〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<19>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

「いっそ、人海戦術で行ってみてはどうかと思う」

 晩飯会議……

 いや、正確には、夕食のテーブルなのだが、皆が顔つき合わせる格好の場所なので、食べながら続けざまにミーティングを行うことが多いのだ。

『晩飯会議』と命名したのは、たしかジタンだったと思う。

 流れとしては、皆の前に、二杯目のシチューが配られた段階で切り出す。

 食べ始めでは、食事の方に意識が集中して、話を聞いてもらえないからだ。

「人海戦術……?」

 いぶかしげに聞き返してきたのはクラウド。

「おぉ、なんか面白そうッスね!」

 と、テンション高く宣ったのはティーダだ。

「……他のカオス軍勢と違って、セフィロスは単独で動いているのが常らしい。そしておそらくまたクラウドを狙って、俺たちの前に姿を現すだろう」

「…………」

 目線を落とすクラウド。皆に被害が及ばないか案じているのだろう。

「そんで? 人海戦術って? まさかみんなでよってたかってセフィロスさんを捕獲するとか?」

 笑いながらジョークを飛ばした風のジタンに、俺は頷いて見せた。

「そう。そのまさか、だ」

「えっ……ちょっ……スコール!?」

 声を上げたのは当事者のクラウド本人だ。

「セフィロスの虚を突く」

「セフィに人海戦術って……」

「今のところ、俺たちの前に姿を現したカオス側の軍勢は、セフィロスだけだ」

 俺は皆を見回してそう言った。全員一様に頷く。

「ああ、でも、ティーダはジェクトさんに会ったと言っていたよね」

 やわらかな口調で、セシルが指摘する。

「あー、でも会ったっていっても、ほんのちょっとッスよ。捕まっていたときにちょっと」

 と、ティーダ。

「そうなんだ。おそらくジェクトとティーダが会ったのはイレギュラーで、明確に敵意を持ってあらわれたのはセフィロスだけだろう」

 俺は言葉を足した。

「そういうことになるね」

 セシルが頷く。

「くそ、クジャのヤツ、どこにいんだよ」

 と、小声でつぶやいたのはジタンだった。俺も目的の魔女、アルティミシアにはまだ遭遇できていない。セシルなども同じ思いを抱えているのだろう。

「ある意味、セフィロスを捕獲するのは、カオス陣営の状況を知る唯一の手がかりとも言える」

 俺はそう言った。クラウドは困惑した風だったが、他の皆はやはり一様に頷いた。

 

 

 

 

 

 

「で、スコール、具体的には?」

 セシルの促しで、俺は先を話す。

「さっき言っていた人海戦術だ。今度セフィロスが現れたとき、前回の徹を踏まないように、あらかじめ捕獲方法を決めておく」

 まるで凶暴な野生獣を捕まえるような言い方を、俺はした。

 そう。彼は銀色オオカミだ。美しいばかりでなく、凶暴で強い。

 だが、いかに強靱で戦闘能力が高くとも、四肢の動きを封じられれば動きのとりようはない。

 こちらだとてそれぞれの世界を救った勇者が揃っているのだ。

 その我々が人海戦術をとれば……

「いいか、今度セフィロスがクラウドを狙ってきたときがチャンスだ」

 俺はクラウドに一つ頷きながら続けた。

「俺は聞き手の左腕、ティーダは右腕だ!」

「へ?」

 と、間抜けな声を上げたのは、たったいま名指しされたティーダであった。

「続けていくぞ。セシルは右足、左足はジタンだ。総員同時に飛びついて彼の動きを止める」

「ぜ、全員で飛びついて?」

 セシルが呆然とした表情で、俺の言葉を反復した。

「そう、総員で一挙にヤツの動きを止める。四肢を固めるんだ」

「あ〜…… なるほど……」

 ジタンが低くつぶやいた。

「な、なんというか……スコールらしくない策……だね」

 セシルがなんともいえない表情で頷いた。

「ああ、自分でもそう思う。……だが、ああいう人間相手にはむしろこういう下手な作戦のほうが有効だと思うんだ」

「……確かに……言われてみれば。まさかセフィロスさんもそんな手で来るとは思わないだろうしね」

「ああ、そうッスね、セシル。それにセフィロスさんって、クラウド以外は目に入っていないみたいッスからね。オレらが一挙に跳びついたらビックリすんでしょーね!」

「お、驚くと思うぜ。……っつーか、あの人のびっくりする顔って……ちょっと想像もつかないけど」

 ジタンがなんとも言えない表情をして頷いた。

「で、でも、あ、危なくない? 相手はセフィなんだよ?」

 クラウドが手振りつきで割って入ってくる。

「オイオイ、俺たちだって、それぞれの世界の勇者なんだぜ〜。正直、自分の直の敵じゃないだけ、気分的には楽だ」

 と、ジタンが言った。

「そうそう。それに君の場合、闘わなくていい相手なんだから、そのほうがいいよ」

 ふぅと一つため息を吐き出し、セシルがつぶやいた。

 彼も『闘いたくない人』が相手なのだ。

「俺もそう思う」

 俺は不安顔のクラウドに向いて、強く頷いた。

「スコール……」

「それに、ティーダの父親が言っていたように、決着のつけ方はいろいろあるだろう。どうしてもというのなら殴り合いでもしてみたらどうだ?」

「あ、いや、殴り合いでも、相当クラウドが不利だぜ…… リーチが違いすぎ。セフィロスさん、でっかいもんねー」

 とジタンが言った。彼はティーダが攫われたとき、先頭を走っていて、セフィロスに吹っ飛ばされている。

「なんだとジタン、おめーだって人のこと言えんのかよッ! 俺よりチビのクセに!」

「ウッセー! 俺はクラウドより年下だもんね! まだまだ伸びるさ!」

「俺だってまだなァ!」

「クラウドはハタチ越えだろ! もう無理じゃん!」

「くそーっ このジタンーッ!!」

「なんだよ、心配してやってんのによ! クラウドのアホ!」

 ドタバタと大騒ぎするふたりを、ひっぺがし、俺たちは手っ取り早く夕食を終えたのであった。