〜 出逢い 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<4>
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 入社式が終わり、おれたち新入社員は寮へ戻らず、そのまま自分の教室へ行くことになった。

 クラス担当教官から今後の日程についての説明があるらしい。

『入社式』の後に『教室』などという学生っぽい言葉が続くのが不思議に感じるかも知れないが、神羅の兵士部門は13才から入社できる。正確には14才になる年から。

 もちろん、兵士部門とひと括りにしても、さまざまな配属先があるわけだから、16才まではきちんと修習生として一般教養の授業を受けなければならない。正式に「社員」としての任務につけるのは、ほとんど修習生の時期が終わってからだ。

 その後、本人の資質により、見習い兵から一般兵へ、まれに軍事部門ではなく内勤のほうへ回されることもある。

 いうまでもなく、おれたちが憧れるのはソルジャーなわけだが、修習生からすぐにソルジャーになれるヤツなどまずいない。

 当然、人よりノロマなおれなんて、いったいいつなれるのだろうか。

 ……いや、たとえ、時間がかかっても、絶対にソルジャーになるんだ。そのために、神羅に入社したんだから。英雄セフィロスに憧れて、この地へやってきたのだから……

 

「以上。では、テキストを受け取った後、本日は解散、各自寮の荷物整理と社内設備について学んでおくように」

 ハッと顔を上げると、いつの間にか話が終わっていた。

 いけないいけない。

 集中しなくちゃ。直前まではちゃんと緊張感を持っていられるのに、肝心な説明が始まるとぼんやりしてしまう。ニブルヘイムの分校に居たときも、よくそんなことがあったな。それでいっつも大事な話を聞き逃しちゃうんだ。んで、ティファに教えてもらって……

「はい、テキスト」

 前の席の人に声を掛けられて、またもやだらしなく呆けていたことに気付いた。

「あ、ご、ごめん。ありがと」

「この分で終わりだって。けっこうあるよね」

 そう言って前の席のヤツが笑い掛けてくれた。メガネをかけた生真面目そうな顔が柔和に笑み崩れてホッとした。

「ねぇ、ごめん。さっき聞き損なったんだけど、今日ってこれもらってから……」

「日程のこと? とりあえず解散らしいよ。各自寮の部屋を整えに戻るようにって。それから、社内の施設設備について、本を読んでおくようにってさ」

「あ、ありがとう。あ、お、おれ、クラウド。クラウド・ストライフ。よろしく」

 勇気を出して自己紹介する。

 メガネの彼も名を名乗ってくれ、互いに「よろしくな」と挨拶した。

 その様子に気付いたのか、周囲の席のヤツらも、次々に自己紹介し出して、おれたちのまわりにはちょっとした「友だちの輪」ができたのであった。

 

 

 ……よかった。

 入社第一日目、スタートは最悪だったけど、なんとかやっていけるかもしれない。

 ううん、そんなこと言ってちゃいけない!! ちゃんとやっていくんだ。

 もう少しおしゃべりしていきたい気分だったけど、なんといっても今日は初日。

 やらなきゃならないことは山ほどある。

 寮の部屋に荷物は届いていたけど、ぎりぎりに滑り込んだおれは、荷解きはまだだったし、施設設備の本とやらも読んで覚えてしまわなければならない。

 それに、やはり部屋が整っていないと落ち着かないのだ。

 おれたちは「じゃ、またな!」と友だちらしく声を掛け合い、それぞれの場所へ散っていった。

「同室の人……帰ってるかな。まだかな」

 ひとりになると、つい心細くなってしまう。

 特に、おれの場合はふたり部屋だから、相方が居なければ、本当にひとりきりだ。それはやっぱり少し寂しい。

 つらつらと考えつつも、今度こそは迷わないように、しっかりと寮の部屋への道のりを確認しつつ、おれは研修棟を後にした。

 

 部屋に着いてみると、残念ながら先輩はまだ帰っていないようだった。

 任務が忙しくて今日は戻らないのかも……

 しかし、がっかりしていても仕方がない。まずは荷物を整理しないと。支給された真新しい制服他一式も机の上に放置されたままだ。

  

 部屋の中にデスクはふたつ。そしてベッドがふたつ。クローゼットは作りつけの壁収納なので、部屋自体はそれほど広くはないが、狭苦しい印象でもない。

 ……ただ、ほとんどの家具がスチール製のもので……いや、実用性を考えればそのほうがいいのだろうが、田舎の家で木製のベッドに寝ていたおれには、なんだか冷たそうに感じた。

 ……ちょっと感傷的になりすぎかな。

 しょっぱなから失敗しちゃったのが効いてるのかなァ…… まさかあんな形で憧れの人と口を聞くことになるなんて。セフィロスには早く逢いたかったけど、彼におれを知ってもらうのは、もっとずっと後のほうがよかった。

 一生懸命勉強して身体を鍛えて……研修が終わったら任務に励んで! 人よりずっとずっと努力して、少しでもセフィロスの近くに行けそうになったときに……逢いたかった。そして認めてもらいたかった。

 それなのに…… 

「ああ、神様。どうか、セフィロスさんがダメダメなおれとの出逢いを忘れてくれますように!」

 両手を組み合わせて、願い事を口にした瞬間、部屋のドアが開いた。