〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<27>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 

「……ペンと紙を」

 翌朝、皆での朝食が終わったときに、セフィロスが要求してきた。

 俺が持って行く前に、なぜか妙に腰の低いジタンとティーダが、「はい!」とばかりに羊皮紙とペンを差し出す。

 クラウドは彼と話したそうにちらちらと顔色をうかがっていたが、やはり恐れがあるのか、俺の側を離れようとはしなかった。

 セフィロスは、剣を扱うにしては綺麗な指で、さらさらと紙に地図のようなものを書いていく。

「……セフィロス、それは……?」

 そう訊ねた俺に、彼は書き上げた紙片をよこした。

「カオスの戦士たちの居場所だ」

 素っ気なくセフィロスは答えた。

「え……」

「えぇっ!?」

 無遠慮で素っ頓狂な声が上がる。ジタンやティーダだ。

 声こそ上げなかったが、セシルもかなり驚いた様子であった。もちろん、俺やクラウドだとて例外ではない。

 もとの世界に戻るには、おのれと対になっている相手と何らかの形で決着をつけ、クリスタルを手に入れることだ。

 少なくとも俺たち、コスモス側の戦士はそう聞いている。

 ただ、『決着』というのが、何を意味するのか、それは個人によって異なるのかもしれない。親兄弟という関係もあれば、俺と魔女のように、元の世界においても宿敵同士という組み合わせもある。

 ティーダやジェクト、セシルとゴルベーザの関係を見ても、必ずしも命の奪い合いをすべき間柄だとは思えないからだ。

 

 

「何をしている。すべきことが定まったなら、さっさと行くがよかろう」

 セフィロスが冷ややかに言った。

「ちょっ……セフィロスさん、そんな、ちょっと醤油とってみたいに軽々しく……」

 なぜかジタンが慌てている。

「そうッスよ。そのテンションは、『今日、良い天気だね』『そうだね』くらいじゃないッスか!」

 動転して叱りつけるティーダ。セシルも驚いたのだろうが、騒々しく動き回るようなことはしない。

 もちろん、俺だとて驚いた。これまで、ずっとその場所を探し、周辺を浄化して旅して回っていたのだから。

「い、いや……だが、いいのか……? こんなことを俺たちに教えて……」

「……もともと、あやつらに義理立てするつもりはない。私には関係のないことだ」

 俺の問いかけに、抑揚のない声で返事をすると、

「まぁ、もっとも……敵の言を信じられないというのであれば、おまえたちの好きにすればいい」

 と、続けた。

「バカ、スコール! すっこんでろ!」

「とりあえず、セフィロスさんが自分からウソつく理由はないっしょ!」

 なぜかジタンとティーダに怒鳴りつけられる。

 どうも彼らは、目の前に座っている、無愛想で見た目だけ綺麗な男を気に入ったらしい。

 確かに、この人は、黙ってそこにいるだけで、周囲の関心を集めてしまうカリスマ的な素養を持ってはいるのだが。

 

 

 

 

 

 

「いや、すまない、セフィロス。そんなつもりで言ったんじゃないんだ。俺はただ……」

「……スコールは、セフィロスさんが、自陣営の情報を敵方に漏らすことによって、仲間から攻撃されるようなことはないのかと心配しているんだよ。そうだよね?」

 さすが、セシル。お見通しだ。

 セフィロス相手に心配もクソもないのかもしれないが、カオス陣営の他の連中全員に襲われたら、ただではすまないだろう。

 ジェクトだけは、手出しをしないように感じるが、そうであっても積極的に守るというのも考えにくい。

「よけいなお世話だ。私のことは放っておけ」

 セフィロスは予想通り、素っ気なく吐き捨てた。

「……ねぇ、セフィは、いつもひとりでいるの?」

 聞き取れないような小さな声で訊ねたのは、一番遠くの席に座っていたクラウドであった。

 その問いかけをどう解釈したのか、セフィロスはこの上なく冷たい目線で、クラウドを射た。

「当然だ。……カオスの者どもは、たまたまこの世界に召喚されたというだけのこと。もともと仲間意識など持ってはおらん」

「…………」

 クラウドが目を伏せる。沈黙の落ちた嫌な雰囲気を壊すべく、俺は立ち上がって皆を促した。

「皆、さっそく出発するぞ。全員が一カ所に集まっているかはともかく、セフィロスの指示してくれた場所付近に行けば、本体と遭遇できるだろう」

「おっし、行くッスか! もうイミテーション相手はこりごりッスからね!」

「ま、決着の付け方は人それぞれだろうからな。あんまり力むなよ、ティーダ」

 握り拳を振り上げそうなティーダに、ジタンがからかい口調でそう言った。

「オレはぜったいオヤジを倒す! 認めさせてやる! あ、アシストは不要ッスから」

「頑張ってね、ティーダ。僕も……兄さんと和解できればいいな。理解してもらえると嬉しいんだけど……」

 セシルはめったに自分のことは口にしない。

 だが、この場で敢えて正直な気持ちを話したのは、おそらくセフィロスとクラウドを思っての事だったと感じる。

 セフィロス相手に、おかしなテンションになってしまうジタンやティーダとは異なり、セシルだけは常と変わらぬ静かな立ち居振る舞いで、愚鈍な俺では気がつかぬ配慮をしていた。

 そのせいか、セフィロスのほうも、セシルに対しては、ごく紳士的だったと感じる。

 もっとも『紳士的』に歓談したりするわけではないが、俺と話すよりも、遙かに穏やかに会話をしていたということだ。