〜 a life of dissipation 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<6>
 
 セフィロス
 

 

 

 午前一時過ぎ。

 オレはまだ寝床でゴロゴロとしていた。

 もともとあまり早く眠る習慣がないのだ。居間から引き上げてきたものの、読みかけの本を読み出したらキリがなくなった。

 ジェネシスの書いたエロ小説だ。

 神羅にいた頃から、『LOVELESS』とかいう変態ポエムを好んでいたが、そこそこ文才もあったらしい。

 小さな文庫本の中では、濃厚で淫靡な世界が繰り広げられていた。

 正直、興奮しないこともなくはないが、あいつの本で抜くというのはプライドが許さない。

 オレはのろのろと起き上がった。

 ずっと読み続けていたせいで、喉が渇いたのに気づかなかったのだ。

 ガウン一枚を身に纏って、部屋を出る。

 

 ……抜くだのなんだのって言えば、ヴィンセントのほうはどうなったろう。

 普段はいかにも年長然として、立ち居振る舞いから物言いまで、落ち着き払っているくせに、ときたま想像も付かないすっ飛んだことをしやがる。

 しかも、そのとんでもないことが、小さな子供の好奇心レベルの阿呆さ加減なのだ。

 今回の騒動だって、クラウドが持って帰ってきた興奮剤(?)とやらを、おもむろに飲んでしまったらしい。

 クラウドがなんともなかったから、自分が服用しても、少しばかり元気になれるかもしれないと考えたのだそうだ。

 しかもその「元気になる」が、性的にではなくて、性格的に。

 ここまで来ると、バカじゃないかと批難するよりも、あまりの滑稽さに、可愛くさえ感じてしまうだ。

 キッチンまで行き、ビールを引っ張り出し、ソファに腰を下ろす。

 南国の夜は、適度に涼しくなって非常に心地いい。わずかに窓をあけ、夜風を招き入れつつ、オレはビールを飲み出した。つまみが欲しいところだが、まぁよしとする。

 この陽気な家でいったい何度目の夜を迎えるのだろう。

 機が満ちないといいながらも、どことなくここでの生活を楽しんでいる自分を否定することができない。

 最初は、長い待ち時間のあいだ、気に入りのクラウドの側ならば、退屈しないと踏んだだけだったのに、あれよあれよいう間に、銀髪三兄弟やら、ジェネシスやらが入り浸るようになってしまった。

 いや、それより何よりヴィンセントの存在だ。ヤツだけは、オレが来るより前に、クラウドの側に居た。後から耳にしたことだが、クラウドがほとんど力づくで、あの男をここコスタ・デル・ソルに引っ張ってきたという。

 恋人同士だというが、そういうのはクラウドだけだ。ヴィンセント本人は、まるで幼い少年をいとおしむように世話をしている。

 もちろん、オレだとて、彼らの関係を熟知するわけではないゆえ、あくまでも第三者的な立場から見た場合、なのであるが。

 

 

 

 

 

 

 南国の夜は考え事によい。

 潮の香りが夜風に乗って、鼻腔をくすぐる。

 あっという間に空になったビールをゴミ箱に投げ入れ、そろそろ引き上げようかという頃合いだった。

 居間の扉がおずおずと開かれたのだ。

 ギィという鈍い音の後に、おぼつかない足音が続いた。

 その人物は水を汲み一気に飲み干す。冷蔵庫には冷えたドリンク類もあるのに、そちらには目もくれずだ。

 それが済むと、大きくため息を吐き出し、こちらに向かってのろのろと歩いてきた。

 たぶん、この場所にオレが居ることに気づいていないのだろう。

 月明かりが徐々にヴィンセントの頼りない姿を映し出すが、ツラを見る前に、もうその人物が誰なのかオレにはわかっていた。

「ハァハァ…… あ、セ、セフィロス?」

「ヴィンセント」

「ど、どうしたのだ、こんな時間に……? どこか具合でも悪いのか?」

 こんな状況なのに、まずオレの心配をするのが、いかにもコイツらしい。以前、夜中に発熱して、ヴィンセントの手を借りたことがあったから、そのときのことを思い出していたのかもしれない。

 もっとも、その想い出はオレにとっては、かなり不愉快な事件なのだが。

「いや、そういうわけじゃない」

 そう答えてから、ふたたびいたずら心が沸いて出た。オレはこいつの困った顔を見るのがよくよく好きらしい。

「……おまえのほうこそどうした? 顔が紅いぞ。気分でも悪いのか?」

 常のオレならまず口にしないようなやさしいセリフで、身を案じてやる。たぶん、ヤズーはオレたちに事情をバラしたことは、ヴィンセント本人に告げてはいないと思う。

「あ、あの……こ、これは違うんだ。びょ、病気とかそういうんじゃなくて」

 案の定あたふたと身振り付きで弁解するヴィンセント。

「……だが、立っているのも苦しそうだぞ。とりあえずとなりに座れ」

「で、でも……」

「オレが気になるんだ」

 そういうと、ヴィンセントはおとなしくオレのとなりに腰掛けた。