〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<9>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

「レオ……いや、スコール……待ってよ、そいつは……」

 異議を唱えようとした彼の言葉に、覆い被せ続きを口にした。

「いいから。……だが、おまえは俺より、ずっと人間らしい男だ。やさしくて思いやりがある。……ここ数日でそう感じた」

「…………」

「かつての敵と和解できたのも、そんなおまえの度量ゆえのことだろう」

「えー、そっかなァ。俺から見れば、スコールだって十分やさしいよ? みんなの体調気遣ってるし、ゴハンだってリクエストに応えて作ってあげてるじゃん」

「食事は自分でも食べるから作っているだけだし、ひとりでも不調な人間がいると、敵と鉢合わせたときに不覚を取る可能性がある」

「またまたぁ! とかなんとかいっちゃって。でも、もし本当にスコールがそう考えてしたとしても、実際の行動はさっき言ったとおりなんだよ。みんなの体調気にして、ゴハン作ってくれてるやさしい人だよ」

 子供のような物言いで言い換えされ、俺はぐっとつまった。

「俺、いくら心で想っていてくれても、態度にあらわさないヤツは信用できないし、信じられない」

 きっぱりとクラウドは言い切った。二の句が継げない俺に、さらに言いつのる。

「よくさ〜、ドラマとかであんじゃん?『実は君を想っていた……』とかいって、恋人の前で死んじゃうキャラ」

「え……あ、ああ」

「あーいうヤツって、大っきらい! ぶっちゃけサイテー。どうせ死ぬんなら、墓場までもってけっつの。それを告げられた人の立場、全然考えていない発言だと思わない?」

「……そ、そうか……」

 いきなりドラマの話をされても……

「いや……だが、その人物は死に際して、どうしてもその気持ちだけは真実だったと告げておきたかったのではないか?」

 俺は一応、自分の頭でそう考えて、口にしてみた。

「じゃあさ。言われたほうは? そういうセリフ言われるってことは、その人も死んじゃう人のこと好きだったわけじゃん? 勝手にいなくなる寸前に『好きだ』なんて言われたら、後に残される人がどれほどつらい気持ちになるか想像がつくでしょう?」

「それは……まぁ、そうだな」

「本当に残して行かなければならない人のことを想うのなら、絶対告げるべきじゃないよ。……いや、違う。最後に告げるんじゃなくて、相手を好きになったら告げるべきなんだ。『愛してる』って。そしてそれを行動に表すべきなんだよ」

「……おまえはそうしそうな人間だな」

「うん。俺、ヴィンセントに大好きだって言ってるし、愛しているからこそ、それは態度に出しているよ」

「……おまえのようにできれば、皆それほど苦しまないで済むのだろうが……」

 恋愛経験のない俺は、そんなふうに言葉をにごした。実際、自分がその立場に立たされたら、正直に想いを告げて、それをすんなり態度に出せるかわからなかったから。

「態度に出せないってヤツは甘えてるだけじゃない?」

 あっさりと言い返された俺は、、まさしく図星を指され、グッとつまった。

「態度に出して拒絶されるのが怖いだけでしょ。相手に自分の想いを知られたら、断られる可能性もあるもんね。自分が傷つきたくないから、行動に出せないだけだよ」

「……おまえ……案外キツイな」

「やだぁ。スコールのこと言ってるわけじゃないじゃん」

「……いや、俺はまだそう言った意味合いで、人を好きになったことがないが……正直、おまえのいうような行動を取れるかどうかはわからない」

 慎重に俺はそう告げた。

「ううん。大丈夫」

「え……? なにがだ」

「スコールは大丈夫。アンタは、自分の気持ちにウソをつく人じゃないよ。しかも自分を慕う人間を傷つけるような人じゃない。……俺、よく知ってるから」

「クラウド……」

「へへへ、ごめんね。アンタは未来を知らないんだもんね。でも、これくらいはいいよね。……スコール、すごく素敵な人になる。ホントだよ」

「……よせ、どんな顔をしていいかわからなくなる」

「照れ屋なところは変わってないね! 俺の一番大切な人がね、アンタを見て言ったんだ。『彼に愛される人は幸いだ』ってね」

「…………」

 満面の笑みを浮かべてそう言われては、返す言葉がなくなってしまう。

「ま、それを聞いたときには、ちょっとヤキモチやいちゃったけどね。ヴィンセントは間違ったこといわないもん。……あー、ホント、よかった!」

「……なにがだ」

 俺は無愛想に聞き返した。だが、クラウドは気にする様子もなく、あっさりと応えた。

「このわけのわかんない世界に、アンタが居てくれて!」

「…………」

「そりゃ、アンタにとっちゃ、俺は初対面の美青年ってだけだろうけどね。そう遠くない未来に会ったことのある人間にとっては、すごく頼もしいもんだよ」

「…………」

「あ、でもね。もしアンタとホントに初対面だったとしても…… 同じように感じたと思う! へへへへ」

 クラウドはコロコロと転がりながら話続けた。しかもすごく嬉しそうに。

「……もう、寝ろ」

「あー、スコール。また照れてるんでしょ。恥ずかしくなると、すぐそういう態度とるもんね〜」

「……いいから。明日も闘いが待っているんだぞ。ちゃんと睡眠をとれ」

「はぁ〜い」

 少し固い声でそういうと、思いの外、彼はあっさりと承諾した。

 ころんと再度、寝返りをうち、双眸を綴じ合わせた。

 深い海の色の瞳が、光をなくすと、もともと年寄り幼げな表情が、さらに子供のようにあどけなく感じる。

 

 『セフィロス』……か。

 あっという間に眠りに落ちた、彼の掛け布団を直してやつつ、思いを馳せる。

 クラウドがつらい思いをせずに済めばよいのだが。

 いや……それは戦うことを前提にすれば、回避することはできないだろう。

 俺はああでもない、こうでもないと、つまらない思案に暮れたが、わずか数刻の後には、安寧な眠りの淵に漂っていた。