うらしまクラウド
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<18>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 
 

 

 

「……セフィロス……?」

 海の蒼がオレを見つめる。

「いいだろう……あいつの伝えられなかったことを……オレが教えてやろう」

 汗ばんだ額に張り付いた金髪を撫でつけ、そこにひとつキスを落とした。

 

「……なに……なんのこと……セフィロス?」

「……罪滅ぼしみたいなものだな」

「…………?」

「いや……なんでもない。おしゃべりは……もういいだろう?」

 不思議そうにオレを見る『クラウド』。

 彼の両の手を片手で押さえたまま、怯えさせないよう、なめらかな頬に軽く口づけた。

 熱を宿したまま、放っておかれたソレを軽く嬲ると、面白いようにしなやかな肉体が反り返った。

 

「……あッ……あ……んんッ……セ、セフィ……ッ」

 途端に切羽詰まった声が、可愛らしい口元からこぼれ落ちる。

 クラウドの面差しが、年よりもいささか幼く見えるというのは、何度も口にしたことがあると思う。おそらくそれは、淡い桜色をした肌の色味と、大きなブルーアイズ、そしてひよこの羽のような金髪のせいだろう。

「あッ……あッ……」

 ビクビクと震える身体に合わせて、ツンととがったチョコボの尾が揺れた。この子のクセ毛は本当に可愛らしい。

 

「……あッ……も、ダメだよ……放して……ったら!」

 嫌々というように身をよじり、なんとかオレの戒めを外そうと試みる。

 

 語弊を恐れずに言うのならば、普段の……闘いに望む男としての横顔は、十分に戦士としての趣があり、意志的な光を宿した双眸がまばゆいばかりだ。

 そんな彼がオレの施す愛撫に陶酔し、身も世もなく快楽に身を震わせる姿は、心地よい興奮をもたらし、征服欲のようなものを満足させてくれるのだった。

 

「やッ……んぁッ……セ、セフィ……ッ!」

 白い喉がぐぐぐと仰け反る。苦しげにシーツを蹴るしなやかな脚……

 ……ああ、やはり『クラウド』は本当に愛らしい……かつてオレの傍らにいたあのクラウドも……そしてこの子も……

「あッ……あッあッ……も、もぅ……」

「堪えることはないだろう……ここにはオレしかいない」

 必死に歯を食いしばる耳元に、低くささやきかける。

 

「あッ……あああッ!!」

 限界を告げる叫びが、割れた口腔から迸った。

 両手を上でひとつにまとめられたまま、薄い肉のついた腹がせり上がり、背が弓のように反ってゆく。

「んッ……あ……ぁあああッ!!」

 ゆるりと押し包んだオレの手の中に、『クラウド』は思いのまま吐き出した。

 ゼィゼィと荒い息が漏れ、それに合わせてなだらかな胸が上下する。そっと宥めるように撫でてやると、ようやく目を開けてオレの顔を恐る恐る見つめた。

 

「セ、セフィ…ロスはイジワルだ……ヤダっつったのに……」

「よかったんだろう?」

 そう言ってやると、グッと不満げに口を曲げる。そんな様も可愛らしい。

 

「フフ、おまえは可愛いな、『クラウド』……」

 顎に指を添え、顔をこちらに向きに固定する。

 すると、彼は恥ずかしそうに目線を逸らせ、低くつぶやく。

「……ヤダって言ったのに……」

「そうは見えなかったがな……」

「…………」

「……フフ、ふて腐れるな『クラウド』」

 

「な、なんでオレのこと見んの……」

 掠れて消えそうな声音で彼は言った。

「あたりまえのことだろうが」

 そう応える。

「…………」

「……どうした、『クラウド』……?」

「……なんで……こんなにやさしく……するの……」

 たどたどしく、彼は綴った。

「言っただろう……アイツの代わりだ……」

「……え……」

「あの野郎のしてやりたかったことを……代わりにしているだけだ」

「……あいつって? か、代わりって……セフィロス?」

 必死に問いかける答えをはぐらかし、オレは朱に染まった耳朶を噛んだ。

 

「聞きたがりの可愛い『クラウド』。……もっと心地よくしてやる」

「……あ……セフィ…ロス……ッ?」

 そうささやきかけると、オレは了承を取るかわりに、戸惑いの見える唇に接吻した。

「あ……セフィ……オレも……する、から……」

 自分ばかり愛撫を施されるのが理解できないのか、『クラウド』はそんなことを言い出す。

 ……それもいいが、今日は『アイツの罪滅ぼしだ』。

 

