〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<7>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

「クラウド、手が留守になってるぞ。こちらはもうできる。手早く作ってくれ」

「ちぇーっ! わかったよ」

 手際よくフライパンを返し、ティーダに命じてテーブルメイク、ジタンに皿を並べさせている。

 連中も、食事については、ひたすらスコールに従うことにしているのだろう。ゴミ捨てや洗い物、掃除など、指示されるままに、てきぱきとよく働いた。

 

「……それから」

 ふたたび、彼が口を開く。静かな……ほとんど聞き取れないような小声で。

「はいはい、今度はなぁに?」

「いや、その……気を付けた方がいい、クラウド」

 いきなりそんなふうにいわれて、俺はキョトンとしてスコールを見つめた。どう考えてもコイバナの続きじゃないよな?

「ああ、いや……いきなりスマン。そうではなくて…… その、カオス陣営にいたおまえの知り合いのことだ」

「……セフィのこと?」

「ああ、そう……『セフィロス』という名だったな。強そうなヤツだ。……いずれ闘わなければならないときが来るだろうが……」

 スコールは淡々とそう言った。

 ……確かに、この状況ならば、いずれはぶつかることになるのだろう。

「あ、うん…… 強いよ、そりゃもう、本当に。俺たちはセフィを倒したと思っていたけど、完全に消し去ることはできなかったんだよ」

「……そうか」

「しかもその時はパーティー全員で……何人がかりだ? 7人?8人? ……いや、実際に協力してくれた人たちを数に入れたらそんなもんじゃない……」

「……なるほどな。心してかからないとな」

 彼は独り言のようにつぶやくと、話は終わりとばかりに黙々と作業を続けた。

 

 

 

 

 

 

「うっまぁ〜い! 最高ッスよ、スコール!」

 あっという間に皿を空にして、おかわりをねだるティーダ。

「……ただのカレーだが?」

「いや、カレーって基本だよ! 基本のものこそ難しいんだ。ちなみに俺はオムレツとかハンバーグとか、スパゲッティも大好き!」

 といいながら、ジタンも二皿めだ。もっともこの俺はすでにおかわりの分を食い終えてしまうところだが。

「……やれやれ……では、明日はその辺りのものを作るか……簡単だしな」

「あ、俺、シチューも好き! ここって、魚とかはあんのかな? 俺、魚介類や野菜はあんましなんだよね〜。どっちかっていうと肉がいい!」

「……クラウド、野菜も食え。自分で作ったものは美味いだろう?」

「まーね。でもさ〜、やっぱ肉だよね。シチューもホワイトシチューより、ビーフシチューが好き!」

「そうか? オレ、ホワイトも好きッスよ?」

「どっちかならって話!」

「ホワイトシチューには、鶏肉が入ってるじゃん。牛と鶏といったら、これねぇ?」

「……おまえたち、メシの話題はもういいだろう。クラウドへの説明を続けてやってくれ。……セシル」

 スコールはおかわりもせずに、さっさと皿を空にすると、もっとも適任だと考えられる彼に話を振った。

「あ、ああ、ごめん。つい、夢中になっちゃって。ええと、どこまで話したんだっけ……」

「う、うん、コスモスってのが調和の神とかで、今はカオスにやられそうみたいな?」

 俺の返答があまりにも適当だったせいか、スコールはやれやれと肩をすくめた。……言い方は適当だったかもしんないけど、間違ってはないじゃん。

「ハハハ、クラウド、面白いなぁ。そうだね、今は圧倒的に、カオスの力のほうが強いんだ」

「ふぅん…… そんで、俺たちはコスモスとやらに、選ばれた戦士なんだろ?」

「そう。力を合わせてクリスタルを見つけて欲しいって」

「そう、そのクリスタル。いったいどこにあるんだよ? こんなふうに宛もなく旅してて見つかるもんなのか?」

 俺はずっと疑問に感じていたことを訊ねた。

「……それはわからない」

 応えたのはスコールだった。

「『どこかにある』というものではないらしいんだ。どういった形で、それに辿り着けるのか、まったく手探りの状態だ」

「……ふぅ……なんか、雲を掴むような話だね」

 俺はため息混じりにつぶやいた。どうも今日明日にでも、コスタ・デル・ソルに帰るというわけにはいかなそうだ。

「まぁ、そうッスね。この世界自体がワケわかんないほど不思議な感じッスから」

「なぁ、前に言ってたじゃん? ここはまだカオスに浸食されていないとか、あっちはもう危険領域だとか。そういうのってどこでわかるの?」

「クラウドはわからないのか?」

 ジタンに逆に問い返されて、俺はボリボリと頭を掻いた。

「うーん、はっきりとは。目覚めた場所はあからさまに、スゴイ場所だったけど」

 そう……初めてこの不可思議な世界で覚醒したのは、思い出すのもおぞましい場所だった。

 ゴツゴツと節くれ立った大地に、刃物のような断崖絶壁。小山ほどの大岩がところどころに点在していて、灼熱の溶岩を照り返し長い陰を作っていた。

「多分、おまえも感じ取るようになるだろう。直感というか気配でわかるようになる」

「そうだね。すごく禍々しい『気』を感じると思うよ。……ああ、大丈夫。この場所にはまだコスモスの力が満ちている。カオスの力は及ばないよ」

 不安そうな顔をした俺を思いやってのことだろう。セシルがせわしない口調で言葉を重ねた。

「……旅をしていると、空気が変わるんだ。多分、今、この世界は三つの領域にわかれているんだと思う」

 後を引き取ったのはジタンだった。

「カオスの浸食が及んでいる場所と、ここみたいにコスモスの力が満ちている土地。それから、グレーゾーンってカンジの場所かな。このグレーゾーンが多くて参るんだけど」

「グレーゾーン……」

「そう。カオスの力が満ちているわけではないけど、コスモスの守護も及ばない場所ってことだね」

 とセシルが言った。

「そっか…… わかったよ、気を付ける」

「そんなに不安そうな顔をするな、クラウド」

 俺の方を見遣りもせずに、ぼそりとスコールがつぶやいた。

「おまえはひとりじゃない。俺たちも共に在る」

「ん……」

 ヒューッ!スコールかっこいいッス!と騒いだティーダの後頭部を殴りながら、彼は話を続けた。

「大丈夫だ。必ず道は開ける。……カオスの側にいる輩も相当な力を有していようが、我らだとて歴戦の剣士だ。返り討ちにしてやる」

 無口だが強靱な精神力は健在だ。スコールはごく当然という口調でそう言って退けたのであった。