「黙らんかい、このエロジジイがァァ! 『頼りになるお兄さん』の役目は、既に俺がしっかり果たしているわァァァ!! だいたい、アンタみたいな、遊び人がクラウドみたいな子どもに構う必要はないだろ! 相手が欲しいんなら、行きつけの店があるだろうが!」

「……フッ、行きつけの店か。誰しも若かかりし頃は刹那的な快楽を求めるものだ……」

「っつーか、アンタ、三日前にも行ってるよね?  会食すっぽかして。なんかもう過去回想みたくなってるけど」

「……フッ……いいか、ザックス」

 俺の苦言を軽くスルーして、英雄は疲れたような笑みを浮かべた。

 もののわかったようなツラをしつつ、無知な後輩に言い聞かせる雰囲気を醸し出すセフィロス。俺の両肩にそっと手を置き、噛んで含むように言葉を続ける。

 

「……ただの肉欲と恋は別物だ」

「キモッ!!」

「ちゃんと聞け、ハリネズミ。……おまえも男だからな、身体の欲求はわかるだろ」

「いや、そりゃそーだけどよ」

「クラウドへの気持ちは恋だ」

 断言しちゃったよ、英雄ゥゥゥゥ!!

「当然、『恋』にも、肉欲はある。だが、遊びと違うのは、そこに至るまで両者の間に築かれる信頼関係と恋愛の情なのだ。……深いな」

「いや、俺が言いたいのは、ただ単にクラウドは……」

「いいから聞かんか、ボケナス。別にあの子に無理強いをしようというわけではない。互いに知り合い、彼がオレを愛してくれた時点で関係を持とうと思う」

 結局、やりたいっつってんじゃねーか、コルアァァァ!!

「あの子はまだ子供だ。性的にも未熟だろう。……自分でしたこともないかもしれない」

「ちょっ…… そーゆーあからさまなこと言わないでくれる?」

 こいつに羞恥心っつーもんはないのか?!

「フッ……『頼りになるお兄さん』が、手取り足取りナニ取り、指導してやりたいのだ。上官としてな」

「ナニは取るんじゃねぇッッ!! 上官関係ねーだろッ! だいたい上官って、まだクラウドの所属だって決まっては……」

 ま、まさかッ!? このオッサン……!!

「ふっふっふっふっ……」

「アンタ……まさか…… 名簿に手を加……」

「さぁて、何のことかな。まだ修習生なのだ。正式な所属は卒業後に決定されるだろう。……暫定的なものだ」

 クックックッと悪魔の微笑を浮かべるセフィロス。

 ……軍事部門の修習生は、語学や数学、生活一般などの教養学科も学ぶが、プレ・ミッションとして、様々な軍事訓練が行われる。

 マテリアの取り扱いから始まって、剣術に射撃。どれも兵士には必要なスキルだ。

 一般の教科学科とは異なり、軍事訓練には現役のソルジャーが当たることが多い。それは当然だ、実戦は誰よりも俺たちソルジャーがよく知っている。

 とはいうものの、指導業務は大抵、3rdや2ndに回ってくる仕事であって、クラス1stが研修生の実習を担当するなんて聞いたことはないが……

「アンジールに、今年はわずかなりとも実習の受け持ちをしてもいいと伝えてやったまでのこと。フフン、ヤツはとても喜んでいたぞ。『ようやくセフィロスにも後進を育てる気持ちが……』とかなんとか言ってな」

「アンタ、アンジール、騙したなッ!!」

「人聞きの悪いことをいうな。指導教官をするのは本気なんだからな。……ま、偶然、その相手がクラウドになるかもしれないがなァ。こればっかりはどうだかな……クックックッ」

「オイィィィィッ!!」

「さて、そろそろメシ時だな。社食にでも行くか」

 まるでスキップしそうな様子で楽しげに言う。俺に至っては腹が減るどころの気分じゃないっつーのに!!

「社食って……アンタ、いつもエグゼクティブルームか、ルームサービスだろッ!?」

「寮の食堂を利用しちゃ悪いか? オレも社員だぞ」

「おい、セフィロス!」

「おら、どけ。おまえはまだ仕事が残ってるんだろ。じゃあな!!」

「セフィロス、待っ……」

 言いたい放題って退けると、セフィロスはさっさと踵を返し、部屋を出ていってしまった。

 ……ここに至って、どうやらセフィロスが本当の本気……本マジの本気であることを認めざるを得なかった。

 クラウドの入社式の話から、ヤツが彼を気に入ったのは理解できていたのだが、まさかここまで熱が高いとは……

 ヤベー……

 ヤベーぞ、ザックス。

 いや、マジで。

 大切な親友が、あの野獣の餌食になるのを黙って見ているのか……?

 いや、否!!

 断固、否!!だ。

 クラウドは、この俺が守る……!!

 誰もいなくなった談話室で、俺はデスクを叩き決意を固めた。

 今後、激しい戦闘が予測される。

 ……だが、ミッション以上に、負けるわけにはいかない。失敗するわけにはいかないのだ!!

「っとヤベェ!! クラウドに部屋で待ってろって言わなきゃ!!」

 俺は尻ポケットから、慌てて携帯電話を引っぱり出したのであった。

  無事、クラウドを確保し、ふたりで外食に出た帰り道……寮の廊下ですれ違った同僚が、さも驚いた風に話しかけてきた。

「今日さァ、大浴場に誰が来たと思う? セフィロスだよ、セフィロス!! あんな近くで見たの初めてだったぜ〜」 

 

 俺は死力を尽くしてクラウドを守らねばと、その時あらためて思い知らされたのである。

 

 

 

終わり