〜 銀 世 界 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<27>
  
 セフィロス
 

 

 

「セフィロス! ……セフィロス!」

「セフィロス、起きてくれたまえ! 大ニュースだ!」

「セフィロス、そろそろ朝ご飯だよ! 昨日も食べてないんだから、さっさと起きて!」

 いくつかの声がハモッて耳に入ってくる。

 ああ、そういや、ずいぶん腹が減った…… あたりまえか、一昨日からまともに食っていないんだ。

 足は……痛くない。

 そりゃ、床に付けば痛みを感じるかもしれないが、こうしてベッドに横になっている分には…… 熱っぽく疼く感じもなくなっている。

 

「おはよう、セフィロス! いい朝だぞ!」

 勢いよくオレ様の部屋の扉を開け放ったのは、ジェネシスの野郎だった。他の連中はその後に続いてくる。

「……ウゼーな……朝っぱらから、テメェらは……」

「昨夜はよく眠れたか? カーテン開けるぞ!」

 オレの苦情などものともせず、ジェネシスはズカズカと部屋の中に入り込み、カーテンを引っ張った。ヴィンセントだのクラウドだのも、ぞろぞろと後に続いてくる。

「うッ…… まぶしい……」

 朝の日差しがもろに差し込み、オレは思わず目を背けた。

 降り積もった雪に反射した太陽光線は半端じゃない……

 

 え……いや…… 『太陽光線』……?

 

「ほぅら、セフィ! 久々の晴れ空だよ! バリバリの晴天! 気温も上がってきてるし、雪も溶け出すんじゃないかな」

 嬉しそうにチョコボ小僧がそう言った。

「打って変わったこの上天気だからね。俺も驚いたんだ」

 と、ジェネシス。そういえば、昨夜まではタートルネックのセーターだったくせに、今日はシャツの上に一枚羽織っているだけだ。

「よ、よかったな、セフィロス…… 後で一緒にラジオを聞こう。電気の復旧にもそう時間はかからないだろう」

 と、ヴィンセント。こちらもにこにこと満面の笑みだ。

 

 

 

 

 

 

「おい……ちょっ…… どういうことだ、イロケムシ」

 オレはひとりだけテキパキとゴミの処理だの、洗い物の戻しなどをしているヤズーに声を掛けた。こいつの場合、働き者というよりも、面倒くさくて皆の輪に加わっていないだけなのだ。

「えー、どういうことだって、そういうことでしょ。よかったじゃない、天候が回復して。ほら、セフィロス、そんなことより食事済ませて欲しいんだけど。ここに持ってこようか?」

「……重大問題とメシを同次元で語るな。天候回復って……もう雪は降らねーのか!? 完全に元通りなのか!?」

 怒髪天をつきそうになる感情を、極力セーブしてオレはそう聞き返した。

 冗談じゃねーぞ!? これじゃオレ様はピエロじゃねーか!

 なんのために、わざわざ雪山登頂など……

「まぁまぁ、セフィロス。天候回復とはいっても、これまでと同じように生活できるまでには時間もかかるわけだし。雪もまだ溶け残っているからな。そういきりたつなよ」

「……ッざけんな! 冗談じゃねーぞ! こんな情けない目に遭って、その翌日に快晴だと!? 問題解決だと!?」

「セ、セフィロス…… 大声を出しては捻挫に響く……」

 ヴィンセントがオレの肩から落ちたガウンを慌てて拾い上げる。だが、そんなものなどなくとも、たいして寒さなど感じない。順調に天候が回復しつつあるのだ。

「これが、黙っていられるか! クソ〜! つまんねェ怪我までして、このオチかよ……」

「セフィロス…… 怪我はきっとすぐに治る……それにまったく情けないことなど無いではないか…… 私たちのために負った傷だというのに……」

「……う〜……」

「切り出してきた薪だって、いろいろ使い道はあるし…… この土地は夜に気温が下がるから」

「……もういい。シャワー……浴びる」

 オレは低くつぶやいた。

 シャワーをすまさなければ、メシを食う気にさえなれない。ベッドから起き上がろうとして、重心を失いよろけてしまう。

 ったく、足の怪我っつーのは、なんて煩わしい……

 

「セフィロス、風呂かい? 背中を流してやろうか」

「……いい」

「そんなにむくれるなよ。天気が回復したのはいいことじゃないか。いつまでも雪が降っていたら、都市機能は壊滅だし、チョコボっ子の仕事だって困るだろう?」

「…………」

「ほら、手、俺の肩に手を回して。どうせなら、広い方の風呂に行こう。湯も張ってあるしね」

「…………」

 力尽きたオレは、無言のまま抵抗した。だが、ジェネシスは強引だった。さっさと腕をとると、ずんずん進んでいってしまう。

 ヴィンセントや支配人が、物言いたげにオレ様を見送っていたが、こちらの気分を慮ってかそれ以上、声を掛けてはこなかった。