〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<18>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

「ふふ、そうだな。『拳で勝負』とは面白い考え方だ。もっとも、俺のように相手が魔女となれば、命の奪い合いをせざるを得ないが」

「スコールの場合はね。クソオヤジの意見だから無視したいとこだけど、クラウドに取っちゃ、その程度の勝負で終えたいところだろうな」

 ティーダが軽いノリでそう言うと、浜辺をバックに拳で語り合うふたりのシーンが頭に浮かんだ。

「……セフィロスの気持ちを変えられればな。なんとかしてもう一度会って……」

「接触することは簡単なんじゃないッスか?」

 ティーダがあっさりという。

「どういうことだ?」

「さっきも言ったけど、セフィロスさんは単独行動でしょ? それにあの人、今度は確実にクラウドを攫おうとすんじゃないッスか? たぶんまたあらわれるんじゃないかなぁ」

「なるほど…… カオスの他の軍勢と行動を共にしているわけではないのだからな。己の目的でのみ動くというわけか」

「オレ的には、もう一回くらい攫われて、今度はクソオヤジ抜きでガツンと説教してやりたいとこッスね!」

「お、おい、馬鹿なことをいうな。今回はよかったが…… カオスの者たちとツルんでいないとはいっても、あくまでも彼だとて敵方なんだ。危険だぞ」

「ま、そうなんスけどね」

 とんでもないセリフを口にするティーダを諭し、俺は冷め切ったカップに口を付けた。いささか興奮して喉が渇いたのだ。

 

「おーい、スコール、ティーダ、話済んだか? セシルたちがそろそろ出発しようって」

 ジタンが呼びに来たのを切りに、俺たちは立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 この日はティーダが戻ってきたこともあり、あまり離れた場所までは行かないことにした。

 カオスの領域を侵すことなく、中立地域に浸食する魔物を倒し、安全の保証されたコスモスの力が及ぶ場所で、身体を休めることにした。

 俺たちは毎日こんな風に、魔物を倒したり、汚染された場所を少しでも浄化しようと足を伸ばしてはいたが、なにもそれは日々の義務というわけではないのだ。

 当然、俺たちの目的は、己の敵と目する輩……カオスの軍勢に与しているそやつらを倒すことである。

 俺の場合でいえば、アルティミシアという時の魔女だ。

 一度は現世で消したにもかかわらず、この不可思議な世界ではさらに強い力を有して復活した。

 もはや一も二もなく、あの悪魔を完全に消滅させねばならない。

 これは『そうしたい』という希望ではなく、ほとんど俺にとっては義務であった。

 そうかと思えば、ティーダとその父・ジェクト。クラウドとセフィロスのような、関係もある。

 まったく度し難い不思議だ。

 

「スコール……」

 暖炉に火を起こしているところに声を掛けられ、俺は少しだけ間をおいて返事をした。

「ああ、クラウド。どうした?」

 いつもよりも、ついやさしい声になってしまう。涙腺の緩い輩は苦手だ。

「あ、あのさ…… あの後、ティーダ、なんだって?」

「あの後?」

「だ、だからッ! お、俺が、席を外した後のことだよ! ミルク飲んだら眠くなったし!」

 最後の言葉は、まったく脈絡がない。 

 どうも、激して泣き出したのを恥じているようだ。

「……ああ、ティーダは、セフィロスに話をしたらしい。すでにクラウドに怨恨の気持ちはなくて、闘いたくないとな」

「な、なんでそんなこと……」

「あぁ、まぁ、その辺りは…… ただ、おまえが、積極的にセフィロスと剣を交えようとしていないのは、この前の闘いでもわかったはずだ」

「あ、う、うん……それはそうだよね。俺、そう言ったし」

「セフィロスがそれを聞き入れてくれればいいが……」

「無理だよ」

 クラウドが素っ気なく言った。本当はつらいにも関わらず、無感情に。

「クラウド……」

「無理だってば。セフィは俺のこと憎んでるんだから。もう嫌いなんだから」

「それは記憶の問題だろう。現世では良好な関係が築けていると言っていたじゃないか」

「そ、それはそうだけど……」

「だったら……」

 言いかけたオレの言葉をクラウドが遮った。

「『だからこそ』だよ。記憶の問題なんだよ!? だからこそ、どうしろっての!? 俺はしっかり覚えているけど、セフィの記憶は今から数年前のまんまなのに……!」

「それは……」

 そう、結局ここまでなのだ。セフィロスの記憶という問題にぶち当たった時点で、打開策が見つからない。

「ご、ごめん、大声出して…… つい、イライラして。スコールに当たっても仕方がないのに……」

「いや…… おまえの気持ちはよくわかる」

 そういって、俯いてしまった彼の肩に手を置いた。

「幸か不幸か、まだこの闘いの終わりは見えていない。……つまり時間はまだまだあるということだ」

「ス、スコール? あの……」

「焦るな、クラウド。おまえはひとりではないだろう? 何か方法がないかよく考えてみよう。時間が経つことによって状況も変わるだろう。あまり深く思い悩むな」

 何の解決にもならぬ言葉ではあったが、俺は気落ちする彼を元気づけようとそう言った。

 クラウドもわかっていたのだと思う。

 彼は綺麗に微笑んで、

「うん……ありがとう」

 と言ってくれたのであった。