〜 あの懐かしき日々 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<31>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 ……あ、どーもス。

 俺、クラウド。

 クラウド・ストライフ……って、何今さら自己紹介してんの、俺ェェェェ!!

 あー、えーと、ちなみは、俺はちゃんとした23才現在のクラウド・ストライフである。

 ……その、まぁ、みんなに色々心配掛けちゃったみたいではあるんだけど……全然自覚がなくって。

 ヴィンセントやセフィロスが医者に連れてってくれたときも、「何勘違いしてんの?」くらいのイキオイだったわけなのですが……あ、あの日はヴィンセントとホテルに泊まれたから、それはそれでラッキー☆だったんだけどさ。

 

 ……あ〜、まぁ、いいやね。

 とりあえず、今は落ち着いているし、昔の俺のお化けはもう出ていないみたいだから。

 

 結局、自分の置かれた状況と、周囲の連中が心配するような行動が、何に起因していたのかを理解したのは、それからほんのちょっと後のことだった。

 ……アレ……そう……病気っつーか、無意識の行動について、自己認識に至るまでは……まぁ、ちょっと紆余曲折みたいなもんがあった。

 俺という人間の尊厳に関わる、アレやコレやなど口に出すのも憚られるのだが……なによりヴィンセントは全然気にしていないと言ってくれるし、セフィもフツーにしているから…… 俺もあのときのことは忘れようと思う。やっぱフツーじゃない状況だったということで。

 ……え? 何があったかって?

 「俺という人間の尊厳に関わる」なんて大上段に構えた物言いをすると、気になっちゃうよね。いや、みんなには忘れて欲しいわけなんだけど……でも、ここまで口に黙っているのもフェアじゃないかな〜……

 まぁ、せっかく手元に昔の日記があるんだ。

 終わりのほうのページは白紙のままだから、それ以降の出来事を、ぽつりぽつりと綴っていこうと思う。

 そして書き終えたら、この日記帳は封印し、たぶんもう読み返すことはないと……そういうことにしておこう。

 

 

 

 

 ……今日でもう三日目……

 任務でやってきたニブルヘルム。

 山頂の魔晄炉の調査が終わっても、セフィロスは軍を引き上げようとしなかった。

 ずっと神羅屋敷に籠もったまま、出てこない。

 ……いや、正確には『地下の書庫』に籠もってだ。ザックスと何度か一緒に食事を差し入れに行ったんだけど、ほとんど会話をするでもなく、すぐに資料に没頭してしまうセフィロスであった。

 おれを見ても、微笑みかけてもくれない。

 ひどく消耗し疲労した様子で、夜もそのまま書庫で過ごしているようだった。

 

「……セフィ、どうしちゃったんだろう? なんだか様子がおかしくない? 魔晄炉から戻ってきてから変だよ……」

 おれは神羅兵の宿泊施設として借り上げている、宿の部屋でザックスに訴えた。きっとザックスも同じように考えていたのだろう。

 だが、おれがあまりに深刻になっているせいか、彼はどうしても宥める側に回るしかなかったようだった。

「まぁ、落ち着けよ、クラウド。おまえが心配なのはわかるけどさ」

「心配だよッ! い、今までこんなことなかったもの! いつだって冷静で……」

「確かにな。だが、任務は大分早く片づいたし、しばらくセフィロスの好きにさせておいてもいいんじゃないか。実際、指揮を執るのは彼だし」

「そんなのはわかってるけど……でも、ゴハンまでみんなと一緒じゃなくて、書庫に籠もりっきりなんだよ? 持っていっても、手つかずで置きっぱなしにされてることもあるし。声、掛けても返事してくれないし……」

「クラウド……」

「い、今までこんなことなかったから……心配だよ、ザックス。すごく忙しいときでも、ちゃんとおれの話、聞いてくれたのに……」

 セフィロスが心配なのと、嫌われたのだろうかという不安に押しつぶされ、べそべそと涙を拭った。

 ザックスを困らせてもしかたがないのに。今、おれに出来ることが何もないのが歯がゆくて。

「……クラウド、今日はもう寝ろ。おまえも気が立っているんだよ」

 心配しているのは同じなのに、ザックスはおれを気づかって部屋まで連れて行ってくれた。

 これ以上ふたりで話をしていても、何の進展もない。

 セフィロスは今夜も宿には戻ってこないようであった……

 手狭だが、清潔な部屋のバスルームで汗と涙を流し、ベッドに潜り込む。

 そっと手を組み合わせて、セフィロスの無事を祈る。

 

 今のおれにはそんなことしかできなかったから……