Fairy tales
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<14>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

「? なんだ、なにボケッとしている。さっさとしろ。女物も選びにいかなきゃならないんだろ」

 服装に似合わない、乱暴な物言いでのたまうセフィロス。昔はもうちょい格好つけてたような気がするんだけど。

 セフィって、自分がモテるのは自覚しているはずだけど、ただ「わかっている」ってだけで、基本的に無頓着な人だった。

 だって、『神羅の英雄』って呼ばれてた頃、彼が付き合っていた人って、男も女もみんな玄人筋の人たちばかりで。

 別にわざわざセフィが着飾って出向いて行かなくても、ある意味テキトーに交際できる人たちで。

 そのせいか、VIPルームを宛がわれていても、そんなにしょっちゅう買い物に行っていたり、調度品を新しくするようなコトはなかったんだよね……  むしろ、俺と一緒に居てくれるようになってからは、俺のものばかりを選んでくれていた。

 その点ジェネシスなんか、いかに自分を魅力的に演出するかってことに、心を砕いている人だったと思う。VIPルームには、服や靴、小物が溢れかえっていたし……もっとも、それらを乱雑に放置しておくのは彼の美学に反するのか、整理だけはきちんとしていたみたいだけど。

 

「お小姓みたいだな、クラウド」

 黙ったまま回想していたら、いきなり声を掛けられてびっくりした。

「なにそれ。仕方ないだろ、ネクタイしたらこんなになっちゃうんだから」

「別に。なかなかいいんじゃねーか。ああ、動くな」

 そういいながら、彼は俺の蝶ネクタイを直してくれた。

「セフィは……似合うよ。ま、昔っからそう思ってたけどさ」

「フフン、どうした。しおらしいことを言うなァ。惚れ直したか?」

「自惚れないでよね。さ、俺はヴィンセントの衣装選び手伝うんだから!」

 壁のように立ちふさがっている英雄を、ぐいと押しのけてやった。さっきから、ヴィンセントがこっちを見ているのが気になる。

「なんだ、またおまえか、ヴィンセント。相変わらずトロくせーな」

 チッと舌打ちするセフィロス。どうして、こんなにおとなしいヴィンセント相手に意地の悪い態度をとるのか!

「え、あ、あのッ……す、すまない! す、すぐに適当に……」

「本当に手間を掛けさせてくれるな、貴様は。ぐずぐずするな、ほら、こい!」

「え……あッ……」

 ぐいとヴィンセントの腕をひっぱるセフィロス。

「ちょっ……! セフィ! ヴィンセントに乱暴なことしないでよ!」

「いつまでもぐずぐずしているからだ。オレは気が短いんだ! あー、さっさと元の世界に戻りたい!」

「そんなのみんな同じだろ!」

「オレはガキのままごとみたいな生活には我慢がきかん!」

「あ、あの……セフィロス……で、でも、あの、その……」

「なんだ、ヴィンセント!希望があるならさっさと言え」

 普段の生活では、この上なくだらしなくて、面倒見てもらってばっかのくせにエラソーに!このときばかりに叱りつけるような言い方して!

 さらに文句をいってやろうと、割って入ったところ、ヴィンセントがようやくまともな言葉をしゃべった。

「ち、違うんだ…… あの……君は……君は……ほ、本当に綺麗だな……」

「…………」

「あ、あの……も、もちろん、私は……前からわかっていたけれども、そういった格好をすると、ひどく映えて……」

「……は?」

 と、脱力しきったセフィロスの声。

「あ、あのッ……すまない。唐突に不躾なことを…… で、でも、君がとても素敵な青年に成長してくれて…… なんだか胸が熱くなってしまって……」

「…………」

「さぞかし、君の母君も、素晴らしい青年に成長した息子を誇りに思って……」

「アホか、おまえは! 今は、そんなしみじみした話をしている場合じゃねーだろうがッ!」

「あ、し、失敬……」

「いいから、さっさと来い!」

「ヴィンセントに乱暴なことすんな、セフィ!」

 と、割って入ったときに、ヤズーが戻ってきた。

「わー、なんか盛り上がってるねェ。やっぱ、俺たちはこうじゃなくっちゃねェ」

 

 

 

 

 

 

「あー、やっぱしィ、似合う似合う、シンデレラちゃん! 俺の見立て最高!」

「ちょっと待ってよ、ヤズー! 髪型とかもうちょっと工夫した方がよくない? ヘアアクセも買ってきたんだし。ほら、リボンとか」

「そうだねェ。大人っぽくアップにする?」

「うーん、でも、俺に似て金髪綺麗だからさァ。降ろした方が可愛いかも」

「よく自分で言えるよね、兄さん。ま、確かに彼女のブロンドは魅力的だけど」

 俺とヤズーがやり合っている間、惰眠をむさぼるロッズとカダージュ。まぁ、この屋敷に忍び込めるのは、必然的に夜中になってしまうので、お子様組は致し方がないが。

 夜に強いセフィロスは、退屈そうに粗末なソファに寝転がっている。

 ヴィンセントは嬉しそうなシンデレラちゃんを眺めながら、彼女以上に満足そうに微笑んでいる。他人の喜びを自分用に変換できてしまう人なのだ。

「ねぇねぇ、ヴィンセント! 彼女の髪型、どっちがいい?」

「ヴィンセント、アクセサリーなんだけどさ、これだとちょっと大げさだよね?」

「え……あ……そ、その……どちらでも可愛らしいし…… ペンダントもよく似合っていると……」

 やれやれ、俺たち訊ねる相手を間違えている。ヴィンセントはあまり断定的な発言ができる人じゃないのは、恋人の俺が一番よく知っているんだから。ましてや衣装関係は疎いと自ら発言していたくらいじゃないか。

 

「おい、おまえら……ファッションショーもいいがな……」

 ため息混じりでセフィロスが、面倒くさそうに身を起こした。

 シンデレラちゃんもセフィロス相手は緊張するらしくて、驚いたように背を伸ばしていた。

「なんだよ、セフィ。今、大事なところなのに!」

「……大事なのは、その女が王子とやらをモノにすることだろ」

「セ、セフィロス…… 若い女性にそんな物言いは……」

 無遠慮なセフィロスを、慌ててヴィンセントが止めた。言い方ってモンがあんだろーが!アホセフィ!