嗚呼、吾が愛しの君。
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<18>
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

 

 

 ザン……! ザシュ……ッ!

 

 ドサッ!ドサッ!

 

 ……気色の悪い連中だ。

 斬り倒されても、こもった悲鳴を上げるのみ。命乞いをする奴などひとりもいない。

 テロリストだなんだとほざいていても、生身の連中で、ここまで肝の据わっている者はめずらしい。大抵、剣先を突きつけられ、降伏をせまられれば命乞いするものだ。

 それを潔しとはしない剛の者もいないわけではない。

 だが、根本的にDGソルジャーどもとは異なるのだ。自ら死を選ぶ反逆者は、むしろ強い人間性を持ったまま、死出の旅に出る。無機質なロボットとして殺されるわけではない。

 

「貴様ら、鬱陶しいっ! 退きやがれッ!」

 斬り倒し、蹴り上げ、突き落として行く。

 大分、地下に潜ったはずだ。すでにR10は越しているはず。そろそろ秘密研究所のプレートが見えてもおかしくないはずなのだが……

 

 ヴィィィィンという微かな可動音。

 

「……ッ!」

 うかつにもオレはハッと顔をあげた。たった今気付いたのだ。

 ……エレベーターが稼働している。

 ……ということはここの電気は、地下発電所から汲み出していることになる……

 

「……目的地が近いらしいな」

 ボソリと口に出してみた。

 そういえば、先ほどから小うるさい放送が聞こえなくなっている。また蛆虫のように沸いて出ていたDGも心なしか数が減ってきているように感じた。

 本当ならばアイツの名を呼んで捜し回りたい気分であったが、さすがにそうはいかない。当然、こちらの場所を察知されるであろうし、ヴィンセント自身に危険が及ぶ可能性もある。

 

 ……とそんなときであった。

 

『ヴィンセント〜ッ!  ヴィンセント〜ッ! どこに居るんだよーッ! 俺だよ、クラウドだよッ!』

 ……間抜けな声が上階から聞こえる。

『ねぇったら、ヴィンセントーっ! お願い、返事して! 俺だってばーッ! 怒ってないしッ! ホントだからーッ!』

 ……あのクソガキ……本物の阿呆か。

 さすがに万年下っ端なだけはある。状況判断のできない未熟な子どもだ。

 

 しばらくして、ドカドカと敵をねじ倒す音が響き、荒々しい足音が耳に入った。

 オレが身をひそめるフロアにやってくると、お約束のように再び叫び出す。

「ヴィンセントーッ! どこ〜〜ッ! ねぇったらァァァァ! 返事してよぉ〜〜ッ!」 ガタンガタンと机を蹴り倒す音。

『R11、第二ポイント……侵入者確認……侵入者確認……』

「ああん、もぅ! うざーッッ!」

 地団駄踏むクラウド。

 ウザイのは貴様だッ! アホチョコボ! だからおまえはソルジャーになれんのだ!

 

『R11、第二ポイント……侵入者確認……侵入者確認……』

 放送が繰り返される。

 ようやく静かになったと思ったのに、チョコボ野郎のおかげで元の木阿弥だ。

 

「おい、クソガキッ! こっちだッ!」

 やむを得ないので、隣接したホールから声を掛けてやる。

「あッ、セフィ! ねぇねぇ、ヴィンセントはッ!? ヴィンセントの手がかりとか掴めなかったッ?」

「バカヤロウ! それどころじゃないだろうッ! 早く来いッ!」

 ぐんと腕を引っ張り、監視カメラのない方へ移動する。

 

「痛ッ! ひっぱんないでよ、セフィッ!」

「ったく何考えてやがる、クソガキ! おまえのせいでようやくここまで辿り着いたのに、また面倒なことになるところだったではないか!」

「だってヴィンセントに会えないんだもんッ! ずっと捜してんのにッ!」 

 イラついた声音で言い返すクラウド。

「ヴィンセント、俺たちが来てるって知らないんだぞ!名前呼んでやらなきゃわかんないじゃないかッ!」

「寄ってくるのはDGどもだけだろーがッ!」

「だってッ!」

「だってじゃない! オレに口答えをするな!」

「なんだよ! 俺、もう子どもじゃないんだぞ! セフィ、横暴ッ!」

「いいから黙ってろッ! 連中が来るッ!」

 オレは力任せに、クラウドを書棚の裏側に引き込んだ。

「うわぁッ! 何すんの!」

「しっ……!」

 カツカツと離れたところで、足音が聞こえる。

「…………」

(……セフィ?)

(まだだ)

「…………」

 カツーンカツーン……カツーン……カツーン…………

 

 ……硬質な音がゆっくりと遠ざかっていった……