嗚呼、吾が愛しの君。
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<43>
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

  

 

 

 

 

 これが最期だ……!

 その後、私たちがどうなるのかはわからない。 

 だが、絶対に成し遂げなければならない……オメガを消滅させ、この世界を救うこと……!

 私の大切な者たちのために……!!

 

「行くぞ……!」

「ああ……!」

 セフィロスの呼びかけに応え、私はデスペナルティを構えた。

  

 ギィン……ガッキィィィン!

 ガゥンガゥンガァァン!

 

 斬撃と銃撃が、同時に『コア』に炸裂した。

 

 ……ォォオオオオオン!

 

 オメガヴァイスが嘶く……一際高い声を上げて……

 

「……よし……ッ!」

 セフィロスが低くつぶやいた。

 それを耳にした次の瞬間、眩いばかりの白色の閃光が我々を取り巻いたのであった……

 

 

 

 

 熱……熱……熱……!!

 

 白光の熱がジリジリと迫ってくる。

 熱い……身体が溶けそうだ……

 普通の人間ならば、数秒も保たないだろう。

 

 ……ォォオオオオオン! ……ォォオオオオオン!

 

 オメガの叫びが遠くなる。

  

 熱い……!! 呼吸ができない……!

 闇に包まれた空間が、熱の光で揺らいでゆく。

 私とセフィロスは、足場を失い空に舞った。

 いや、『舞った』というよりも、必死に虚無の空間の一点にとどまり続けた。

 なんとか熱の中心部から離れようと試みるが、まるで磁石に引きつけられるように身体が動かないのだ。

 熱の中心に磁場が発生しているのか……このままに位置にとどまるだけでも必死なのだ。

 

 コオォォォォ!

 

 次々に生まれる閃光……もう保たない……飛んでいることも出来ない……

 

 ……身体が溶ける……

 

 気の抜けた身体がぐんぐんと白熱体の中心に引き寄せられてゆく。あの中に取り込まれたら、塵一つ残らず燃え尽きてしまうだろう。

 ……遺骸が残らなければ、クラウドはいつまでも私のことを探し続けるかも知れない……だが……もう……も……う……

 

 ……あつ……い……

 

 

  今まで漠然と感じていた『死』というもの……それを身近に感じた瞬間……

 

 バッサァァァ!

 霞んだ視界が漆黒に染まった。身体を取り巻く熱の感覚が弱まる。

 

「…………あ……?」

 掠れたつぶやきは私の喉から出たものらしい。だがそんなことさえ認識できないほど、意識が朦朧とする。

 

「……あ……ハァ……ハァ…… な……に……?」

 霞んだ双眸を、必死に見開く。

 

 ……私の身体を包んでいたやわらかなもの……

 ……それは黒い黒い翼……そうまるで黒曜のように輝く……漆黒の……

 

「セフィ……ロ……」

 長い腕が私の身体を抱きかかえ、巨大な片翼を広げ、熱を遮る。

 

「セ……フィ……」

 私のことはもういいと、その腕を放してくれと……そう告げたかったのに……

 もうそれを言葉にする気力さえも私にはなかった。

 

 先ほどよりもずっと核に近いところに居る……このままではセフィロスが……セフィロスまでもが……

 

 ああ、セフィロス……! セフィロス……!

 

 君を死なせたくない……大切な……大切な君……

 誰より美しく、勇敢で……優しいセフィロス……

 

 生きてくれ……! どうか、君だけは助かって……!

 

 私は祈った……もはや私に出来ることは、祈ることだけだったのだ……

 ……この身を抱く、彼の力強い腕……輝く黒い翼……その力は一瞬足りとも弱まらない。

 

 ……ルクレツィア……!

 君の息子を救ってくれ……! セフィロスを……守って……くれ……!!

 

「セフィロス……!」

 私は自分の命より、大切な人の名を呼んだ。

 

 そして……気を失う直前、蒼い光が虚空を切り裂いた……

 ……清涼で厳かな……輝き……

 

 『彼女』が、細い腕をそっと開き、ひとつに抱き合った我らをやわらかに包んだ……ような気がした……