Wet season Vacation
〜アイシクルロッジ in ストライフ一家〜
<13>
18禁注意
 セフィロス
 

 

 

 

 両手の自由を奪われ、一糸纏わぬ姿でオレの前に横たわる、この状況……

 ……途切れることのない快楽と、ブレイクへの恐怖……

 オレの手がすっと伸びると、痩身を強ばらせ、組み合わされた手に力が入った。ギシリと寝台が鳴る。

 ヤツの紅い瞳がひときわ大きく見開かれ、金の光を宿す。それは獣が敵を威嚇するときに見せるような輝きだ。

 

「……いい格好だな」

「セフィロス! 嫌だ、ほどいてくれ!」

「貴様が聞き分けがないからだ。仕方ないだろう」

 オレはそう言ってやった。

「……セフィロス!」

 赤金の瞳がオレをにらむ。

                                                 

「ほぅ、まだそんな目が出来るのか。そうだな、そうでなくてはつまらない」

「…………」

「時間はまだ十分にある。堪えられるだけ耐えてみせろ」

「…………」

 ヴィンセントは応えない。オレの姿を映し出していた双眸を固く綴じ合わせ、ぐっと歯を食いしばるような音を漏らした。

                              

 痛々しいほど、線の細い身体……だが、本人が口にするように、「醜い」とは思えない。どこまでも白い肌、ひやりと冷たい皮膚……

 だが、オレが触れた部分だけ、淡く色づき徐々に熱を帯びてゆく……そんな有様が面白くて、ずいぶんと薄い肌の感触を楽しんだ。

 コイツだってただの男だ。どこをどうすれば感じるのか、同じ男のオレにはよくわかっている。これだけ焦らされれば、クラウドあたりなら、泣き出してしまうところだろう。

 

 せわしない呼吸をくりかえす薄い胸を、なだめるように手の平で撫でてやる。そのまま脇腹に指をすべらせると、戒められた躯がビクリと反応した。

 

「……クラウドは……どんなふうにおまえを抱く?」

 耳朶を噛み、滴るように吐息を送り込む。

「あいつはずいぶんと貴様を大切にしているみたいだからな……」

「…………」

「さぞかし、やさしく触れてくれるのだろう?」

「…………」

 無言のまま、やり過ごすヴィンセント。その頑なな様が、嗜虐の炎を灯す。

 

 オレは一度、上体を起こした。最後の矜持とばかりに綴じ合わせている、骨張った両膝に手をかける。

 まったく細い脚だ。下手をしたら、オレの腕くらいの筋肉しかついていないのではなかろうか。

「……ッ……!」

 オレが腕に力を入れると、それは簡単に割れた。

 圧倒的な力で、膝を割られたことに恐怖したのか、ヤツの細い身体が一挙に緊張する。 両腕の自由を奪われた格好では、そこを隠すことも、オレを押しのけることもできない。

 オレはヤツに覆い被さると、片足を肩に掛けてやった。小刻みに震える下肢に手をすべらせ、もう一方の太股の裏を吸い上げる。すると、そこは驚くほど簡単に痕が残り、薄紫に鬱血した。

 

 徐々に唇をすべらせ、両の足を大きく割り広げる。

「……ンッ……」

 喉が引きつったような音を立てる。

 固く立ち上がったそれには触れてやらず、足の付け根……ささやかな柔肉がついたそこに啄むような接吻を繰り返す。

「……んっ……あッ……」

 ヴィンセントの呻きに艶が交じる。肉体の中で一番無防備でやわらかなそこは、ほんの少し歯を立てただけで、紅く充血してしまう。

「……はッ……あ……あッ……」

 さぞかし苦しいだろう。このまま放置されるのは。

 だが、そう簡単に許してやるつもりはない。もっともっとコイツの乱れる姿が見たい。身も世もなく、オレを求める言葉が聞きたい。

  

「まだだぞ、ヴィンセント」

「…………」

「そうすぐに、楽にはさせない」

「……セフィロス……ッ」

 荒い吐息に乗せられた切羽詰まった声。

 

「こっちを……」

 口唇をゆがめて笑いながら、指を後ろに滑らせる。大きく広げられた身体が、羞恥と恐怖に震える様をオレはひどく楽しく見つめていた。

「ここを広げておかないとな……オレの大切な人形が壊れてしまう」

 いっそやさしいと言える物言いで、紅く色づいた耳朶にささやく。

 

 自分でも触れることなどない、肉体の最奥をこのオレに探られるのは、どれほどの屈辱なのだろうか。そして恐怖を伴うのか。

 こいつの矜持はいつまで保たれるのだろうか……?

