〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<6>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 

「ええと、ウォーリア・オブ・ライト、フリオニール、オニオンナイト……それから、バッツ……ティナは女の子だったよね。他にそれだけの仲間がいるんだ」

 俺は教えられた名前を、慎重にくり返した。

「そうそう、そんな感じッス。ちなみにウォーリア・オブ・ライトは超カタクて真面目ッス。H本回し読みとかはしないタイプっすね!」

 どうでもいい注釈をつけるティーダ。

「あ、そんで、フリオニールの別名はのばらだから。いや、むしろのばらが本名かくらいのイキオイだからな!」

 と、これまた意味のわからない説明をつけるジタン。

「ははは、ふたりとも、そんな言い方したら、クラウドが誤解してしまうだろう」

「セシル……バカどもは放っておけ。クラウドに説明を続けてくれ」

 ため息混じりに、先を促したのはスコールだ。

「うん。この世界のしくみは、僕たちにもよくわからないんだけど、不思議な空間がつながっているらしくてさ。仲間とはぐれても、ふいに合流したりということもある」

「へぇ……」

「それに…… ほら、こうして宿屋のような宿泊施設もあるし、自由に使うこともできるんだ。だが、人っ子ひとりいないだろう?」

 セシルの語りかけに、俺はコクンと頷いた。

 なんかこの人、ちょっとヴィンセントに似てる。いや、容姿とかそういうことではなく、雰囲気が。

 セシルの髪の色は青銀だし、唇もうっすらと青みが掛かっている。肌はすごく透明感のある白で、『パラディン』って聞いて、なるほどと頷いた。

 顔だけ見たら、女の人のような美人だ。ヤズーとはまたちょっと違う雰囲気なんだけど。

 ……でも、ふたりとも背は俺より高いんだよね。

 

「本当だ……ちゃんと食べ物……あるんだ」

 俺たちはレオンが見つけた、煉瓦づくりの民家……いや、この部屋の広さはやはり宿屋だと思われる……そこに、腰を落ち着けたのだ。

「うん。食べ物っていうか……素材がね。さすがに目の前に調理済みのフルコースなんかが並んでいることはないけど」

 そう言って、クスッと小さく笑う。

 ……ああ、やっぱ、セシルってばヴィンセントに似てる〜 なごむ〜……

「でも、貯蔵庫を開けると、ほら、このとおり!」

 いたずらっぽい口調で、ティーダが言った。ふふ、コイツとは気が合いそうだ。ちょっとテンション高いけどな。

「あ、バナナもらい!」

 ひょいとジタンがバナナを取る。

 リンゴや木の実、バナナ…… そして、紅い固まりは肉なのだろう。そういったものがごく最近まで普通営業していたように収まっていた。

「た、食べても平気なのか?」

 思わず俺はそう訊ねていた。そりゃ、お腹は空くわけだから、食べなきゃ死んじゃうが。

「……思うに……」

 低い声でつぶやいたのは、レオン……もといスコールであった。

「思うに、これらの民家や食料は、コスモスの力で、別世界から、『それだけ』を移植しているのではなかろうか? 人間までも連れてくるわけにはいかなかろうから、ごく普通に生活できる道具を借りてくるようなカンジかと考えたのだが……」

「ああ、なるほどね! さすが!」

 俺は素直に頷いた。言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。俺なんて、いくら不思議に感じても、もともと思考作業が苦手だから、自分で答えを見つけようなどとは思わないのだ。

「い、いや……本当のところはわからない。ふと……そんな気がしただけだ」

 なぜかどもるスコール。レオンも口数が少なく感情表現が乏しかったが、昔のレオン……つまりスコールは、それに輪をかけてといった印象だった。

 

 

 

 

 

 

「とにかく、せっかくだし、メシにしようぜ。昨日なんか晩飯が少なかったから、夜中に腹減って目覚めちゃったッス!」

「そうだな。……材料はなにがあるんだ。ああ、炭水化物もタンパク質もあるな。繊維も……」

 レオン……もといスコールは、ぶつぶつとつぶやくと、貯蔵庫から、適当に材料を見繕って取りだした。しかし、タンパク質だの、繊維だのって……フツー、牛肉とかレタスとかって言わね?

「ジタン、バナナもいいが、果物ばかりでは身体が保たんぞ。ちゃんとタンパク質をとれ」

「え〜、だってさぁ!」

「これから作るから、腹に余裕をもっておけと言っているんだ」

 無愛想な声で、そういうと、彼は早速調理にかかった。

 ……この辺、俺の知っている『レオン』だ。彼もホロウバスティオンでは、ほとんどの家事をこなしていた。そりゃ、ヴィンセントの技巧的な料理とは異なるが、まさしく男の食彩!といったふうで、味はとてもよかったんだ。

 たぶん、あのレオンの下地が、この当時から出来始めていたんだと思う。

「……どうした、何を見ている?」

 そう声を掛けられて、コレ幸いと、いそいそと側へ近寄った。

 周りの連中はみんないい奴らだけど、やっぱりレオンと一緒にいるのが一番落ち着く。

「あ、あのさ、手伝えることないかと思って。ほら、俺、年長だしィ。やっぱ色々役に立たないとね!」

 愛想良くそう言ってると、彼はフンと鼻で笑った。

「そうか、頼もしいな」

「えー、なにそれ。ちょっと嫌み?」

「いや、そうじゃない。では、そこにある野菜をサラダにしてくれ。火を使う必要はないし、問題ないだろう」

 ブルーグレイの瞳が細められ、笑みが浮かぶ。

 ああ、やさしい顔。……別の世界で、もうひとりの俺が彼を好きになったのもわかるような……そんな穏やかで暖かみのある表情になるのだ。

「ん、まかせてよ。俺、今の家でも家事手伝ってるし!」

 俺は腕まくりしながらそう告げた。

 ……まぁ、ホントのところは、ヤズーがいないときに、ちょっと野菜を洗うのを手伝ったりとか、そんなもんなんだけどね。

「ほう、それは感心だな。おまえの恋人とやらも喜ぶことだろう」

「うん! ヴィンセントはね、とっても料理が上手いの。栄養のバランスもいいんだろうけど、いろいろ工夫してくれてね。デコレーションも凝ってるから、食べるのが楽しみなんだ」

「……ヴィンセント……?」

「そう! 俺の一番大事な人! ヴィンセントの作る料理のおかげで、苦手だった匂いや色のキツイ野菜も食べれるようになったし」

「ふ…… ふふ、本当におまえは子供のようだな」

 意気揚々とバラしてしまったせいか、スコールはそんなふうに言って笑った。

「しかし……その……」

「なぁに?」

「『ヴィンセント』というのは……あの……男性の名前なのではないのか? どうでもいいが」

 ……どうでもよくないから訊いているんだろう。

 そういや、25歳当時ののレオンってのも、ほとんどノン気にしかみえなかったっけ。

「そーだよ、俺より年上の男の人。……悪い?」

「あ、いや、失敬。人それぞれだからな、そういったことは…… ゴホンッ!」

 わざとらしい咳払いしているところなんか見ると、ああ、なんか17才ってカンジがする。俺が出会ったレオンは、もう25才になっていたし、どういう経緯で巡り会ったのかは知らないが、ホロウバスティオンにいるもうひとりの『クラウド』と一緒に住んでいたんだ。

「レオン……じゃない、スコールはさ〜、恋人いんの?」

「……いない、そんなもの」

「そうなの? 初恋とかは?」

「さて、覚えがないな」

 彼はひどく素っ気ない返事をしたのであった。