〜 CAIN 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<39>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

 オレたちの動きに合わせ、バラバラと鉄鉱岩が崩れるが、それどころではない。

 時間がない……!!

 

 冷静なあの男のことだ。

 ネロの手を放れ、充分に周囲を確認してから、オレの番号に連絡してきたのだろう。もちろん、出来うる限りのスピードで。

 ヴィンセントと入れ替わりで、彼がネロの元から逃げ出し、偵察していたカダージュと合流する。そして即座に電話を掛けてきたとして……5分は掛かっただろう。

 その間、きっとヴィンセントとネロは多少なりとも会話を交わし、いよいよネロが部下に命じて医者を連れてこさせる。

 神羅のリゾート跡地は、ノースエリアとイーストエリアの境……おまけに湖の点在する内陸に入り込んでいる。距離にして最も近いのは、ノースの繁華街周辺になるだろう。もちろん、病院や町医者の数も、イーストよりはノースのほうだ。

 車を飛ばしても、手術の出来るめぼしい医者を見つけて戻るのに三十分……そう、間違いなく三十分以上は掛かるだろう。最短でだ。

 ならば間に合う可能性は充分にある。

 屋敷に囚われていた彼のおかげで、クラウド始めオレたちには、ネロの本拠地の目星はついているのだ。

 とにかく、この地下から出られさえすれば……!

 ここから出さえすれば、手術が始まる前に、屋敷に到着できるのに!

 ヴィンセントは勝手に覚悟して、ネロの元に行っている。きっといざとなっても逆らうような素振りは見せないだろう。

 ……何が何でも三十分!

 それ以内に、ネロの屋敷へ行かねばならない。

 どうか、この迷路が、突拍子もない場所に繋がっていないように……!

 万が一にも、崩落することがないように……!

 オレは神に祈る習性はない。

 だから、命じてやった。

『何が何でも間に合わせろ』と。間に合いすれば、自力で救出してみせる、と。

 

 

 

 

 

 

「セフィロス…… ちょっと」

 壁を叩きつつ、ヤズーがそっと側に寄ってきた。

 クラウドに聞かれたくないのだと、そのようすから見て取れた。

「……万が一ということもある。カダひとりでも、屋敷に向かわせたほうがいいんじゃないだろうか」

「……そいつはオレも考えた。正直、迷っている」

「うん。……支配人さんのほうも心配だもんね。家に帰り着く前に襲われることだって無きにしもあらずだ」

 ヤズーは、すぐにオレの憂慮を考えたらしい。

「だが、カダージュひとりで乗り込んでも、ヴィンセントを助け出すのは難しい」

 オレはそう言った。

 そこは敵の本拠地のはずだ。手下のDGども……そしてネロとヴァイスが居る。いくら、カダージュが奮闘したところで、人ひとり助け出すには、少なくとももうひとりくらいは味方が必要だ。

 だが……いざとなれば……!

 わずかなりとも時間を稼げる可能性があるのなら……

  

「……ヤズー」

「うん?」

「カダージュに連絡しろ。彼を人の多いところまで送ったなら、すぐに屋敷に引き返せと」

「……うん」 

 自ら言い出した事ながら、末弟のことが心配なのだろう。

 複雑な面持ちで、ヤズーは頷いた。こいつも、DGのツヴィエートと実際に戦っている。ネロより格下のアズールやロッソでさえも、相当の手練れだったはずだ。現にカダージュは、蒼のアズールとの戦闘で負傷した。

 そうなれば、ネロと兄のヴァイスのいる場所へ、単身で乗り込ませるのがどれほど危険か容易に想像がつくのだ。

「だが、勝手に飛び込むような真似はするなと伝えろ。必ずそう念を押せよ」

「セフィロス?」

「ギリギリまで待たせろ。どれほど不安でも軽はずみな行動に出るなとな」

 女のように繊細に整った白いツラをあたらめて見遣り、オレは言葉を重ねた。

「……必ずオレたちが間に合うように行く。何がなんでもだ。こちらから指示するまでは一歩も動くな、携帯を握りしめて待っていろと言え」

「……了解ッ!」

 心得たというように、ヤズーが頷いた。

 こいつだとて、カダージュの身が心配に違いない。ただの弟というだけでなく、その弟が自らの運命の相手になっているのだ。

 それにも関わらず、動揺して冷静さを失うことがないのは、あっぱれというべきであろう。

 

「セフィッ! セフィッ! こっち! 来てっ!」

 クラウドのガキがかん高い声で叫んだ。

 すぐさま、ヤズーとオレはヤツのところに走る。だが、足場の悪い暗闇だ。移動するだけでも厄介なのだ。

「ね、ね、ここ!ここ!」

 クラウドは子供のように地団駄踏んでそう言うと、剣の柄でその部分を叩いてみせた。

 

 ……なるほど、完全な空洞という音ではないが、少なくともみっしりと鉱石が詰まっている様子ではない。

「よし、どいてろ、ふたりとも」

 オレは、マサムネを構え直すと、一息で空を切り裂いた。