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〜コスタ・デル・ソル with ヴィンセント&銀髪三兄弟〜
<9>
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

11:10

「兄さん、ヴィンセントの洗濯物、出してくれる?」

 ほうほうのていで居間に戻った俺に、ヤズーが言った。

「え? あ、あれ、気が付かなかった。バスローブとか、その辺のは洗濯機に放り込んであるんじゃないかな」

「もう、気が利かないなぁ。病人なら汗かいてるでしょ? 身体拭いて着替えさせてやらなきゃ」

 やれやれといった調子で、ヤズーがため息をついた。

「わーい、兄さん、怒られたー」

「怒られた〜」

 と、カダージュとロッズ。またもや頭をかく羽目に陥る俺。

「ごめん、俺、ちょっと着替えさせてくる」

「いいよ。今頃、薬効いて眠ってるでしょ。夕方にはお腹すいて目が覚めるはずだから、そうしたら、汗拭いて着替えさせてあげて」

 洗い物をまとめてバスケットに移しながら、事務的にそう言う。

 

「さてと……じゃ、ロッズ、手伝え、それを持ってこい」

「うん!」

「ヤズー、僕も行く!」

「カダはいいから」

「やだ! 僕も干す!」

「……仕方ないなぁ、兄さん、一緒に来て、カダ、見ててくれる?」

 ほとんど子ども扱いだ。

 俺は言われるままに、外履きにはきかえて、中庭に出る。我が家の中庭でも、干し物ができるくらいのスペースはあるのだ。

 



12:00

 外に出ると、真昼の日差しが目に沁みる。もうだいぶ陽が高くなっている。

 ヤズーは手際よく、洗い物を干してゆく。こんなとき、長身のロッズは役に立つ。大判のシーツやタオルを、高い位置に次々と干してゆく。

 手伝うと言っていたカダージュだが、皆と一緒に外で出てこられただけで満足だったようだ。幸いヤズーの邪魔をすることもなく、俺にまとわりついている。

 

「ね、兄さん、ヴィンセント、大丈夫なの? 昨日は元気そうだったのにね」

 庭の芝生に、ペタンと座り込んでカダージュが言う。

「あ、ああ、ただの風邪だと思う。心配ないよ」

「ヴィンセントって、目、紅いんだよね」

「ああ、綺麗だろ」

「うん。ウサギみたい」

「ああ、はは、なるほどな」

 可愛らしいウサギの耳が、ヴィンセントから生えている姿を想像し笑みを誘われる。しかしよくよく考えてみるとかなりマニアックな姿だ。

 俺は反省した。

 

「なぁ、カダージュ……」

「なぁに、兄さん」

「……ここに来るの楽しいのか?」

「うん。兄さんに会えるもの」

「俺と一緒にいるの、楽しい?」

「うん。楽しいよ」

 カダージュの答えはあまりに単純明快すぎて、裏を読みとる余地がない。

「な……カダ」

「なぁに、兄さん」

「笑うなよ?」

「?? なぁに?」

 ぶちぶち、雑草を引き抜きながら、俺の顔を見上げるカダージュ。俺はベンチから身を乗り出して、カダージュに顔をよせた。別に内緒話にする必要はないのだろうが、なんとなく聞かれたくなかったからだ。

「……カダから見てさ……」

「うん?」

「俺ってどう見える?」

「……どうって、兄さんは兄さんじゃない」

「いや、そういうことじゃなくて、男としてどうかってこと」

 俺は言った。カダージュが細い首を傾げる。

「兄さんはカッコイイよ」

 ストレートに言われて赤面する。

「兄さん、強くてカッコイイよね。そんで可愛いんだって」

「か、可愛い……って何だよ、それ!」

 未だ十代のカダージュに『可愛い』と言われるなんて。

 俺はざんざっぱら、年長のヴィンセントに『可愛い可愛い』を連発しているおのれを棚に上げて聞き返した。

「僕じゃないよ。セフィロスが兄さんのことを、可愛いって言ったんだよ」

 ふふんと鼻を鳴らすと、カダージュは得意げにそう言った。

「ちょっ……もう、よせよ! あいつの思念をまともに受け取るな!」

「だってしょうがないじゃない。見えちゃったんだもん」

「カダージュ〜っ!」

「平気平気、ヤズーたちには言ってないよ」

 そういうと、ピッと人差し指を顔の前に立てる。

「もう、おまえなァ、カンベンしてくれよ……」

 俺は辟易として言った。

 

「兄さん、カダージュ、なに遊んでるの。もう終わったよ」

 ヤズーに声をかけられて、俺はのろのろと歩き出した。

 

 俺は思った。

 やっぱり、ヴィンセントが一番いい。

 ヴィンセントは、大人しくておっとりしてて、トロくさくて神経質で……可愛い。