〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<25>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 

「落ち着かないのなら、別室で先に休め」

「で、でもッ……」

「……もともとおまえは夜に強い方じゃないだろう。疲れも溜まっているだろうし、もう寝たほうがいい」

 木作りの壁掛け時計を眺め、俺はクラウドを促した。

「……ス、スコールは……?」

「俺はまだセフィロスと話をしたい」

「で、でも、セフィの記憶の問題なら、今、一緒に生活している俺がいなくちゃ意味ないんじゃ……」

 なかなか引き下がらないクラウド。

 もちろん、一緒に居てくれたほうがよいにちがいないが、それはクラウドが平静を保っていられればのことだ。

「何も今夜中にすべて話尽くす必要はないだろう。おまえはよく彼を見知っているのだろうが、俺はほとんど初対面だ。少し個人的に話をしてみたいしな」

 そういうと、クラウドはわずかに考え込むような仕草をした。

「……わかった。じゃ、俺、寝るね。となりの部屋…… スコール何時頃戻ってくる?」

 上目がちに訊ねられて、俺は一瞬戸惑った。

 この部屋には寝台がふたつある。一番広い室なのだ。

 セフィロスは当然、この部屋でやすむのだから…… 誰か一人、監視役として着いているべきだろう。もちろん、その役目は俺自身が担うつもりだったのだ。

 まぁ……おそらくセフィロスはひとりにしても、勝手に姿を消すようなことはなかろうが…… いや、ほとんどこれは直感みたいなものだったが。

「あ、ああ。そうだな。……しばらくしてからだ」

 俺はあいまいに答えた。

 適当な物言いが不愉快だったのか、クラウドはつんと顎を挙げると、クッションを抱きしめたまま、隣室に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…… やれやれ」

「フ…… 苦労が多いようだな、スコール・レオンハート」

 遠慮のないため息を聞き留め、セフィロスが言った。笑いを含んだ声音だった。

「大丈夫だ、もう慣れた」

 至極真面目にそう返すと、今度はハッハッハッと声を上げて笑われた。

「……あの子は昔からあんなふうだ。いくつになっても地の部分は変わらぬな」

「セフィロス。単刀直入に訊ねるが、現時点において、アンタがクラウドに対して抱いている感情は? 彼をどのように思っている」

「……まさしく『単刀直入』だな」

 そういって、ひとしきり笑うと、セフィロスは笑みの表情のまま、双眸を綴じ合わせた。

「……クラウドに対してか。憎しみを抱けるかと思ったが……そうでもないな。やはりあの子は可愛い」

「少し待て。その『可愛い』という言葉の意味するところは? 性愛的なものなのか、それとも……」

「プッ…… おまえ……その物言い何とかならんのか? 可笑しくて可笑しくて……脇腹が痛くなる。クッ……クックックッ」

「セフィロス、真面目に回答してくれ」

 憮然とした俺の物言いにもめげず、彼は非道く可笑しそうに言葉を続けた。

「ああ、わかったわかった。……そうだな、以前のような執着はもうないな。だからといってまったく興味がなくなったわけではない。あの子の容姿も……その有り様も好みだ」

「……非常にあいまいだな」

 率直にそう言い返した。

 恋人関係に在った頃のような強い執着心はないが、今のクラウドならば十分好みの範疇であり、性愛の対象にもなると……そういうことなのだろか。

 

「クラウドとの関わりから、なにか導き出せるかと考えたのだが……どうも上手くいかないようだな」

「フフ……そうだな。さきほども言ったように、私の記憶はあの子に殺されたところまで、だ」

「その言い方はよせ」

 すばやく遮った俺の物言いに、覆い被せるようにセフィロスは再び口を開いた。

「おまえはずいぶんとあの子を気に入っているようだな。アレのほうが年長だと聞いたが……酔狂なことだ」

「クラウドは友人だ。友のために尽力するのは人として当然のことだろう」

「さぁ……私にはとんと覚えのない感情だ」

 そうつぶやくとセフィロスは口唇をゆがめた。

「セフィロス、では現段階において、アンタの興味の対象とは何になるのだ? カオスの側の人間達のことか? それとも、やはりまだクラウドが……」

「……おまえだ」

 話途中で、セフィロスが割って入った。

「……は?」

 しばしの間隙の後、俺はおかしな声で訊ね返していた。

「聞こえなかったのか? おまえはなかなかに興味深い。……年は?いくつだ?」

「……今はそんな話をしていたわけではないだろう」

「別によいではないか。おまえは私の世話係を自らかってでている。円滑な交渉のためには、多少なりとも己の情報を伝えるべきだと思うが?」

「…………」

「ふふふ、別に隠すような事柄ではないだろう」

「……17」

 馬鹿正直に答えた俺がいけなかったとでもいうのだろうか。

 セフィロスは、今度こそ声を上げて笑い出した。

「プッ……ハハハハッ! じゅ……じゅ……十七!? おまえ、未成年か!? アッハッハッハッ、こいつはいい! 本当に……おまえは退屈させんな!」

 取り澄ましたような物言いではなく、腹の底から笑っているという感じだ。

 ……俺的には相当傷つくのだが。

「そうか、十七か…… 側に来い。よく顔を見せろ」

「さきほどから至近距離で会話をしていると思うが」

「そういうな……そら」

 セフィロスは長い腕を伸ばし、俺の頭に手を添えるとぐいと自分の方へ引き寄せた。

 長い睫が触れてしまいそうで、心の中で焦った。

「セフィロス、いい加減にしてくれ。そんなに意外なことを言ったか?」

「ああ、いや……き、気にするな…… 少し可笑しかっただけ…… プッ……ハハハハッ いかん、止まらなくなった……」

 この男は笑い上戸なのだろうか。

 俺は憮然とした表情のまま、彼が落ち着くのを待つしかなかったのだ。