〜 午 睡 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<59>
<18禁注意!>
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 ……こういう形で、同性に触れられた経験は何度かある。

 誤解を恐れずにいうならば、普通の男性よりも回数は多いだろう。

 

 だが、その中の誰よりも、ジェネシスはやさしかった。

 繋がるという行為そのものも……だが、直接的な行動だけではなく、口づけの回数も、繰り返し肌を滑る愛撫も、紡ぐ言葉でさえ、こちらが困惑を覚えるほどに、愛おしげで柔らかく、想いに満ちあふれていた。

 

 ローブ型の夜着は、帯を解くだけであっさりと脱げ落ち、直接肌が密着してしまう。

 カッと頬に血が上るのを感じたが、完全に羞恥心からである。ジェネシスは否定してくれたが、私は自分の肉体が、お世辞にもバランスが取れているとは思っていない。

 長身のくせに、肩幅が狭く、なで肩で貧弱なのだ。おまけに肉の薄い身体は、あちこち骨張っていて、たかが膝枕だけでも、セフィロスにゴツゴツして寝苦しいなどと言われる始末なのである。

 

「……君は本当に肌が薄いんだね…… 気をつけないと傷がついてしまいそうだ」

 彼の指がまるで作りを確認するように、胸元を滑った。

 ジェネシスが低くささやく。首筋に唇を滑らせながらのセリフだったので、私の耳にはくぐもって聞こえた。

「……ん……」

 脇腹をついばむように口づけられ、ため息と共に声が漏れた。

 

 ……私は熱に弱い。

 触れられることによって身体が熱くなると、頭までぼうっと惚けてしまうのだ。そうなると、相手の言葉や反応を注意深く伺うことができなくなる。

 ……以前、クラウドにそう説明したことがあったのだが、

 彼は、

『感じてるってコトでしょ。そんだけ気持ちいいんだよ!』

 と、いかにもそういったことに興味のありそうな、青年期らしい言葉が返ってきたものだ。

 

「……ッ! な、に……?」

 足先にくすぐったいような、もどかしい感覚を覚えて、私は想わず身を起こそうとした。

「……女神に、キスを。生涯君に変わらぬ愛を誓います……とね」

 ジェネシスは私の足の甲に接吻した。くすぐったい感覚は、彼の前髪と唇の感触だった。

「や、やめなさい……! そ、そんなところに……」

 下僕のように足下に這い蹲って口づける…… こんなことをされたのは初めてだ。

 いいとかいやだとかそういう感覚ではない。ただ驚いてしまって…… 行為のための愛撫とは解釈できず、私は当惑した。

「ジェネシス……!」

「……君という人は足の先まで綺麗に造られているんだね。まるで高名な彫刻家が彫り上げたように……」

 足指の間を、熱い舌がさぐるように舐った。

「ジェネシス……よしなさいと言ってるのに……!」

「……夢の中にいるようだよ、ヴィンセント……」

 ジェネシスは、ふつりと緊張の糸が切れたように微笑んだ。

 まさしく『夢の中に居る』わけなのだが。ただそれはジェネシスの見ている夢ではなく、私の夢の中なのだ。

 

 

 

 

 

 

 ……そう、『夢の中』だからなのだろうか。

 こうして、初めて肌を重ねる相手なのに、彼の紡ぎ出す愛撫の刺激は、的確に私の興奮を引き出していった。

 首筋から胸もとに続く喉のライン、脇から腹へ続くやわらかな肉の部分…… そして、足の付け根の奧の方…… 

 彼の指と唇がそこを滑るだけで、もどかしいような切ない感覚が背を伝う。

 時折、舌で確かめるように筋をなぞったり、甘噛みされるだけで、身体の中心に熱が募ってゆく。

 その部分に直接触れられたわけではないのに…… 

 

 ……もしかして、私は淫乱なのだろうか。

 ふとそんなことを考える。クラウドらのように積極的に相手を誘うことはしないが、いざ、その場になると非常に高い順応性を示していると思うのだ。

 そう、恋人相手でないときでさえ、私の肉体は十分に悦びを得ている。

 

 ジェネシスは私に男性の恋人がいることなど知らないし、行為の経験があるとも思っていないだろう。だからこそ、身体への負荷を懸念し、丹念に緊張を解くべく、まわりくどい愛撫してくれているのだろう。

 それなのに、こんなふうに興奮してしまうとは……

 

 正直、もう焦らされるのが、つらくてたまらなかった。

 身体を開かれる苦痛には、何度繰り返しても慣れることができない。だが、その後にやってくる、すべてを押し流すような快楽を、一度でも味わってしまえば、その瞬間が待ちきれなくなる。

 

 身体がつらいのは彼も同じはずなのだ。時折肌に触れる彼自身も、もう十分過ぎるほど熱を帯びているのだから。