〜 あの懐かしき日々 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<25>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

 

 ヤマダーは『やり直し』と言っていた。

 つまり、クラウドは、オレと一緒に居た数年間の結末が、『ああであった』ことに納得していないのだ。

 恋人として過ごした期間が、ああいう形でエンドを迎えたことに不満がある。

 それは、まだオレに対して気持ちが残っていて、という意味ではない。現在のクラウドは、間違いなくヴィンセントのヤツを好いているのだろうから。

 

 ……オレは、ニブルヘルムの神羅屋敷で、この呪われた肉体の秘密を知った結果、クラウドの故郷をめちゃくちゃに破壊し、大切な人々をも奪った。

 言い訳するわけではないが、あのときは一種の恐慌状況に陥っていたのだと思う。今、考えれば情けないが、あの時点でのオレの精神は、知らしめられた真実に平静を保つことができなかったのだ。

 そしてニブル山の魔晄炉で、『人』としてのセフィロスの生は終焉を迎えたのだ。

 そう……怒りと悲しみで、半狂乱のクラウドの剣に貫かれてだ。

 あのとき、クラウドがオレを殺そうとしたのは当然だ。

 オレはあの子の恋人の『セフィロス』ではなくなっていたし、結果的にあれの母親も手に掛ける形になった。

 クラウドが幼なじみとして好意を抱いていた、ティファとかいう巨乳女が倒れ伏している姿も見たのだろう。

 

 ……それから数年が経ち、オレは今、こういった形の生を選び、人ならざる肉体を有してこの場所に居る。ニブルヘルムを焼き払ったときの、絶望や憎しみは、もはやこの胸の内にはない。

 クラウドからも……そう、仲間と共に、このオレと戦っていたときから、うっすらと読み取れる感情がある。

 それは、「セフィロスはああするしかなかったのではないか」という、オレに対するある種の同情心だ。

 クラウドと敵対していた時期、オレはあいつの大切なものを、次々に奪い取った。クラウドはその度に嘆き苦しみ、痛みをオレへの憎悪に変えて挑んでくる。

 

 だが、現在……こうして、側に居られるというのは、『今現在のクラウド』は、「オレを許している」のだと思う。言葉にすることはなかろうが、「セフィロスがしたことは無理もないこと」と納得しているのだ。

 でなければ、こんなふうに、疑似家族のような生活ができるはずはない。

 

 

 

 

 

 

 『やり直し』は、「昔のクラウド」がそうしたがっているのだ。

 穏やかな日常の中にある、今のクラウドの姿を借りて、理不尽に奪い取られた過去を清算しようとしているのだ。

 心の奥底に押し込めていた、昔のクラウドが、オレとの関係を納得いくものにしたい、そう願っているのだろう。

 

「……まぁ、そう考えると、オレにも責任がないとは言えんな」

 ぼそりとひとりごちた。ずっと己の思考に沈んでいたので、口に出していることに気付かなかったのだ。

「え? あ、あの……セフィロス?」

「なに、セフィ。また誰かに、責任取んなきゃなんないようなことしてきたの? やらっしー! サイテー!」

「こ、こら、クラウド……!!」

「なんだ、おまえら。まだ居たのか。さっさとあっちへ行け!」

 思考作業を中断させられると不愉快になる。

 しかも、その当人に!!

「行きますよーだ! ほら、行こ、ヴィンセント! セフィが邪魔だってさ!」

「あ、あの……でも……」

「いいからいいから!! なんだよ、相変わらず勝手なヤツ! べーだ!」

 クソガキはクソガキらしく、舌を出すと心許なげなヴィンセントを引っ張って出て行ってしまった。

 

  昔はちょこまかとまとわりついてきたくせに……

 チッ! ……ったくかわいげのない野郎に育ったもんだ!!