〜 あの懐かしき日々 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<11>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

「…………」

「……ウド ……クラウド……!」

「……ん……?」

「クラウド! クラウドッ?」

「え……あ……?」

 ぽっかりと瞳を見開くと、クリーム色の白木の天井が目に入った。

「あ、あれ……?」

「クラウド……? 大丈夫か……?」

 額を撫でてくれる冷たい手は……そう、ヴィンセントのものだ。

「あ……、ヴィ、ヴィンセント? どうしたの……?」

「どうしたのではない。大丈夫か……? ああ、ひどく寝汗をかいてしまって……どこか痛むところはあるか? 熱は……? ああ、いや、きちんと計った方がいいかな」

「え、あ、あの、何? 俺、別に……」

「気付かなかったのか? ひどく魘されて……ああ、ほらこんなに寝汗をかいている。何度起こしても、なかなか目を覚ましてくれないから……」

 ヴィンセントは本当に心配してくれたのだろう。シーツに放り出したままの、俺の片手をそっと取る。それを両手で握りしめると、不安げな面もちで俺の目を覗き込んだ。

「そうなんだ…… あ、ホントだ……涙……」

 睫毛に引っかかっていた水滴が、身体を起こしたはずみで、ボトボトとシーツを濡らした。

「クラウド……」

 ヴィンセントが濡れた頬と首筋を、そっとタオルで拭ってくれる。

「あ、ご、ごめん。ありがとう」

 いったいどうしたんだろう……?

 ヴィンセントに起こされるほどうなされていたなんて。それにこの涙……

 子どもの頃の夢を見ていたという記憶はあるのだが、それがどんな夢であったのかは思い出すことができなかった。

 少し前のセフィとHする夢はちゃんと覚えていたのに。

 

 

 

 

 

 

「クラウド? どうした…… 急に赤くなって? やはり熱が……」

「えッ、あ、ああ、違うの! ごめん、ヴィンセント、心配掛けて」

「私に気遣う必要はない。……だが、クラウド、もし何か心に溜め込んでいることがあるのなら、ちゃんと話をして欲しい。つらいことがあるなら、ひとりで苦しむのだけはやめてくれ……」

 白くて冷たい手の平が、額から頬に滑りそっと肩に触れた。やさしいヴィンセントの手……こんなに心配かけちゃって、俺のバカッ!

 寝言で泣き出すなんて、なんつーみっともない真似をしてるんだか!

「わかってるよ。でも、ホントに心当たりがないんだよ。夢見てるみたいなんだけど、朝になっちゃうと覚えていないし」

「……疲れているのではないのか? だから悪夢を……」

「ヤダなァ、おおげさだってば、ヴィンセント。本当になんでもないって」

 深刻に考え込んでしまう彼の気持ちを引き立てるために、わざと作った元気な声で応えていたとき、部屋のドアが、軽いノックとともに開いた。

「失礼、俺。ああ、兄さん、起きたの。どう、具合?」

「なんだよ、みんなして〜。なんともないって、なんか変な夢見てたみたいなんだよね。ただそれだけ」

「そう? まぁ、それならいいんだけどさ。ああ、勝手して申し訳ないんだけど、今日はカダージュとロッズに配達行ってもらったから」

「ええーッ? どうして? って……ああ、もうこんな時間か……」

 サイドデスクのアナログ時計の短針が、すでに10の文字を回っていた。さすがにこの時間に起きたんじゃ、午前中はほとんど回れなくなってしまう。

「すまない、クラウド。私がおまえを起こさぬよう頼んだのだ。ここのところ睡眠が浅いようだったから……」

「今日の分は荷物少なかったみたいだし、俺、ちゃんとチェックしたから。ふたりがかりならすぐに済むと思うよ」

 ヤズーがそう付け加えた。

「そっか……悪ィ」

「まぁ、たまにはいいじゃない。それより、兄さん、ゴハン食べれる? ここに運んであげようか?」

「だーかーら、病人扱いするなっつの。ホント、何ともないんだもん。フツーにダイニングで食べるよ。先にシャワー浴びてくる」

 タッと起きだし、浴室へ向かう。

 ヴィンセントは何か言いたそうに、こちらを見つめていたが、腹の虫には勝てなかった。まだ心配しているようならば、ゴハンを終えた後に話をすればいい。

 浴室で頭から熱い湯をかぶる。

 俺はすぐにのぼせるから、湯船じゃなくて、シャワーのほうがいいんだ。

 手早く身繕いを整え、居間に顔を出すと、そこにはごく日常的な……あたりまえの光景があった。

 ヴィンセントが食器を並べてくれていて、ヤズーがポットからお茶を注ぐ。ソファを占領してごろ寝しているセフィロス。その腹の上で遊んでいる子猫のヴィン。

「フン、サボりか、ネボスケ」

 テーブルについた俺に茶化すような物言いをするセフィロス。

 

 ……セフィロス……セフィロス……

 あれ……?

 なんだろ……なんだか懐かしいような変な気分だ。もしかしたら、昨夜の夢に、彼も登場したのかもしれない。

 神羅に居た子どもの頃の夢なら、セフィが出てきてもおかしくない。っつーか、出てくるほうがあたりまえなんだ。俺はずっとセフィロスの側に居たのだから。

「どうした、クソガキ、ボケッとして。腹でも冷やしたのか?」

「みゅんみゅん!」

「うっさい! なんともないもん。だいたいだらだら寝転んでるセフィに言われたくない!」

「クラウド……彼は心配してくれているのだぞ……」

 どこまでも人のいいヴィンセントは、基本的に善意解釈なのだ。そいつはセフィみたいなヤツには通用しないと言っているのに。

「ヴィンセント、おかわりッ!」

 ずいとお茶碗を差し出すと、やれやれと溜め息を吐きつつ、彼は大盛りによそってくれた。