Wet season Vacation
〜アイシクルロッジ in ストライフ一家〜
<20>
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まずいな」

「……セフィロス、こちらの……平原向きの部屋へ」

「よし」

 オレたちはとなりではなく、向かいの部屋へ入った。もう村の様子をうかがう必要はない。

 

「うっ……」

 情けないことだが、オレは部屋に入るなり、ソファに頽れた。まるで異次元にいるように視界がうねるのだ。痛みよりも吐き気が込み上げ、オレは口元を押さえた。

 嫌な冷や汗が首筋を伝わり、額が熱をもったように茹だってくる。

 

「セフィロス……ここに横になってくれ」

「いい……よけいなことを……」

「そんなことを言っている場合じゃないだろう!少しの間だけでも身体を休めてくれッ!」

 そういうと、まるでふところに飛び込んでくるように、ヴィンセントの身体がオレをソファに押し倒した。額に冷やしたタオルが乗せられる。

 

「すまない……セフィロス……私のせいで……」

「……この期に及んでくだらんことをいうな」

「……でも……」

「…………」

 オレは大きく息を吐き出すと、双眸を綴じ合わせた。目を開けていると吐き気がひどくなる。

「セフィロス……?」

 不安げなヴィンセントのオレを呼ぶ声。

「…………」

「……セフィロス?」

「……大声を出すな」

「……あ……ああ……す、すまない……」

 ヴィンセントが震える声でつぶやいた。ひどく喉が渇いている。体内の毒と薬がぶつかりあっているのだろう。もう少し、落ち着いてくれればまだしも、今また急襲されるとなるとかなり厳しい。

 

「……ヴィンセント、水をよこせ」

「あ、ああ、わかった!」

 ヤツは弾かれたように立ち上がると、すぐに水を汲んできてくれた。手を差し出して受け取ろうとするが、指が震えてしまう。

 ヴィンセントはそれを察し、オレの肩を抱え上げ、飲みやすいように口元にコップをあてがってくれた。

 

「……フ……やれやれ、こういうときは口移しだろ。気の利かないヤツだ」

 おどけていって見せたが、ヤツは言い返しも窘めもしなかった。

「セフィロス……セフィロス……」

 俺の名を綴る声が揺れる。

「……どうした……」

「……セフィロス……頼むから……しっかりしてくれ……わたしは……私は……」

「……おい、ヴィンセント?」

 オレはヤツの名を呼ぶ。どうにも様子が尋常でない。

 

「……おい、何を泣く? 縁起でもない」

「あ、ああ……す、すまない……また……情けないところを……」

「…………」

「でも……心配で……心配で……頼むから死なないでくれ……どこにでも一緒にいくから、君の望むことなら……なんでもするから……」

「……バカが。落ち着け……オレがこんなところで死ぬか」

「…………」

「……男が軽々しく泣くな」

 コクンコクンと頷くが、ボトボトと涙が落ちて、ヤツの紅いマントに染みを作った。

 

 

 その時だった、締め切った窓の向こう側……平原のほうに光が輝いた。

 

 ヴィンセントが身を強ばらせる。

「セフィロスは動かないでくれ」

「…………」

 オレが返事をしないでいると、ヤツはそっとオレの身体をソファに戻し、窓に近づいた。わずかにカーテンを滑らせ、おかしな動きをみせる光を捜す。

 

「……あ……」

 ヴィンセントが惚けたように声をあげた。

「おい、どうした」

「セフィロス……」

「なんだ、どうしたんだ」

「もう、もう……大丈夫だ……よかった……」

「おい、ヴィンセント?」

 オレは立ち上がり、よろける身体を叱咤して、窓辺に寄った。

 

 大型のジープが雪を跳ね上げて、こちらへ向かってくる。

 

 襲いかかるモンスターをものともせず、ジープから散弾銃を放つ男、そして二枚刃の剣で振り払うヤツ……

 

「クラウドたちだ……!」

 ヴィンセントがつぶやいた。

 運転してる金髪のガキはクラウドだろう。

 

「クラウドッ! こちらだ!」

 オレは声を張り上げた。

 

 緊張の解けたヴィンセントが、ズルズルと窓辺にうずくまってしまった。