〜 午 睡 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<77>
  
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

「音量を上げよう、ジェネシス。わずかでも手がかりが掴めれば幸いだろう」

 ツォンの言葉に、ジェネシスが、他のモニターの音声を一斉オフにして、セフィロスが映っている準備室のものをアップした。

『ひぃぃぃぃ!』

 唐突に耳に飛び込んできたのは、セフィロスに締め上げられている気の毒な中年男の苦鳴であった。

『ああん? だいたいおかしーんじゃねのか? テメェみてーなうだつの上がらねェ野郎が、こんな時間まで他部門の研究準備室にいるなんてよォ!』

「セ、セフィロス…… なんて物の言い方を……」

「相変わらず、やくざ顔負けだな」

「でも、あの怒鳴り声聞くと元気が出るよね」

「出るか!」

 ツォンとジェネシスの、漫才じみたやり取りを聞きながらも、注意はモニターから逸らさない。

『テメェ、吐くんなら今のうちだぞ! 別部門の貴様がこんな時間にここで何をしていやがる!』

「……別部門というなら、セフィロス本人もそうなんだがね……」

 はぁとツォンが呆れた様子でため息を吐いた。

『わ、わたしは…… わたしは…… そ、その……』

『男だろうッ! はっきり言え!』

「……性差別発言だな」

「ジェ、ジェネシス……」

 セフィロスには私自身、たびたび『男だろう!』と叱られることがある。

 性差別という意識はなかろうが、男子たるものかくあるべき、といった理想像がセフィロスにはあるのだと思う。

 そして、それを体現しているのが、セフィロス本人と理解すればわかりやすい。

 

 

 

 

 

 

『ひっ…… わ、悪かった……! 悪かった! こんなつもりじゃなかったんだ…… わ、わたしは……わたしは、ただ……』

 引き絞られたニワトリのように喘ぎながら、男はそうつぶやいた。

「……い、今のは……!?」

「しっ……!」

 ジェネシスが我々にヘッドフォンを手渡す。もどかしげにそれを受け取り、装着すると、モニターの音声以外の何の音も聞こえなくなった。

『こんなつもりってェのはどんなつもりだ、エェ? あらいざらい全てしゃべりやがれ!!』

 キーンと耳に響くセフィロスの怒鳴り声。ジェネシスがしかめつらをして、音量をわずかに落とした。

『し、し、し、知らなかったんだ…… しゅ、修習生を人質にとるなんて…… も、もっとべ、別の方法で……』

「…………ッ!!」

『……てめェ〜ッ!!』

 ま、まさか……本当に当たりだったというのか……!? こ、この男がテロリストの……

『この野郎! よくもクラウドを〜ッ!』

 バキッ! ドカッ!

 続けざまに、中年男を殴り飛ばすセフィロス。

「セ、セフィロス……」

「やれやれ、頭に血が上っているね。あんなふうに殴りつけたらしゃべることもできなくなるだろうに……」

 軽く舌打ちして、ジェネシスがつぶやいた。

 私はヘッドフォンを取り外し、即座に立ち上がった。

「ジェネシス、私があの場所へ行ってくる! セフィロスと一緒に必要な情報を聞き出してくる……!」

「待ってくれ、それは危険だ、女神。あの男以外にも連中の仲間が張っているかもしれないし。俺が行ってくるから」

「い、いや、ジェネシスやツォンだと目立ってしまう。私が一番周囲に違和感を抱かれないだろう。軍事部門の長を拝命した私なら、兵器開発部門に足を運んでもおかしくは思われない」

「だが、女神……」

「だ、大丈夫だ。君たちはモニターを監視していてくれ。そして、すぐに動けるよう、準備を……!」

 私はふたりにそう言い置いて、部屋を飛び出した。

 コスタ・デル・ソルのセフィロスにも、トロイトロイと言われるので、実際私はのろまなのだろうが、このときは必死に走った。

 もちろん、人目に付かぬようにという注意だけは忘れずに……