「……いいから大人しくしていろ」

「……んッ……」

「力を抜け……そう、いい子だ」

 彼の吐き出した残滓を指先に絡み取り、そっと奥を探る。

「……あッ……セフィ……」

「大丈夫だ……怖がるな」

 そう言い聞かせる。

 この身体には『セフィロス』に対する恐怖が植え付けられているのだろう。いくら別人とはいえ、姿形はオレと変わらぬはずだ。

「オレが怖いか……?」

「……う、ううん……」

 顔を横に振った後、おずおずとしなやかな腕がオレの背に回される。

 震える内股を撫で、快楽の余韻に波打つ胸元を……そして、脇腹、腰へと、唇を滑らせた。

 つい先ほど吐き出したにも関わらず、若い肉体はすぐに回復したらしい。

 焦れたようにシーツを蹴る足先がひどく艶めかしく映った。

 

「……ん……あッ……セフィ…ロス……」

「まだだ。堪え性のない子だな」

「だって……オレ……」

「もう少し我慢しろ。……できるだけ痛みを与えたくない」

 繋がる部分をゆるゆると指先で解きほぐす。

 二本に増やされたオレの指が、ゆっくりと注挿を繰り返すたび、切なげな喘ぎが半開きの唇から漏れるのだった。

 

「……あッ……あッ……セフィ……も……出ちゃうよ」

 背中に微かな痛みが走った。

 必死にしがみつく『クラウド』が、爪を立てたのだろう。

「……力を抜け、『クラウド』」

 両の脚を抱え上げ、耳元でささやきかけた。

 コクコクという頷きに合わせて、彼の金の髪が揺れる。

 

 正直、オレのほうに、それほど余裕があったわけではなかった。

 『クラウド』の媚態を眺めている間にも、おのれの中に宿った熱が発露を求めて疼いている。

 だが、今のオレの役割は『アイツの代わり』だ。

 愚かなもうひとりの『セフィロス』……可哀想な『セフィロス』……

 

「……あッ……あッ……あッ……」

 動きに合わせ、断続的な喘ぎが口唇を割って漏れてくる。

思いのまま屠ってしまいそうになる身体を制御し、『クラウド』の反応をしっかりと目に刻んでゆく。

「あッ……あッ……」

「痛いか……?」

 彼は首を振った。

 もちろん、痛みもあるのだろう。

 だが、一度道筋をつけてさえしまえば、この子の身体は自ら快楽を追えるようになっている。

「あ……ッ……ああッ……もっと……セフィロス……!」

 背に縋り付く指先に力が込められオレを求めて下肢がうごめく。

 繋がった部分から、目のくらむような疼きが伝わり、オレは密やかに呼吸を整えた。

 

「いいか……? 『クラウド』……」

「い、いい……セフィ……好き……気持ち……いい……」

 熱に浮かされた瞳から、ボロボロと涙がこぼれ落ちる。

「ああッ……もっと……セフィ……好き……大好き……ッ!」

「そうだ……アイツもおまえのことを……同じように愛したかったはずだ……」

 ほとんど意識を飛ばしかけた、彼の耳元にささやきかける。

「あッ……あッ……あッ……」

「可愛い『クラウド』……アイツとおまえは同胞なんだ……」

 

「ああッ……セ……セフィロス……!」

 しなやかな身体が、限界を告げた。

 『クラウド』は、喉奥から迸る叫びと同時に、堪え続けてきた欲望を吐き出した。

 ほぼ時を同じくして、オレ自身も頂点に達した。

 

 ずるりと『クラウド』の腕がオレの背中から滑り落ちる。

 呼吸も整わぬうちに、汗ばんだ額に口づけてやると彼はようやく薄目を開け、小さな声でオレの名を……いや、『アイツ』の名かもしれないが、「セフィロス」とつぶやいた。

 

 『クラウド』の言葉はそれだけだった。

 ……オレか……アイツの名を呼んだだけ……

 そのまま力尽き、気絶するように眠り込んでしまった。その寝顔が安らかであったのを確認し、力の抜けた身体を抱き寄せる。

 髪を撫で、汗ばんだ首の後ろに腕を差し込んだ。

 

「……眠れ、『クラウド』……安心して……寝ろ……」

 

 外は暗いままだったが、すでに嵐は過ぎ去っていた。薄雲の間から月明かりが淡く差し込んでいる。

 

 暗闇に浮き上がるデジタルの数字は、午前2:50……

 

 オレは哀れな二つの魂の平安を祈りつつ、そのまま眠りについたのであった……