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〜 あの懐かしき日々 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<9>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

 足音を、分厚い絨毯が吸い込んでくれる。

 真夜中の廊下は、蒼白い月明かりが差し込み、おれの影を長く象る。 

 そう……よく、セフィロスと見た、不思議な青い光……懐かしい月の色。

 

 同室のザックスが任務で不在なのをよいことに、おれは消灯後に部屋を抜け出したのだ。本当はメディカルセンターに行きたかったが、監視員が着いているかもしれない。それにセキュリティルームの開け方なんて、ただの見習い兵のおれが知っているはずもなかった。

 だから、セフィロスの私室にやってきた。

 もちろん、部屋の主であるセフィロスが居ないのだから、そこは固く閉ざされた開かずの間になっている。

 でも……それでも、セフィロスの近くへ……枕元に着いていることができないなら、せめて、彼の生活していた場所の近くへ行きたかったんだ。

 無意味なことだとはわかっている。でも、どうせ寮の自室に居ても眠れやしない。ひとりで居ると嫌なことばかり想像してしまうから……

「セフィ……」

 鼻水を啜り、涙をぬぐうと、豪奢なVIPルームのドアの横に座り込んだ。膝を立て、背を丸め、うずくまる。

 セフィロスの部屋のある、このフロアには、他にも数名の役職者の私室が所在する。だれかに見られると厄介なことになると思うけど……部屋と部屋の間隔はとても広いから、座っていれば多分大丈夫。

 見つけられたら、書類を届けに来たとか言ってごまかそう。 

「セフィ……セフィ…… 無事で居て…… お願い、神様……セフィを守って……」

 両手を組み合わせ、月に向かって祈る。もし本当に神様が居るのだとしたら、昼間の太陽より、月の中かなという気がしたから……

 

 

 

 

 

 

「……見習い兵か……?」

 祈りに夢中になっていたおれは、突然に呼びかけられ、飛び上がるほどに驚いた。

「……おや……見た顔だな」

 彼はそうささやくと、小さく笑った。親しみを含んだ微笑ではない。

 苦笑混じりの問いかけは、どちらかというと冷笑……こんなバカな真似をしているおれを、軽蔑しているように見えた。

「あ、あの……」

 声が出ない。

 さっきまで考えておいた言い訳さえも、思い出すことができなくなっていた。

 

 目の前に立っている長身の人……

 朱味の掛かった髪に片方だけのピアス……<G>だ。

 

 トップソルジャー・ジェネシス。

 

 おれみたいな見習い兵が、やすやすと口をきける人ではなかった。セフィと一緒にいるとき、挨拶をしたことがあるくらいだ。

「あ、あの……ご、ごめんなさい……おれ……」

 この場所への無断立ち入りは禁じられている。部屋の主に呼ばれたり、本人と一緒に居るとき以外は立ち入り禁止の聖域なのだ。

「おれ……あの……」

 どうしよう。何て言おう。

 もし、万一、同室のザックスに迷惑が掛かるようなことになったら……? あんなに彼に止められたのに、勝手にやってきたのはおれなのだ。

「あ、あの……ッ」

 怖いくらい綺麗に整った美貌……セフィと対等の力を持つ<G>に睨め付けられ、言葉が喉を通ってこない。蛇ににらまれたカエルよろしく、おれは惨めに震えながら、片手で嗚咽の漏れそうな口元を押さえた。

 

「……ついておいで」

 <G>……いや、ジェネシスはそういうと、くるりと踵を返した。

「え……? あ、あの……でも……」

 どこへ?

 そう訊ねるべきなのに、おれはまるで操り人形のようにフラフラと彼の後を追っていった。

 直通のエレベーターホール。

 真夜中なので、ほとんど乗る人がいないのだろう。何基かのほとんどが、このフロアで止まったままになっていた。

 ジェネシスは手近な扉を開けると、音もなくそこに乗り込んだ。おぼつかない足取りのおれを急かすこともなく、一緒に乗り込むのを待っていてくれた。

 彼の指が、B4階を押す。

 おれはそれをぼんやりと眺めていた。

 

 ウィーン……

 

 機械的な音をさせ、エレベーターが急下降する。

 乗っているのはふたりきりなのに、ジェネシスはおれを振り返りもしなかったし、おれは木偶の坊のように佇んでいただけだった。

 目的のフロアに到着すると、彼は何の迷いもなくセキュリティールームのほうへ進んでゆく。
 
 おれにとっては初めての場所だ。

 背が高く歩幅の広い彼について歩くには、小走りになってしまう。ジェネシスは一度だけ、背後のおれを見遣ると、フ……と低く笑い、歩みを緩めてくれた。