うらしま外伝
 
〜招かれざる珍客〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<14>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

ピッピッピッ……

 

「ふむぅ〜」

「アハッ、またトライしてんだ、ラグナさん」

 昼の時と同じように携帯をいじくっていたラグナに、ヤズーが苦笑した。

「うん、まぁね〜。ほとんど諦めてるけどさ〜。充電切れそうだし」

「あーあ、ラグナさんのおかげでカダに携帯おねだりされそうだよ」

「ハッハッハッ、ごめんごめん。でもあれくらいの年頃って、新しいものがあるとすぐ飛びつきたくなっちゃうんだよね〜」

「俺、今でも新し物好きだけど?」

 と、クラウド。こいつも新しい携帯が欲しそうだ。

「だからおまえはガキだってんだ」

「セフィに言われたくない!」

「ほらほら、ふたりともよしてったら。お酒こぼれるでしょう」

 ヴィンセントが困惑した面持ちをする前に、ヤズーが口論を止める。いつもどおりの風景だ。

 俺たちのやり取りを楽しそうに見遣りながら、ラグナは手酌で酒を楽しんでいた。

 一応、大統領という立場にあるのだ。こんなふうに気楽な酒盛りの機会にはあまり恵まれないのかもしれない。

 ……コイツがこんな疫病神のお調子者じゃなければ、もう少し付き合いようはあると思うのだが。
 
 そのときである。

 

 ピルルルル、ピルルルル、ピルルルル

 

「あ……」

「え……」

「おい……」

 誰がどの言葉をつぶやいたのかは覚えていない。

 ラグナの携帯が音を立てている。先ほどようやく諦めて、卓の上に放りだしたままだったのだが……

 皆一様に息を飲んでそいつを見つめる。

 まるで、その小さなシロモノが爆弾だとでもいうように。

「だ、誰からなの……ね、まさか」

「ラグナさん、早く……!」

 ヤズーが鋭く持ち主を促した。

「オープンにしろ」

 と、オレ。

 皆一様に酔っぱらい気味だったが、このときばかりは酒臭い息を詰めていた。ラグナがおっかなびっくりそいつを手に取る。

 情けないことにその指が微かに震えているのに気付いた。

「あ、あの……ラ、ラグナ・レウァール……です」

 阿呆のような敬語で電話に出るラグナ。

 

『私だ……何用だ』

 ひどく聞き取りにくい小さな声が受話器の向こう側から漏れてきた。

 

 

 

 

 

 

「セフィ!? セフィロスなのっ!?」

 怒鳴りつけるほどの剣幕で、電話に取りすがるラグナ。彼から一番遠い場所に居たクラウドもあわてて電話の側に駆け寄る。

「セフィッ! セフィっ!?」

『……他に誰が居るというのだ。これはおまえのよこした電話だろう』

 携帯電話を指して言っているのだろう。あちらの世界のセフィロスに、ラグナはお揃いの携帯電話をプレゼントしたと言っていた。

「うわ〜ん、セフィ〜っっ!」

『……切るぞ』

「バカヤロウ!何してやがる、ラグナっ!」

 鼻水を垂らして泣きつく40オヤジを怒鳴りつける。まずは訊くべきことがあるだろうに!!

「あ、そ、そうだった! あ、あのさ、セフィ。俺、今、困ってんの〜助けてェ〜」

 こいつ本当に大統領か?ガキの相談電話じゃねーんだぞ!? 案の定、あちらの世界の『セフィロス』の声は、さらにどんよりと低くなった。

『……私は迷惑電話に困惑しているところだ』

「うそ、マジで!?もしかしてレオンのヤツ!? 俺、言っておいてやるから!」

 オメーのコトだろうが! この阿呆が!

『……もういい。 用件があるなら手短に言え』

「あ、う、うん!あのね、今、俺、コスタ・デル・ソルに居るの!なんかわかんないんだけど、知らない間にこっちに飛ばされちゃったみたいで」

『…………』

「こっちの世界のクラウドくんたちにお世話になってるんだけど……いつまでもそうしてはいられないし……」

 

 ピーピーピー

 

「まずいよ、充電切れじゃん」

 小さな赤ランプが点滅し始めた携帯電話を見やり、クラウドが小声でつぶやいた。

「あー、じ、時間がないんだって!」

『大声を出すな……騒々しい』

「あ、ご、ごめん! そんでね、帰り方、わかんないの! ねぇ、どうすればいいの? セフィは空間のよじれが何とかって言ってたじゃん!? 俺、それ見えないし、クラウドくんたちもわからないって……」

『…………』

「ねぇ、セフィ、聞いてる!?俺、どうすれば戻れるの!?」

『……やっかいだな、貴様は』

「電話、切れちゃうよ〜。充電が切れちゃう、セフィ!お願い、教えて!」

『……見えぬのなら致し方なかろう』

 あくまでも煩わしい人事だというのか、『セフィロス』はひどく鬱陶しげに低くつぶやいた。

「いや、だって、そんなん言ってらんないもん!帰んなきゃ!お願い、セフィ!」

『……そこに、クラウドは居るか?』

 ぼそぼそと聞き取りにくい声で、『セフィロス』が訊ねた。

「ほら、兄さん、お名指し!」

 ヤズーがクラウドを前へ押し出す。ヴィンセントははらはらと胸に手を当てて、状況を見ているが、本当は話したくてたまらないのだろう。

 クラウドをうらやましそうに眺めるのだった。