〜 a life of dissipation 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<3>
 
 ヤズー
 

 

 

 

「やぁ、ご機嫌よう。はい、ヤズー、これおみやげね」

「ありがとう! ノエルのチーズケーキ! いっつも売り切れになっちゃうんだよねェ。きっとヴィンセントも喜ぶよ!」

「……なんかさ、週末の行事っぽくなってない? 毎週毎週……よく来るよね、アンタ」

 ツケツケと言ってのける兄さん。ヴィンセントを好きだと公言してはばからないジェネシスは、兄さんにとって目下最大の敵と認識されているらしい。

「先週は行けなくて残念だったんだよ。締め切りが重なっちゃってね」

「人気作家なんだろ。こんなにホケホケ遊びに来ていいわけ?」

「大丈夫。俺書くの早いから。やぁ、セフィロス、ご機嫌よう」

 後から居間にやってきたセフィロスに機嫌良く挨拶するジェネシス。セフィロスもケッと悪態を吐くが、彼が居ようが居まいが、まったくかまわないらしかった。

 セフィロスは不快なことはハッキリ態度にも言葉にも表す人だから、ジェネシスのことは不愉快ではないらしい。

「セフィロス、君の支配人さんのお店、すいぶんと通好みのようだね。この前編集と行ったら驚かれたよ」

「ほー」

 新聞を眺めつつ、適当に返事をする。

「お酒はもちろんだけど、料理も美味しいし、また一緒に行こう、セフィロス」

「一人で行け」

「おまえと一緒に行くと、楽しいからさ。支配人さんもいつもより可愛い感じだしね」

「あー、うるせェ、うるせェ。おい、イロケムシ、腹減った」

 偉そうに宣うセフィロスは不快だが、そろそろいい時間だ。夕食の準備に取りかかろうと立ち上がる。

「……あれ? 兄さん、ヴィンセントは?」

「え? カダたちと一緒なんじゃないの?」

 兄さんが言った。この時間にヴィンセントが居間にいないのはめずらしいので、てっきりどこかに出かけているのかと思ってた。

「カダとロッズは海だよ。ええと……夕飯までには戻るって聞いてるけど、ヴィンセントは一緒じゃないって。ふたりで出かけていったんだから」

 真っ昼間の海なんぞ、直射日光が苦手のヴィンセントなら、ほんの数十分で倒れてしまうに違いない。彼は海には入らないから。

「じゃあ、部屋かな。俺、呼んでくる。……今はあんまし呼びたくねーけど」

 じろりとジェネシスを睨み付けると、兄さんはさっさと居間を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 キッチンで手早く下ごしらえを進めていると、すぐに兄さんが顔を出した。

 少し困っている様子だ。

「どうしたの、兄さん。ヴィンセントは?」

「……うん、なんか具合悪いって。晩飯いらないってさ」

「えぇぇッ!?」

 叫んだのは俺だけではなかった。ヴィンセント命のジェネシスはしっかり聞き留めたらしい。

「具合悪いって……今朝はそんなことなかったじゃない。普通に食事もしてたし……」

「チョコボッ子。熱は? 吐き気とか腹痛は?」

 俺とジェネシスに詰め寄られ、慌てる兄さん。正直気の利く人ではない。きっとどこが悪いのかとか、発熱しているのかさえも訊いてきていないに違いなかった。

「えー、部屋入っちゃダメっていうしさ〜。俺も心配なんだけど、無理矢理開けたら、嫌われちゃうかもしんないしィ」

「何を悠長なことを言っているんだ! 女神に万一のことがあったらどうするつもりだ!?」

「まぁまぁ、ジェネシス。えーと、ちょっと俺、様子見に行ってくるよ」

 俺は一挙にテンションの上がってしまったお客人を宥めた。

「ヤズー、そうだな。そのほうがいい」

「うん、たぶん、俺が行くのが一番よさそうだし。ジェネシスだと緊張しちゃうでしょ。……悪いんだけど、キッチン見ておいてくれる? 焦げないように頼むね」

「わかった、頼むよ、ヤズー。後は俺がやるから」

 ジェネシスがさっさとバトンタッチしてくれた。キッチンの中のことでは、兄さんはことさらに無能なのである。

 エプロンを外し、居間を通り過ぎる。

 セフィロスはいつものポジションで、転がっていたが、なんとなくこちらを気にしているような気配を感じた。