LOVELESS
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<10>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

 

「ジェネシスか……ああ、ウゼー。ツラを思い出しただけで、吐き気がするぜ。むかつく変態詩人だな」

「セ、セフィロス……」

「ああ、わかったわかった。まぁ、アレだな。一応、ソルジャークラス1stに選ばれるだけあって、フツーのヤツよりは強いな。変態だけどな」

 ことごとくジェネシス関連のセリフに『変態』とつけるセフィロス。相づちの仕方に迷ってしまう。

「まぁ、そんなダメ男だけど、一応、ソルジャークラス1stだった」

「……そ、そうか」

「あの当時、クラス1stは三人だけだったんだ。オレとジェネシス。そしてアンジールという男だ」

「ジェネシスとアンジールか……」

「ああ、アンジールはおっさんヅラなんだか、けっこう神経の細かいヤツでな。何かトラブルがあるといつもフォロー役に回るようなキャラだ」

「そうか、人間の出来ていた人なのだな」

「神経質なだけだ」

 あっさりと一言で片付けるセフィロスであった。

 

 

 

 

 

 

 一呼吸置いて彼が続ける。

「ジェネシスは……まぁ、アレ、トラブルメーカーみてーなもんだな。いつもエロ小説片手に持ってなァ。会議はサボルしよ〜。毎日遊び歩いてな〜。オレと違ってずいぶん自分勝手な野郎だったな」

「あ……はァ……そ、そうか」

 あまりの評価に、困惑しつつオズオズと頷く私。

「何を惚けてやがる。おまえがジェネシスのことを聞きたいと言ったんだろう」

「あ、ああ。……と、年の頃は君と同年代に見えるが……」

「まぁな。たぶん年齢的には同じくらいなんじゃねーのか? 今のオレの肉体はほとんど年をとらないようだが」

「そ、そうか…… その当時、子供のクラウドが修習生として神羅に入社したんだったな」

「ああ。こんなにちっこくてな。チョコボの雛みたいな子供だった」

 そう言いながらセフィロスの瞳が細められた。愛おしげな面持ちを見ていると、どれほど昔の彼が、クラウドを愛していたのかが伝わってくるようだった。

 だが、私と目が合うと、すぐに笑みを引っ込めて顔を反らせた。……何も恥じることなど無いのに、笑顔を私に見られたのが不愉快だったのだろうか。

「クラウドと年が近いソルジャーが、あの子と同室だったんだ。ザックスとか言ったかな」

「……ザックス……聞いたことがあるような気がする」

「そうだろう。クラウドとは同室で親友同士だったらしい。あの頃はザックスが一方的にクラウドの面倒を見ていたようだが」

「修習生とソルジャーなら、そうなるだろうな」

 私はタークスに所属していたので、クラウドと同じ修習生という身分を経験したことはなかったが、それなりの研修は受けた。

 人から教わる立場の時、すでにそれを終えた人や、ましてや教えてくれる立場の人間は頼もしく感じられるものだ。

 クラウドのようにソルジャー志望の子から見れば、同室のザックスやセフィロスなどは、まさしく憧憬と尊敬の対象だったのだろう。

「そのザックスという子は……」

「ああ、当時、2ndの出世頭だったな。アンジールが目をかけていた」

「そうか……」

「ああ、ジェネシスの話だったな。そのアンジールとジェネシスは同郷だったらしい。まぁ、オレには関係ない話だが。地方の村だったらしいが、ジェネシスのほうはその地域の地主の家柄だったらしい」

「そうか……それなのに、神羅に……?」

「ああ、そういやジェネシスにどうして神羅に入社したのか聞いたことがある。あいつなんて答えたと思う?」

 やや声を荒げて、セフィロスは一気に続けた。

「さ、さぁ……」

「『セフィロス、君にあこがれて』だってよ。気色悪イ! 冗談ならもっと気の利いたセリフを考えろというんだ。第一印象から最悪だったな。ヘラヘラにやけたエロイ顔でよ!」

「そ、そんな……ジェネシスはとても整った容姿をしているではないか…… 別ににやけてなど……」

「なんだ、おまえ、ああいうタイプが好みか? エロエロドロドロだぞ、あの男は!」

「そ、そんなことは言っていないが…… ただ、一般的には十分美形で通る容姿だと……」

「あー、ヤダヤダ。どうしてこう軟弱男が気に入られるんだか!」

  ケッと悪態をつくと、さも嘆かわしいというように、頭を振ってみせるセフィロス。

「セ、セフィロス……べ、別に私は……」

「ああ、ホレ、いつものところで、果物買うんだろ。グレープフルーツもな」

 好みの果物を指定すると、彼は私の背後で立ち止まった。