〜 出逢い 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<3>
 セフィロス
 

 

 

 

「……以上です。では解散してください。お疲れ様でした」

 滞りなく入社式が終わり、オレたちソルジャー代表者は執務室に戻った。新入社員が入社すると、まれにバトルトレーニングなどで手空きのソルジャーが駆り出されることがある。もっとも、クラス1stのオレなどは、ここ数年教壇に立ったことなどないが。

 統括のラザードによりミーティングの内容は、今年は新入社員が多いので、多少現役ソルジャーにも新人教育に手を貸してもらうことがあるかもしれないとの話だった。

 彼の話は非常に簡潔で、式後の会合はあっさりと終了した。

 

 例年、入社式にはソルジャークラス1stの主立った者は出席することになっている。もちろん、任務で不在の者は無理なわけだが、なぜかこの日に限っては、オレとジェネシス、そしてアンジールの三人に外地での仕事が入ることはない。

 つまりオレたち三人は、出席要員。……客寄せパンダみたいなモンか。

「そうじゃないだろう、セフィロス」

 しかめつらしい顔をして、くそまじめに説教してくるこのゴツイ男はアンジール。社内に親しい者が少ないオレにとっては『友人』になるんだろうな。

 いささか口うるさいのが玉に瑕だが、ソルジャー部門にはいなくてはならないまとめ役だ。

「いいか、セフィロス。新入社員の過半数が兵士部門での採用なんだ。ソルジャーに憧れる少年たちも多いだろう。そこに俺たち現役の人間が出席し、現場の厳しさと彼らへの期待を述べることが……」

「述べたのはおまえだろ。オレはただ座っていただけだ」

「じゃあ、次の入社式の演説はセフィロスがしたらいい」

 そう言って会話に割り込んだ男……こいつはジェネシス。スカしたツラして、いつでも『LOVELESS』とかいうエロ小説を眺めている変態ヤロウだ。

「冗談じゃない、断る。やりたいならおまえがやれ、ジェネシス」

「『LOVELESS』の朗読ならしてもいいけどね」

「あのなァ!おまえら! いいか、セフィロスもジェネシスも、ソルジャーとしての自覚と誇りを……」

 お約束の説教モードに入ったアンジールの言葉を遮り、めずらしくもジェネシスのほうから話を振ってきた。

「セフィロス、機嫌いいな。めずらしいね」

「……なんだ、唐突に」

 へらへらした三文詩人のような風体のくせに、妙に鋭いジェネシス。

「いや別に……ああ、そういえば、あの子、どうした?」

「あの子?」

 そう聞き返したのはアンジールのほうだった。さぼり魔のオレとジェネシスの代わりとばかりに、一日中駆け回っていた彼にとっては、迷子になった新入社員のことなど、とっくに記憶からはじき出されているのだろう。

「中庭で逢った子がいたじゃないか。セフィロスにぶつかって、泣きそうになってた子」

「オレが泣かせたみたいな言い方をするな」

「はは、悪い」

 またもやニヤニヤ、ヘラヘラだ。

 どうもその含み笑いを見ていると、「泣かせた連中など両手に余るほどいるよな」と、無言のうちに言われているようで不愉快だ。

 ……いや、ヤツは口にしていないのだが。しかしそういう想像をさせられることそれ自体がムカつくんだ。

「ああ、そういえば、迷子がいたな。セフィロスに任せたんだっけな。ちゃんと式場に連れて行ってやったか」

「当然だろ」

 憮然とした表情でオレは返事をした。

「別の場所に連れてっちゃったりしてな」

「おい、ジェネシス!」

「ははは。大丈夫だよ、アンジール。さすがにセフィロスだって、新入社員相手にそんな意地の悪いことはしないさ。ちゃんとその子を連れて式場に入ってきたよ」

 ……コイツ、見てやがったのか?

 オレが自分の席に着いたとき、先に座っていたこいつは、いつものようにエロ小説を眺めていたのだが……まさか……

「綺麗な金色の髪の可愛らしい子だったね」

「……まぁな」

「名前は聞かなかったのか?」

「教えん」

「アッハッハッ」

 クソ……カマを掛けやがったのか、この変態ヤロウめ。

「フン! ばかばかしい。オレは部屋に戻る。……言っておくが、あの子はオレが先に目を着けたんだからな。ちょっかい出すなよ、ジェネシス」

「ああ、わかってる」

「へらへら笑いながら返事をするな! 信用ならないヤツだ」

「わかってるさ。チョコボのヒナは、おまえになつきそうだよ」

「お、おいおい……ふたりとも……」

 困惑顔のアンジール。

「いいか、セフィロス。新入社員に目を掛けてやるのはいいが、他にも大切な仕事はあるんだからな。これからの若者には夢と誇りを……」

 アホか、この朴念仁が!!

 長くなりそうなアンジールの話を適当に流し、執務室を後にしたのであった。

 ……チョコボのヒナか。

 あの変態紅コート、上手いこと言いやがる。

 フワフワのハニーブロンドが、まるでチョコボの尾のように愛らしく、ひょこりと立ち上がっていた。少女めいた淡い肌は繊細な作りの造形にとてもよく似合っている。瞳は海の色を模したブルーアイズ。

 見知らぬ場所で、おどおどと怯えている様が、ひどく可愛らしく見えて。

 ……久々のヒットだ。

 いや、遊びではない。本気なのだ。

 ……あの子が気に入った。なんとしてでも手に入れたい。

 となれば情報収集だろう。数多の遊び相手と同じように「引っかける」わけにはいかない。田舎の子供らしく純真で真面目そうな少年だ。

 

 ……まずは「頼りになるお兄さん」ポジションをゲットだ!

 久々に沸き立つ闘志を押し殺し、オレは足早に人事資料室へ向かった。