〜 CAIN 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<28>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「ぜっぜっぜっ……うげぇぇぇ! 気持ちワルーッ! ねぇねぇ、どっかついてない? 蜘蛛ついてない?」

「大丈夫だよ。……本当に気色悪いね……ゾッとした」

「おまえら、無事だろーな。刺されて死んでも放置するぞ」

 敢えて普段と変わらぬ口調で、オレはそっけなく言い放った。イロケムシではないが、久々に「ゾッとする」という気色の悪さを感じた。あれなら、まだDCだの何だのを相手にしているほうがマシな気がする。

「とりあえず、平気、刺されてない。あー、キモッ! 一気に食欲がなくなっちゃった」

「っていうか、兄さん、あの状況で食欲云々っていう、あなたの神経が信じらんない」

「ああッ! クラウド! 首ッ!」

「ギャーッ! やだっ!セフィ!取って、取ってェェェェ!」

 泣きついてくるクソガキを、片手で押しとどめ、

「ウソだ。和んだろ?」

 と言ってやった。

「ちょっ……セフィ、コノヤロー! それが協力者への仕打ちかッ! もぉ、怒った! ネロ殺る前に、セフィを殴ってやるーッ! うわぁぁぁん!」

「ケッ! チビがっ! ビービー泣きやがって!」

「あー、もぉ、アホらし。こんなところでくだらない体力使ってないでよ。まだ先は長そうなんだからね。置いてきたカダとヴィンセントが心配ッ! さ、行くよ」

「そーだよっ! アホセフィ! ヴィンセントが待ってんだぞ、コノヤロー! もう、セフィなんか相手にしない。行こっ、ヤズー!」

 さっき泣いた鴉が……ではないが、ベーッと舌を出し、ずんずんと歩いて行くクラウド。まったくガキは立ち直りが早い。

 

 

 

 

 

 

 オレはペンシルライトを点け直し、道を確認した。

「セフィロス、こっちだよ。ほら、続いてる」

 ヤズーが言う。

 だが、オレの目の前にも、細いが道が続いているのだ。もちろん行き止まりではなく、ライトを照らしても、ちゃんと奥まで通っているのが見える。

「うそっ! こっちにもあるよ。ほら、道!」

 クラウドのガキまでもが言う。ヤズーの指し示した道が一番広そうだが、他のふたつだとて、ちゃんと奥まで掘り繋げられているように見えるのだ。

「……なんだと……どういうこった」

「……単純に考えれば、ここは迷路なんだからさ。どれかひとつが正しい道で後はひっかけなんじゃない?」

「全部正しくなかったら?」

「ちょっと兄さん、ヤなこと言わないでよ」

 ヤズーが縁起でもないことを言い出すクラウドをつついた。チョコボ小僧は、蜘蛛責めが大分応えたらしい。

「おい、おまえら、ひととおり、周囲の壁を確認しろ。他に道がないかどうか」

「オッケー」

「わかったよ」

 第四の道があったらたまらない。正解がそれかもしれないのだから。

 ほどなくして、ヤズーとクラウドがオレの居る場所へ戻ってきた。ふたりとも同様に首を振る。

「他にはないみたいだね」

「俺のほうも。ちょっ……なんだよ、セフィ!その顔! ちゃんと確かめたってば!」

「……まぁ、いいだろう。となると、この三つの道……ということになるな」

「手分けしよう」

 あっさりとヤズーが言った。

「ええっ! ちょっ……マジで?ヤズー! また蜘蛛とか出てきたらどーすんだよ? ひとりじゃ怖いだろ!」

「仕方ないじゃない。時間が掛かればかかるほど店長さんにはツライ思いさせちゃうだろうし、ヴィンセントだって、おとなしく待っているのもキビシイくなるし」

「で、でも……」

「そうだな。時間に余裕があれば、用心して行きたいところだが、そうも言ってられん」

 オレは頷いた。

「三手に別れるぞ。それから携帯だけは気をつけろ。わかってるな」

「もちろん」

「う、うん……」

「情けないツラをするなアホチョコボ。ヴィンセントにいいとこ見せたいならしゃんとしろ!」

 クラウドにそうハッパを掛けておいて、オレたちは三手に別れた。

 携帯電話には発つ前に細工をしておいた。とはいってもそれほど大げさなものではないが。

 オレたちのもつ、どの携帯に連絡が入っても、すべての情報を共有できるということ。ぶっちゃけて言えば、オレ宛ての電話は、クラウドもヤズーも自分の携帯で聞き取ることができるということだ。かつ通話状態にしたまま保持できる。つまり、集音器としての役割を果たしてくれるのだ。

 万一、三人のうちの誰かになにかあったとしても、持ち主の居場所を確認できるように……

 

 三手に別れて足場の悪い狭い道を進む。

 ありえないとは思うが、万一、この坑道が崩落したら、いくらオレでも無事ではすまないだろう。

 いや……そんなことを考えている場合ではない。分の悪い戦いだということは、民間人の人質に取られた時点で解っているはずだ。

 オレはポケットに入れた携帯電話を確認すると、足早に道を進んだ。