〜 午 睡 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<84>
  
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

 

 かかとで金属の通路を叩き、響かせた高い音。

 ……それは協力者四名への合図であった。

 私はベルトに挟んだ銃を引き出す。そのまま鋼鉄の通路を蹴り斜めに飛びながら引き金を引いた。

 

 ガゥンガゥンガゥン!!

 

 交渉役を務めた男の手から、通信機をはじき飛ばし、彼の肩に掛かっている銃のベルトを引きちぎった。ライフルは重そうな音を立て、金属の通路に落下し、仕込んだ銃弾が周囲にはじけ飛んだ。

 

 セフィロスは私の対角線上…… そう、連中の背後の壁から、修習生を取り巻く連中に肉薄する位置に舞い降りた。

 打ち合わせ通り、長刀を抜き、彼らの武器をたたき落とす。連中は皆、肩からライフルを提げているから。

 もっともセフィロスは自覚があるのかないのか、何の遠慮もなく彼らの腕を斬り落としていたのだが。

「テメェら、全員ぶっ殺してやるッ!覚悟しやがれッ!」

 銀髪鬼が、まさしく鬼の形相で吠えた。

 セフィロスの剣幕に、さすがの彼らも一歩ひるんでしまう。まさかこの場に神羅の英雄が割って入ってくるとは思いもしなかったのだろう。ましてや、自分自身がその伝説の人物と息が掛かるほどに肉薄し、矛を交えることになるなど……

「セ……セフィロスさん…… セフィロスさん……ッ!」

「クラウド! そこか!」

「セフィロスさん!セフィロスさぁん……!」

 不自由な格好のまま、まるで親鳥を見つけた雛鳥のように、クラウドが叫んだ。

「クラウド、もう大丈夫だ! ああ、可哀想にそんなに頬を腫らせて……!」

 セフィロスはそう答えながら、襲いかかってくる兵士らをいともたやすく斬り伏していった。

「クラウドを殴った野郎はどいつだ! 地獄で後悔しろッ! 貴様かッ!? テメェかッ!?」

 とっかえひっかえ襟首を縊り上げ、そのまま力任せに吹っ飛ばしてゆく。哀れな犠牲者は血を噴き出させ、悲鳴を上げながら、最下層へ墜ちていった。

「クラウド……! 怖かっただろう? よく辛抱したな……」

「セ、セフィロスさん…… だいじょうぶです…… あ、ありがとうございます…… き、来てくださって……!」

「あたりまえだろう。おまえのためなら、北極だろうと南極だろうとすっ飛んでいってやる!」 

 思わず笑みを誘われてしまうセリフを、至極真剣に言ってのけるセフィロス。

 他の修習生たちがあっけにとられているようだが、いちいち注意することでもなかろう。

 

 

 

 

 

 

 続いて、ザックスが通路下の階段から身を乗り出した。

 彼はずっとその場所に控えていたのだ。

「あ、ザ、ザックスさん!」

 修習生のひとりが声を上げた。

「おう! ……クラウド! おまえら、よく頑張ったな! エラいぞ!」 

「ザ、ザックス〜……」

 クラウドの顔がぐしゃりと歪んだ。もっとも懇意にしているルームメイトであり、兄のように頼っているザックスが、顔を見せた時点で緊張の糸が千切れたのだろう。

 

「ザックス、ぐずぐずするな! 子供たちを連れて脱出だ! すぐに応援が駆けつけてくるぞ!」

 ジェネシスの声は私の背後から飛んできた。

「あいよ、わかってるよ!」

「怪我をしている子は? 打ち合わせ通り、拘束具はすべて外せ!」

 彼はテキパキと後輩ソルジャーに指示を出した。予想通り、セフィロスは頭に血が上っている。目に入った敵を、まるで生ける兵器のごとき正確さで、バッサバッサと切り倒している。そんな彼のフォローをしているのはツォンだ。

 

 ……ジェネシスはずっと私の居た場所を見守ってくれていたのだ。

 用心深いテロリストが、人員を分けて私の背後から狙撃しないとも限らない…… ジェネシスは断固としてそう主張し、このような形でずっと私を守ってくれたのだ。

 結果的に彼の心配は杞憂に終わったわけだが、臆病な私は、そのおかげで気力を奮い立たせることができた。