〜 午 睡 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<39>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 そろそろデスクを整理して、仕事を終えようとしていたときである。

「ヴィンセント。資料部から月度業績報告書が届いております」

 ……月度……

 ああ、そうか。もう月が変わるのか。

 この前、月度報告書を受け取ったばかりなのに、なんと時間の経つのは早いものか。

 それとも、これは私の夢だから、日数の感覚もおかしくなっているのかもしれない。

 だが、少なくとも私の書き込みだらけの卓上カレンダーは、一ヶ月は約30日で、一日の時間は二十四時間であった。

「どうもありがとう、ツォン。時間の経つのは早いものだな」

 きちんと両手で差し出された書類を、礼を述べつつ受け取った。

 うん……特に大きな問題はない。

 以前からの懸案事項であった休眠セクションの人員も、理想的な形で動いてくれたようだ。慣れぬ仕事もあっただろうに、彼らには本当に感謝しなければ……

「貴方が部門長の立場に立たれてから、我が軍事部門は非常に良好な状況です。突出しがちだった経費も理想的な内訳ですし、試行錯誤した試用部隊も、成果を上げてくれました。すべて貴方の采配どおりです」

「……私は補佐官だから、ツォン」

「ですが、実質的に部門運営を任されているのは貴方です、ヴィンセント。それに、休眠中だった試用部隊をああいった形で動かすのは貴方のお考えになられたこと!」

「……彼らも慣れない仕事だというのに、非常に努力してくれたのだろう。礼を言いに行かねばならないな。経費面においては、ソルジャーの人事統括とタークスの主任である君の貢献があってこそだ。これからも皆の協力の元、部門経営をしていければ有り難い」

 そう言って、私は上質の紙で作られた月度報告の冊子をファイルに綴じ込んだ。

「ヴィンセント、今日の夕食ですがご予定は? もしよければ……」

 彼がそこまで言いかけた時であった。

 せわしなく執務室の扉がノックされた。

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、もう終業時刻だというのに」

 眉をひそめつつ、ドアを開けにゆくツォン。

 タークスの部屋に直結した扉ではなかったから、外部からの来訪者からだろう。

 どうも、ツォンは外からの『お客さん』にキビシイのだ。

 ……何度かこの執務室で、ジェネシスに出くわしたことがあったからだと思うが。

 

「ヴィンセント、すみません、ちょっと……」

「おや、ツォン。お客人ではなかったのか?」

 顔を上げると、扉は閉められ、そこにはツォンしか立っていなかったから。

「いえ、社長室の秘書でした。……申し訳ないが、緊急の会議を催すため、貴方にも席についていただきたいと」

「……緊急会議? なにやらおだやかではないな。だが、社長は不在だろう? 先日から外遊されていると聞いたが」

「ええ。正確には招集を掛けているのはルーファウス副社長です。とりあえず、全部門の部門長と、特別人事統括を集めているようで……」

「君は何も聞いていないのか?」

「はい。私も会議には出るよう言われましたが、内容についてはまったく。だいたい、今日これからそんな会議があるということさえ今、初めて聞かされました」

 戸惑いがちに、ツォンが答えた。

 ツォンは、副社長のお目付役を自任している。副社長は次のことは、たいていのことならば、まずツォンの耳に入るのが当然なのだ。

 だが……

「……そうか。いや、こうしていても致し方がない。なにやら重要な案件のようだし、すぐに会議室へ行こう」

 私はすぐさまツォンを促した。

 わけのわからぬ胸騒ぎ。

 ……この世界に来てから、こんな感覚は初めてだ。

 私はそれを振り切るように、急ぎ足で廊下を進んだ