うらしまリターンズ
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<8>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

 思った通り……というか、いともたやすくあっさりと、ガキどもはレオンに懐いた。

 だが、意外に思う必要は無かろう。

 レオンは、あの『クラウド』の面倒を見ているヤツなのだ。ガキの相手はお手の物と推察される。しかもあの男には、ヤズーのように、「適当にあしらう」のではなく、教え導くという、そういった雰囲気があるのだ。

 この家で言うならば、ヴィンセントなどもそのタイプであろうが、いかんせん、ヤツは線が細すぎる。一日中動き回っているガキどもの相手など、まず出来なかろうし、なにより外出を好まない。

 そんなわけで、帰宅してから食事の時間までの小一時間。

 その間に、あっさりと、カダージュとロッズはレオンにうち解けてしまった。今もレオンを真ん中にして座り込み、次から次へと質問責めにしているのだ。だが、ヤツは邪険にすることもなく、ひとつひとつに真剣に応えている。普段はうるさいガキどもまじめに頷いているのだ。

 そんな様子が微笑ましいのだろう。

 夕食の仕度をしているヴィンセントが、時たま居間に顔を出し、その様を眺めて満足げに目を細める。

 

 

 

 

「はーい、みんな、ゴハンだよ。レオンはこっち。兄さんの席、座って」

 ヤズーが声を掛けると、男どもがバラバラと食卓に集まった。クラウドの席に、長身のレオンが座るが、食卓が狭苦しくなったような印象はない。むしろ金髪チョコボ野郎のときよりも整然とした落ち着きを感じる。

 レオンは立ち居振る舞いが静謐なので、見ている側が煩わされることもない。これぞキャラクターの為せる技なのだろう。

「……たいしたものでなくて恐縮なのだが……君の口に合うと嬉しい」

 きちんとナプキンまで手渡し、ヴィンセントがそう言う。

 

『海の幸のハーブマリネ、天然鯛のポワレ、夏野菜のフリカッセ、ブロッコリーとコーンのポタージュ、フィレビーフのオニオンスライス添え、ライ麦ブレッドとバターロール』

 すべて手作りだ。

 絶句するレオン。表情はそれほど変わらないのだが、驚いているのがよくわかる。

 まったくヴィンセントツのセリフは、ネタなのではないかと思われるほどにすっとぼけているのだ。

 ゴホンと咳払いをひとつすると、レオンは厳かに口を開いた。

「……『クラウド』から聞いてはいたが……」

 そう前置きをする。

「これは本当にたいしたものだな、あなたの料理の腕前は。ほとんど……芸術だ」

「そ、そんな……あの……」

「自宅では家事のほとんどを俺が担っているのだが、あなたに比べるとまだまだのようだ」

「……き、君が……家事を? そ、それは……ご、ご苦労なことだな……」

 どう相づちを打っていいのかわからないのだろう。またもやヴィンセントがズレたセリフを口にする。

「いや……あなたの心遣いと気配りに比べたら足下にも及ばない。一応、栄養バランスなども考慮しているつもりではあったのだが……料理というのは見た目も重要なのだな」

「あ……ありがとう……」

「『クラウド』は偏食気味なんだ。なるべく隔たりなく食わせたい。あなたの料理を参考にしようと思う。彩りがいいし、盛りつけも美しいから食欲が増進される」

「え……ええと……あ、ありがとう……」

 愚昧にも同じ言葉を繰り返すヴィンセント。

「ただメシ喰らいというわけにはいかない。今後、家事を手伝わせていただきたい。あなたの側に居ると学ぶことが多そうだ」

「え……そんな……き、君は客人なのだから……」

 誉められたことで気が動転しているのだろう。それに今現在まで次々と賞賛されまくっているのだ。人慣れしないオドオド男としては、正気でいるのも限界のように見えた。一挙に赤面し、しどろもどろで応対している。

 

「遠慮は無用。なんでも言いつけてくれ」

 きっぱりとそう告げると、話は終わりとばかりに、食事に没頭するレオン。このあたりの切り替えの早さは、オレなどにとってはいっそ小気味いいほどだ。余韻を引きずってオロオロしているヴィンセントが可愛らしい。

「あ、あの……そんな……私は……」

「そぉ? じゃあ、明日、買い物に付き合って、レオン! 服、見たいんだよねェ」

「ねぇねぇ、泳ぎに行きたい! レオンも一緒に行こうよ!」

「行こう行こう!」

 ……どれが誰のセリフかわかるだろう。遠慮のない銀髪三兄弟であった。多少流れを読めというところだ。もっともイロケムシはわざと茶々入れをしているのだろうが。

 

「この家でそんなセリフを吐くなんざ、自爆行為だな、レオン」

 心づくしの料理を食らいつつ、ツケツケとそう言ってやった。

「い、いや、とりあえず、ヴィンセントさんが優先だ。一飯の恩どころか数日は世話になってしまうかもしれないし。家の手伝いをしたい」

「……あ、ありがとう」

 辿々しくヴィンセントはそうつぶやいた。

「あー、ヴィンセント、真っ赤〜ッ!」

「真っ赤、真っ赤!!」

「兄さん居なくてよかったァ。またうるさいことになっていそうだからねェ」

「そ、そんな、私は……別に……」

「よろしく頼む」

 何故に茶化されているのかなど、毛頭気にならないのか、めでたいレオンは、ヴィンセント相手にキッパリとそう告げるのであった。

 その様を妙に嬉しそうに眺めているイロケムシ。こいつも相当レオンという男が気に入っているらしい。

 

 食事のあとも、テキパキと後かたづけを手伝うレオン。一見無骨に見えるのだが、ヤツはひどく手慣れた様子で家事を遂行していた。

 ヴィンセントと一緒に皿洗いをこなし、ついでにシンクまでクレンザーがけをする。きれい好きのヴィンセントのことなので、普段から余念なく清掃が行き届いているのだろう。あっという間に仕事が終わり、レオンのヤツはいささか不本意そうな顔をした。