〜 CAIN 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<38>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

 声を励まし、電話での会話を続ける。

「おい、くわしい状況を教えろ。必ずなんとかする……!」

『はい。まず、その迷路から一刻も早く脱出して下さい。ネロの屋敷の場所は、ノースエリアとイーストエリアの内陸部、もと神羅が開発した社員向けリゾート跡地です』

 テキパキと答える支配人。こんな状況のせいか、ヤツが味方であることが頼もしく思えるほどに。

『地下鉄の開発が中止され、現在は放置されたままになっているようです』

「わかる! 俺、知ってる!」

 と、クラウドが反応する。

 大分昔の話だが、オレにも見覚えがあった。

『ネロは、これから医者を呼ぶと言っていました。ですがあのあたりは今は僻地もよいところ。連れて来るには時間がかかるはずです』

「……医者……?」

『……ヴィンセントさんの腹からマテリアを摘出するためです。開腹手術は医者でなければできませんから』

「ヒッ……」

 短い悲鳴はクラウドだ。ヤズーがその肩をすかさず抱きしめる。

『……ネロはヴィンセントさんを死なせたくないと言っていました。もちろん、だから大丈夫だというつもりはありません』

「わかっている」

『彼の屋敷には巨大な門柱と、庭に涸れた噴水があります。ネームプレートは出ていませんが、周囲の建物より瀟洒で大きく、壁に一面に蔦が伝っています。見ればすぐにわかるはずです』

「よしわかった! おまえはカダージュに送ってもらって家に戻れ。なるべく人の多い道を選んで通れ。家の近くにはロッズもいるはずだ」

『はい。……セフィロス、ヴィンセントさんのことを頼みます。ヤズーもクラウドさんも、どうか気をつけて』

 そこまでいうと、彼は慌てて言葉を続けた。

『そうだ! 屋敷のコンピューターに、迷路の管理システムがありました。三人とも服にセンサーが附着している可能性があります。外して置いていった方が目くらましになるでしょう』

「わかったよ、ありがとう、店長さん。あなたが冷静な人でよかった……! 大丈夫、必ずヴィンセントは俺たちが助けるから! カダにもそう言ってやってください」

 オレの横からヤズーが顔を出し、早口に告げた。

「どうか気を付けて帰って。しばらくは、なるべくひとりでいないほうがいい」

『ヤズーですね? 私は大丈夫です。……そちらこそ気をつけてください。時間がありません。……急いで!』

 電話が切れた。

 クラウドのヒステリーが心配だったが、ガキなりに必死に自己を押さえているようであった。
 
 
 

「おい、おまえらッ! 急ぐぞッ 絶対に間に合わせる……!」

 オレはふたりに向かって叫んだ。

「セフィ……セフィ…… 俺……」

「情けないツラをするなッ! 今まで、オレが大丈夫だと言ってウソだったことがあるか、クラウド!?」

「ううん……うん……ッ」

 ガクガクと頷くクラウドの後ろから、ヤズーが小さなシールのようなものを剥がした。

「……これ。ゲームスタートのとき、ライトが照らされたでしょう。そのとき、吹き付けられたものみたいだね」

「……ご丁寧なこった。センサーというわけだな」

「セフィロス、後ろ向いて」

 ヤズーは手際よく、オレの長髪の間からそいつを見つけだすと即座にひっぺがす。自分のものと俺たちのもの、計3枚を、迷路の三方の道にいかにもという形で張り直した。

「これでしばらくは、迷路の出口が解らないで戸惑ってると思ってくれるでしょ。……さ、行こう!」

「ねぇ、でも、どうするの? もう、後戻りできないよ? 入り口も塞いじゃったし……」

 不安げにクラウドが言う。

 蜘蛛ショックにムカデショック。とうとうしまいには、ヴィンセントショックだ。無理もない。

「さっきと同じように、壁の薄い部分があるはずだ。……おまえ、空気が通っていると言っただろう?」

「う、うん」

 こくんとクラウドが頷く。

「ここは捨てられた地下鉄の通り道だったって言ってよね。ならさ、駅だって作りかけで穴掘っただけのところもあるんじゃないかな」

「そうだな。上手い具合に見つけられりゃ幸運だ。いざとなったら、とにかく剣で斬れるところを、落としてゆく。……危険はあるが、時間がないからな」

 ふたりが頷いた。

「よし、急ぐぞ! 携帯、落とすなよ!」

「わかってる!」

「うん!」

 目先にやることが繋がっていれば、動揺する時間はない。

 手持ちぶさたで待ちの立場に置かれるのが、こういうときには何よりキツイのだ。

 ……だからというわけではなかったが、カダージュのガキを責める気にはならなかった。イロケムシなどと比べると、あいつはまだまだガキだ。ずっと年長で説得力のある、ヴィンセントの話に動かされても不思議はない。

 いや、なにより、ヴィンセントがああいった形で、エンシェントマテリアを有していたことに、寸分たりとも考えを及ぼさなかったオレ自身の失態だ。

 

「固いもので壁を打つんだ。向こうが空洞ならば、音が違うはずだぞ」

「わかった! 俺、こっち側から行くから。兄さんは反対側をお願いね」

「うん! 早く、早くッ!」

 ガッガッガッ ガッガッ!

 

「バカ丁寧に叩く必要はないぞ! とにかく急げッ! 動けるだけ動いて、いろいろな場所を叩くんだ!」

「わかってるよ! クソッ! こいつめこいつめ!」

 剣の柄で、クラウドはそこら中を叩き回った。