うらしまクラウド
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<14>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 
 

 

 クラウドがこの家にやってきてから、すでに一週間程度が経過していた。

 

 ガキふたりとも仲良くなり、夜遅くまでテレビゲームに興じていたり、一緒に配達の仕事を手伝ってみたり、またヴィンセントのとなりで、たどたどしく食事のしたくに協力したりすることもあった。

 

 子猫のヴィンも、『クラウド』が気に入ったらしく、彼が抱きあげても、大人しくしていたし、遊んでいるうちに、一緒に寝込んでしまうこともあった。

 もちろん、母親代わりのヴィンセントが、ひとりと一匹を起こさないように、そっと毛布を掛けてやるのが常であったが。

 

 初日から比べて、一番態度が変わったのは、もちろんオレに対してであろう。

 泣き叫んで斬りかかってきたあの時とは、まるで様相が異なっていた。

 もちろん、誤解がとけたのだから、変化するのは当然とは言えようが。

 

 オレは、ヴィンセントやヤズーと違って、こちらから積極的に構うようなことをする人間ではない。正直、愛想がいいとも言えないだろう。

 だが、『クラウド』は、遠慮しつつも、なんとなく近くにまとわりついてきた。

 オレが自室ではなく、居間のソファで寝ころんでいる間などは、ずっと子猫と一緒にすぐ下の絨毯で遊んでいるし、夜も「もう寝ろ」と言うまで、眠そうな目を擦りながら、側にくっついていた。

 ヴィンセントの思惑に従ったつもりではなかったが、結果的にこの子が家に居るようになってから、深夜の外出や外泊はなんとなく控える形になってしまっていた。

 

 

 

 

 ビョォォォォ! カッ……ガガガガン……!

 

 稲妻が閃光を放ち、海に落ちる。

 昼を過ぎたあたりから、風が強くなり、陽が沈む時刻には、この土地特有の局地的な雨嵐になった。

 

 不幸中の幸いともいえるのが、無事、荷物配達のガキどもが帰ってきてから、本格的な強風が吹き荒れたことであった。

 

 ザァァァーッ! ビョオォォォ! 

 

 カーテンを締め切ったガラス戸に、吹き飛ばされた小枝や木の葉などがパシパシと音を立てて張り付いてしまう。もっとも横殴りの雨にさらされ、すぐに流されてしまうのだが。

 

「……風……強くなってきたね……」

 心細げに『クラウド』がつぶやいた。

「そうだな……この土地は嵐が多いのが心配なところなのだ。温暖で良い場所だとは思うのだが……」

 思案顔のヴィンセント。

 いつぞやの大嵐を思い出しているのかもしれない。

「ま、今回は心配ないでしょ。このまえ改築したばかりなんだから」

 ヤズーが軽い口調でそう応えた。

「…………」

 それでも不安げな『クラウド』。

 確かに夕方からひどくなった雨足はとどまることを知らぬような勢いだ。風も真横から殴りつけるような突風が吹いている。

  

 カッ……!

 と稲光がすぐ近くで炸裂した。

「…………ッ!」

 真っ青な顔で息を詰める『クラウド』。

「『兄さん』、大丈夫?」

 と、イロケムシ。

「あ、う、うん……ここ……空と近いみたい……」

 彼は不思議な物言いをした。

「『クラウド』、もう休んだらどうだ? 風呂あがりで時間が経つと、身体が冷えてしまう」

「う、うん……」

「そうだね、ま、横になったら眠れるでしょ。カダたちなんてとっくに眠り込んでいるもんね」

 空になった人数分のティーカップをキッチンにさげ、イロケムシは「おやすみ」と手を振ると、さっさと自室へ引き取っていった。

 

 TVはどこも台風情報ばかり流している。

 

「では、オレももう寝る」

 新聞をテーブルに放りだし、立ちがった。

「おやすみ……セフィロス……」

 と、ヴィンセント。

「お、おやすみ……なさい」

 『クラウド』も同じようにつぶやいた。

 

「どうした……雷が怖いのか?」

 ビクビクと萎縮した態度をからかうように、オレは声をかけた。

「そ、そうじゃないけど……」

「まぁ、この分なら明日は快晴だろう」

「……う、うん……」

「風邪を引く前にさっさと寝ろ」

「……うん」

 そう言ってやると、ようやく『クラウド』は重たい腰を上げた。

 

「おやすみ……セフィロス、『クラウド』……」

 ヴィンセントが先に引き上げる。

 ヴィンがニャーニャーと泣きながら、ヤツの後ろをくっついていくのを、『クラウド』はなんとなく羨ましげに見遣っていた……