〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<49>
 
 ジタン
 

 

 

 

 

「ゴメン! ホンットーに、すんまっせんでした」

「この役立たずがッ!……痛ッ!」

 貫かれた左肩を庇い、スコールががくりとベッドに手を着いた。その衝撃がさらに彼の肉体を苛む。

 形の良い眉を寄せて、激痛を堪えていた。

 

 おっと、俺サマはジタン。

 語りは初めてだが、完全に取り乱しているスコールやクラウドよりは、客観的に事態を認識できていると思う。

 

 セフィロスさんが姿を消したのは昨夜のことらしい。

 スコールがふたたび眠りに着き、それに安堵したクラウドも、つられるように眠り込んでしまった。

 その後の出来事であった。

 

 今朝まではなんとかごまかしてきたが、とうとう昼過ぎにバレてしまった。人ひとりがいなくなったのを隠しおおせるほどスコールは鈍感ではなかった。

 それがましてや、恩人のセフィロスさんであるのだから。

 

 スコールほど重篤ではないものの、同様に負傷したセフィロスさんが、姿を消したのは俺たちにとっても衝撃であった。誰一人として例外なく、すでに彼のことを仲間だと判じていたのだから。

 だが……

  唯一その場に居合わせたラグナさんが、これほどに責められるのは理不尽だと感じる。

 

「スコール、落ち着けよ。傷口が開くぜ」

 尚も食ってかかろうとする彼を、怪我に触れぬよう制止した。

「これが落ち着いていられるか……! セフィロスは深傷を負っているんだぞッ! 昨日の今日なのだ、まだ辺りにカオスの連中が徘徊しているかもしれない……!」

「カ、カオスの……」

 クラウドの顔がサッと青ざめる。

 動揺するクラウドをすら、省みる余裕がないらしい。

 これまで共に旅をしてきた俺だが、スコールがここまで激昂した姿は見たことがなかった。

 むしろ、クラウドやティーダのほうが、おのれの気持ちのままに発言し、動き回ろうとする。そんな彼らを止める役目は、スコールのものであったのだ。

 ……まぁ、さすがに父親だと名乗るラグナさんに逢ったときは、動揺を隠しきれなかったようだが。

「ごめん、ごめんってば、スコール! 俺だって止めたかったんだよ〜、だけど……」

「触れるな!」

 肉体の痛みすら歯止めにならぬ様子で、ふたたび身を起こそうとするスコールだ。そんな彼を宥めようとしたのだが、ラグナさんの手は叩き落とされた。

 今のスコールは、ただのだだっ子だ。

 さすがに黙っていられなくて、言葉を挟んだ。

 

 

 

 

 

 

「いいかげんにしろ、スコール! ラグナさんを責めるのは筋違いだろーがッ!」

「……なんだと……」

「テメェらしくねーぜ。どういった意図であれ、ここから姿を消したのはセフィロスさん自身の意思だ」

 身を乗り出す彼の前に腕を差し出す。

「ジタン……!」

「ホントはわかってんだろ、おまえだってよ」

「クッ……!」

 ギリギリとおのれの腕に爪を立て、歯がみした。

 そう、俺に言われるまでもなく、スコールが一番責め立てているのはおのれ自身なのだ。ラグナさんへの怒りは、ただの八つ当たりにすぎない。いや、父親だと認識しかけた気安さが、『甘え』となって吹き出しているだろう。

「うん。……たとえ怪我してても、セフィを止めるのは無理だよ。これまでだって、セフィがしようと思ってできなかったことなんて……ひとつも無いもの……」

 ソファで膝を抱えていたクラウドがつぶやいた。その部分だけ、布地の色が変わっているのは、多分彼の涙なのだと思う。

 クラウド自身、彼の属する世界においては、『勇者』と呼ばれるほどの青年であるはずだが、とてもそんなふうには見えなかった。

 スコールが放っておけないというのも理解できる。

「どうして……どうしてなんだよ、セフィ。いっつもあの人はそうだ。ようやく俺とも打ち解けてくれたと思ったのに……」

「……ク、クラウド……」

 スコールの声が不意に揺れる。

 ふたたび膝頭に顔を埋めたクラウドのことが気になるのだろう。駆け寄ることさえできない状態に低く舌打ちした。

 気の回るセシルが、すぐにクラウドのとなりに寄り添い、宥めるように背を撫でてやった。

「……探しに行く」

 スコールがガンブレードを支えに身を起こそうとした。

 まったく……無茶が過ぎるってもんだぜ。走り回るどころか、歩くだけでも、痛みで息が上がっているというのに。

「ス、スコール! ダメだよ、寝てなきゃ! ゴ、ゴメン……俺が取り乱してどうすんだ。セシルも……もう、大丈夫だから!」

 クラウドが慌てて彼を止める。大きな青い目は水を含んで揺らいでいるが、もう泣いては居なかった。

「……すまん、クラウド。俺のせいで……」

「スコールは全然悪くないよ。もちろん、ラグナさんも。アシストをするって決めたのもセフィだし、出て行ったのも……」

「ハイハ〜イ、そこまでッス!」

 パンパンと手を叩いて、割って入ったのはティーダだった。

 今はこのマイペースさが救いだ。

「こんな状態でモメてもしかたないぜ。まず、スコールは早く怪我を治すことッス。それじゃ、俺らと一緒にセフィロスさんを探しに行くどころじゃないっしょ。クラウドもッスよ。心配なのはわかるけど、今はしっかりメシ食って力溜めとかなきゃ」

 彼の言葉を受けるように、ティファが山ほどの料理をテーブルに並べた。