〜 午 睡 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<57>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 ……温かい……

 軽く握られた左手から、ジェネシスの体温が伝わってくるようだ。

 

 今日は、ずいぶんと、彼のいろいろな表情を見た気がする。

 私の知っているジェネシスは、やはりコスタ・デル・ソルで出会った彼が基準になっているから。

 何事にも動じず、いつも余裕のある微笑を浮かべていて……それも、セフィロスのような皮肉な笑みではなく、包み込むな穏やかな笑みだ。

 だから、この世界で、困惑して言い淀む様子や、少し照れた素振りを見るのはひどく新鮮に感じられた。

 

 ……もし、ここが私の夢の世界ではなく現実であったとしたら……

 そう……つまり、クラウドに出逢う前に、ジェネシスを知ったとしたら、私は彼からの告白に心を動かされただろうか。

 想像してみても、やはりそれは徒労であった。

 だいたい、こうして思考している私自身が、きちんとコスタ・デル・ソルでの記憶を持ってしまっているわけだし、私の知っているクラウドは、ここでの小さな子供ではなく、セフィロスに闘いを挑んだ強靱な青年なのだから。

 

 だが……比べることはかなわなくとも、ジェネシスが私に好意を寄せてくれたことは、ただ純粋に嬉しかった。私の容姿が好みというのは、承伏しかねる部分ではあるが、それらすべてをひっくるめた上で、好ましいと思ってくれたのなら、素直に喜ぶべきことだろう。

 それから……

 ああ、やはり自惚れを許してもらえるのなら、神羅の誇る最強の戦士、ソルジャークラス1stという地位にあるほどの人物から、そういった思いを抱いてもらえたのは、私がここで自分なりに努力した成果もあるのではないかと思うのだ。

 

 今は、おのれの物思いに耽っているときではない。

 やらなければならぬことは山積みだ。なによりも幼いクラウドを無事奪還しなければならない……

 ああ、もしかして、私がいつまでもこの夢の世界を漂っている真の意味は、最愛の少年を救うことにあるのではないか…… そんなふうにも考えた。

 可笑しなことに、私は日中よりも、夜間のほうが思考が冴えるのだ。

 だから、自然な眠りが訪れるまで、いろいろと考え事をするのが日課になっている。今日もそのつもりであったのだが、となりに人がいるとやはり勝手が違うようであった。

 

 

 

 

 

 

 私の手を握る、ジェネシスの手の平の暖かみが伝わってくる。

 ほっそりとした繊細な手をしているのに、私よりもずっと大きい手だ。骨張った私の指がはみ出ることもなく、彼の手の中にすっぽりと収まっているのだから。

 ジェネシスは……眠ったのだろうか?

 ……どうか、この一件が事なきを得ることができますように。ジェネシスとセフィロスが無事でありますように……

 そして、彼らが、問題なくソルジャークラス1stとして復帰することができますように。

 もちろん、ツォンがつらい立場に立たずにすみますように……

 

 いったいいくつの願いを唱えるのかと神様に笑われそうであったが、やはりどの人の身の安全も願わずにはいられなかったのだ。

 私のことは最後でいいから……

 

「……女神……」

 おのれの思考に浸っていた私を、ジェネシスが呼んだ。

 ハッと意識を、となりの人に戻す。

 なんだか、その声がさきほどとは異なり、ひどく切羽つまったように聞こえて……