うらしまクラウド
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<19>
〜帰還〜
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 
 

 

 

 ……なつかしい香りがする……

 それにすごくあったかい。

 変な例えかもしれないけど、湯たんぽをお腹に入れたまま、羽布団に包まれているような……

 まさか、なに言ってんだろ、俺。

 

 昨日の夜は……ああ、そうそう。

 もしかしたらあのまま寝ちゃったのかも。

 レオンの部屋を借りたんだけど、となりが気になって仕方なかったんだよね……なんか雰囲気、変だったし。

 

 ……ホントだってば。

 別にのぞきとかするつもりなかったし。壁に穴、空いてないし。俺、そんなやらしいヤツじゃないから。

 ん?あ、ああ、このコップは……水飲むためだから、コレ。

 

 ……え、空だって?

 ……まぁ、アレだ。

 だって、仕方ないじゃん。もとの場所に帰る方法、こっちの『セフィロス』が知ってるみたいなんだもん。レオンのせいで聞き出せなかったし。

 レオン、いいヤツだけど、不器用だからさ。

 言葉足らなくて、『セフィロス』のこと怒らせたら、元の木阿弥だっつーの。おまけにいきなり「脱げ」とか言い出す挙動不審のヘンタイぶり……

 『セフィロス』と一緒の部屋に籠もって、きちんと説得できたんだろうか。とにかく俺はヴィンセントのところに帰らなきゃならないんだから。あのおとなしくてやさしいヴィンセントには、俺が側についてなきゃ! ホント、マジでたのむよ、レオン。

 

 ……それに、こっちの『セフィロス』って、俺の知ってるセフィとは大分違うんだもん。なんかこう、ちょっとズレてるようなカンジもするし。

 別にエロい展開を期待して、聞き耳立ててたわけじゃないからね、コレ。

 

 ……ああ、眠い……あったかい……

 ……ホント、ここ、気持ちいい……

 ああ、なんの香りだったっけ……覚えのある匂いなんだけどな……

 

 

 

 

「ぎぃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜ッ!!」

 俺は空気を切り裂くごとき、するどい悲鳴に驚いた。

 いや、むしろ自分の口から、そんな大声が出るのかというほうに驚愕するような気分だった。

 そう、間違いなく、雑巾を引き破るようなものすごい悲鳴は、俺の口から迸ったものであった。

 

 次の瞬間……覚えのある、なつかしい香り……

 覚えのある。ああ、そんなの当たり前じゃないか。この香りはあの人の好きなトワレ。

 だって、何度も……その、一緒に寝たし。覚えちゃうに決まってるじゃん。

 あ、昔の話だけどね。遙か太古の。ほんの若気の至りの、ほろ苦い青春の1ページ……

 

 ……じゃ、すまねぇよォォォォ!

 っつーか、なんで今、この俺がその香りに包まれてるのォォォッ!?

 

 俺はセフィロスの胸の中で必死にもがいていた。恐ろしいことに、この人ってば、ものすごい悲鳴を聞いていてなお、未だ夢見うつつに惚けている。

 ホロウバスティオンのセフィロスも、俺の知ってる『セフィロス』と同じ匂いがすんのかよ。そりゃ確かに、整った容姿から長い髪までそっくりだとは思うけど……

 

 っつーか、なんで、俺、こんなことになってるの?

 昨夜、セフィロスと一緒の部屋に入ったのは、俺じゃなくてレオンだろーが!まさか今度は、俺とレオンの居場所がチェンジしたんじゃないだろうな!俺は間違いなくレオンの部屋の壁際に張り付いていたはず……なのに、どうして俺がセフィロスのふところに……

 

 ……まぁ、レオンと俺が入れ替わっても、同じ家の中だから実害は…………

 って、思いっきり実害あるわァァァァ!

 

 何、考えてんだよ、レオン! やっぱ、あのふたりやっちゃったの?コレ?

 俺とレオン入れ替わってこの状況ってことは……やっぱホントに……確かに戻る方法を聞き出せとは言ったけど、なにもここまですること……ああ、レオン、アンタって野郎は……!

 ……でも、ヤっちゃったのはレオンだよね?俺じゃないよね? ただ場所がチェンジしただけで、ヴィンセント裏切ってないよね?

 

 それにしても、なんだって、俺、素っ裸に……おまけにすっごいしっかり抱きしめられてるし……

 居場所が入れ替わったってことは……え、ウソ……じゃあ、レオンが受け身側?マジで? いや、落ち着け、自分。だいたい、あのセフィが受け身にまわるわけないだろうが。体格的にもセフィロスのほうが有利だろう。

 ……ああ、でも、このセフィロスって、俺の付き合ってたセフィと違って、ちょっと……こう夢見る青年貴族っつーか。ポカリ知らないし、クレープも食べたことないし……

 

 いやいやいやいやいやいや!

 なに言ってんの、俺、それどころじゃねーだろ。

 早くここから出なくちゃ。とりあえず、となりの……レオンの部屋へ……!

 押し包むようにからみつく、力強い腕を外し、必死にベッドから這い出る。

 

 天蓋付きのベッドから、もがきつつ必死に身をよじり出すと、その拍子にバランスを崩した。

 俺の身体は斜めに傾ぎ、そのまま床に落っこちる。

 ズダーン!というとんでもない音のワリには、痛くなかった。足の長い絨毯が敷いてあったのがよかったらしい。