 

 

「……ッ……!」

 ぎりぎりと唇を噛み締めるヴィンセント。

 血の気のない口唇が、朱色に染まってゆく。              

「バカが噛み切る気か……?」

「……ッ……んんッ……!」

「声を聞かせろと言ったはずだが……?」

 奥を探る指を休ませずに、強く食いしばった唇を嬲る。荒い呼吸を繰り返すヴィンセントは、時折、引きつるように喉を鳴らす。その拍子にわずかに開かれた唇に、すかさず侵入を果たす。

 この男が、オレの舌を食いちぎるとは思えない。そんなことなど考えつきもしないようなヤツだ。

 ヴィンセントの薄く甘い舌。こいつはこんなところまで頼りなく出来ている。

 どこもかしこも惰弱な作りの上、「馬鹿」が付くほどのお人好し。よくもまぁ、一時的にでも、タークスなどという組織に居られたものだ。

 

 舌を抜き取り、上気した白い顔を、見下ろす。

 熱と涙で、紅色の瞳が潤んでいる。頬を伝わる涙は生理的なものだろう。

 顔を近づけ、オレは舌でそれを舐め取った。

 ヤツは命のない木偶のように微動だにしない。このまま続けたら、限界を通り越して失神しそうな有様だ。薄い胸がせわしなく上下する様は痛々しくも見える。

  

 オレは、身を滑らせ、もうほとんど臨界点に達しているであろう、熱の中心を口腔に含んだ。こんなことはクラウド以外にしてやったことはない。

 男の性感帯は、ほぼその部分に集約されていると言っても過言ではないだろう。

 緩慢な愛撫に、さんざん焦らされた肉体は、その急激な快感に耐えられるはずがない。

 

「……くッ……あッ……ぁぁああッ!」

 初めて聞くヴィンセントの悲鳴だった。オレの髪をわしづかみ、華奢な肢体を大きく反り返す。

「……やッ……あッあッあッ……セ、セフィ……ッ……」

 このまま吐き出させるのは簡単だ。だがそんなつもりは毛頭ない。まだ、ヤツの口から、オレを求める言葉を聞いていない。この身体を欲して啼く様を見ていない。

 押し広げた細い両脚がガクガクと震え、肉の薄い腹がせり上がってゆく。

 今にも欲情を吐き出そうというとき、オレは無慈悲にも高ぶりを、ずるりと口腔から引き出してやった。

 

「……ッ……」

 苦しそうにかぶりを振るヴィンセント。

「……セ、セフィ……ロス……ッ?」

 掠れた声でオレの名を綴る。

「……どうした? ずいぶんと物欲しそうな顔をしているな」

 意地悪くそう言ってやる。

「…………」

「最後までして欲しいのなら、おまえの口でそう言うんだな」

 解放を待つばかりのそれを、手の平で握り込む。そんな微かな刺激さえもつらいのだろう。眉間に深い皺が刻まれた。

 

 緊張の解けない身体をあやすように、ふたたびそれを弄ぶ。今度は最奥への刺激も同時に加えてやる。後で少しでも苦痛の少ないように。

 一度精を吐き出せば、肉体は弛緩するはずだが、なんせ、この男の細さは並ではない。 幼かったクラウドに、はじめてそれを教えたときのことを思い出す。もちろん、身体のつくりはあの子とは異なるだろうが、指先に感じる狭さは、経験のない人間のようにさえ感じる。

 

「あッ……あああッ……!」

 切羽詰まった声がほとばしる。

 頃合いを見て、両の手を戒めていた紐をはずしてやる。だが、そのことは、もはやほとんど意味を為さないようであった。