Snow White
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<17>
 
 ヤズー
 

 

 

 一度目の合図が聞こえてから、ほんの数刻後、にわかに城内が騒がしくなった。

 重厚な絨毯の敷かれた、奧の間まで入り込めたのだが、どうやら『当たり』は向かい側……左の塔のほうらしい。

 あそこには兄さんがいるはずだ。

 この騒ぎを良いほうに解釈するのなら、兄さんが白雪姫を無事ゲットして、逃げ出すために騒ぎを起こしたか……すでに中央塔へ向かったセフィロスと合流し、彼が撹乱行動に出ているだ。

 さもあらば、俺もすぐさま引き返して、兄さんらと合流したいところなのだが、まだ事態は読めない。

 場合によっては、ただ単に、兄さんが警備兵に見つかっただけとも解釈できるのだから。

 それだけであるのなら、白雪姫の探索を中止するわけにはいかない。この機を逃してはさらに厳重な警備体制が敷かれてしまうであろうから。

「兄さん、大丈夫かな……」

 なんせ相手はヴィンセントそっくりさんなのだ。本物をジェネシス王子に預けての作戦に、気乗りのしない態度を取っていたが、いざ目の前に、恋人そっくりの人物が現れたら、やはり必死に守ろうとするだろう。そもそも兄さんはとても素直で人の良い人物なのだから。

 俺的には、セフィロスあたりが見つけてくれるのが理想と思っていたのだが、なかなかシナリオ通りにはいかないものである。

 慎重に周囲に気を配り、俺はふたたび歩みを進めた。

 とにかく最奧と思われる、この周囲の部屋だけでも当たってみよう。そしてやはり見つけることができなければ、とって返すことにする。

 兄さんたちが上手いことやっていたとしても、俺が見つけられては脱出が難しくなる。

 今さらながら、カダたちを城門周辺に置いてきたのは正解だったと頷き、息を殺しながら壁伝いに移動した。

 

 

 

 

 

 

「おい、イロケムシ!」

 押し殺した声とともに、ぐんと腕を引っ張られた。

「セ、セフィロス? どうしてここに? 中央塔じゃなかったの?」

「……ジェネシス王子の図面が古過ぎたんだろうな。今、この城は中央塔と右塔が繋がっていて、奧の一区画が皇族の居住空間になっているようだ」

「じゃあ……」

「ああ、ぐるりと一週して、気がついたらここへ出ていた」

 チッと舌打ちしてセフィロスがつぶやいた。

「ねぇ、セフィロス。なんとなく騒がしくなってきたと思わない?」

「ああ。クラウドのガキだろうな」

「見つかったのかな」

「それはわからんが…… まぁ、あいつも元軍人だ。ある程度対処はできるだろ」

 そう言ったセフィロスに、俺はさらに声を潜めて言い返した。

「でもさ、もし白雪ちゃんと一緒だったら、動きにくいだろうね。仮に闘いになったとしても、人ひとり守って立ち回るのはかなり大変だと思うよ」

「ああ、しかもヴィンセント似のトロい女らしいからな」

 ズケズケと失礼な物言いをするセフィロスに、俺は苦笑した。

「セフィロス、俺たちも移動しよう。やっぱり兄さんに何かあったんだと思うよ」

「……そうだな。それにこの城の有様……怯えて泣いているかもしれん」

「は? なにが? 泣いてるって、さすがにありえないでしょ」

「……この城、奧に行けば行くほど、気味の悪い石像だの、彫刻が置いてあったろ」

 ため息混じりにセフィロスが言った。

「クラウドはこういったものが苦手なんだ。おまけに蝋燭の炎だけが頼りとなると……ほとんどホラーの世界だからな」

「そういえば、兄さん、怖い番組は見ないよね。テレビっ子のくせに」

「夜、眠れなくなるんだとよ」

 敵陣にしては、わりと気楽な会話を交わしつつ、俺たちは棟の中腹部に向かって歩き出した。

 クラウド兄さんも、おそらくその方面に向かっているはずだから。